安倍首相は20日昼のTBS番組で、「原子力規制委の厳しい基準で安全と判断されたところは再稼働したい。原発という安定的なエネルギーがなければ製造業は日本から外に出て行ってしまう」(要旨)と述べました。
その一方で政府は、原発から30キロ圏内の市町村の中で、原発事故避難計画策定済みはまだ4割に過ぎないことをつかんでいます(12月2日)。
あの原発推進の本家であるアメリカでも、周辺の住民の避難計画が立っていなければ原発の稼動は認めていません。
それなのに規制委の、実態不明の装置強度チェックや事故時のバックアップ設備などを中心にした審査基準を「厳しい基準」と称し、原発を「安定的なエネルギー」と呼ぶなどして再稼動を合理化しようとする姿勢は異常です。
安倍首相の発言にはいつもそういったいかがわしさが付き纏います。
また避難計画を策定した4割の市町村も、計画の実現性を厳密に確認しているのでしょうか。
ある地域ではバス600台を集めてピストン輸送すれば、10時間半で13万人全員の避難が完了するという計画を机上で立てましたが、実際には600台のバスを集められる見通しはなく、被曝を厭わずに運転をせよと命じることはできないのでそれに従事する運転手を探すのは更に困難だと分かりました※。
※ 2013年4月2日「逃げる手段がない 原発事故 避難計画が立たない」
事故はいつか必ず起きるものです。避難計画が机上だけのものであっては絶対にいけません。
避難計画には、当然 原発事故時には30キロ圏外の交通事情がどうなるかを想定して、それを反映する必要もあります。
いずれにしても そうしたことも全く眼中にないままで、ひたすら再稼動に走ろうとする安倍氏の姿勢は、論外の一言に尽きます。
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安全なら原発再稼働=「即ゼロ」に否定的—安倍首相
ウォールストリートジャーナル 2013年12月20日
安倍晋三首相は20日昼のTBS番組で、運転停止中の原発について、「(原子力規制委員会による)厳しい基準で安全と判断されたところは再稼働したい」と述べ、安全基準を満たした原発の再稼働に前向きな考えを示した。
小泉純一郎元首相が原発の即時ゼロを求めていることについては「国民の声を代表する一つの意見だ」と指摘。その上で「安定的なエネルギーがなければ製造業は(日本から)外に出て行ってしまう。小泉さんのように(即時ゼロと)言い切ることはできない」と述べた。[時事通信社]
原発事故避難計画策定済みは4割 30キロ圏市町村
東京新聞 2013年12月20日
原発の半径30キロ圏にある21道府県の135市町村が事故に備えて策定する住民の避難計画について、策定済みは4割の53市町村にとどまるとの集計(12月2日時点)を政府がまとめ、原子力防災会議に20日報告した。再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査が進む四国電力伊方原発と九州電力玄海は全自治体が策定を終えた。
規制委は再稼働に向け、防災体制の充実を重視。早期再稼働の可能性がある原発では策定済みの自治体が目立つ一方、審査入りしたばかりの東京電力柏崎刈羽などは全自治体が未策定だ。 (共同)