東北農政局は18日、福島原発事故で避難区域に指定された地域の農業用ため池262カ所で行った放射性物質調査結果を発表しました。
それによると、底土の調査では、全ての調査地点で放射性セシウムを検出し、全体の4割が、放射性指定廃棄物基準(1キロ当たり8000ベクレル)を上回りました。
底土の最高値は双葉町の大南はく※1ため池で、1キロ当たり39万ベクレルでした。
底土ではこれまでも4~6月の調査では1キログラム当たり46万ベクレル、昨年12月~今年3月の調査では56万ベクレルが確認されています。
(※1「延」のツクリが「白」)
(※1「延」のツクリが「白」)
河川の底土では浪江町の請戸川で3万3千ベクレル、南相馬市の太田川で1万3400ベクレルが、また福島県以外では、東京都と千葉、埼玉、栃木、群馬、茨城、宮城、岩手の各県で河川や海計373地点を測定していますが、全ての地点で水からセシウムは検出されなかったものの、底土の最高値は千葉県柏市の大堀川の底土で1キログラム当たり7900ベクレルなどが確認(8月の報告)されています。
また避難区域のため池の「水」では、220カ所のうち75カ所で放射性セシウムが検出され、うち4カ所で10ベクレル※2を超え 最大1キロ当たり19ベクレルを検出しました(朝日新聞)。
(※2 飲料水の基準値)
農業用ため池は沈殿池などとは異なり、別に上澄水だけが流出するという構造ではないので、上澄みが飲料水基準を下回っているから良いというものではありません。また ため池に周囲から水が供給される過程で、常に新たな汚染を受ける可能性もあります。
従って汚染された底土の除去は必須ですが、環境省は農業用ダム・ため池を除染対象としていない(農水省の管轄)ので、現状では国の財政支援を受けられません。
現在は避難区域のため池は農業に使われていないので問題はないということではなく、まず避難区域以外の広い範囲のため池をつぶさに調べることと、ため池に水が供給される過程での新たな汚染の有無についても調べることが必要の筈です。
放射能汚染が福島県内に留まらないことは、毎年長野県のキノコ類や栃木県のシカ・イノシシなどの野生動物の肉からセシウムが検出されていることからも明らかです。
国には 早急に本格的な調査をして本格的な対策を講じることが求められます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
4割で水底土壌8000ベクレル超 避難区域の農業用ダム
福島民報 2013年12月19日
農林水産省は国直轄除染エリアの避難区域内の農業用ダム・ため池262カ所で放射性物質検査を初めて実施し、約4割に当たる108カ所の水底の土壌(底質)から指定廃棄物(1キロ当たり8000ベクレル超)に相当する放射性セシウムが検出された。水質は1カ所で厚生労働省の通達による管理目標値(1リットル当たり10ベクレル)を上回った。農林水産省が18日、発表した。県は早期帰還や営農再開に影響するとみて、環境省に早期除染の必要性を訴える。
8月から12月にかけて調査した。放射性セシウムが8000ベクレル超~1万ベクレル以下は17カ所、1万ベクレル超~2万ベクレル以下は34カ所、2万ベクレル超~10万ベクレル以下は48カ所、10万ベクレル超は9カ所だった。10万ベクレル超は東京電力福島第一原発に近い浪江、双葉、富岡の3町や飯舘村で検出された。最大値は双葉町の大南はく(※)ため池で1キロ当たり39万ベクレルだった。
水質は、土壌と分けた水を検査し、36カ所で放射性セシウムを検出した。1リットル当たり10ベクレルを超えたのは双葉町の久保谷地ため池で11ベクレルを検出した。農業用ダム・ため池の水は農業用水などに使われる。ただ、避難区域内では現在、本格的に営農は再開されていないため、農林水産省は「現時点で農作物への影響はない」としている。 ※「延」のツクリが「白」
環境省は農業用ダム・ため池を除染対象としておらず、国の財政支援を受けられないのが実情。同省は、たまった水に放射性セシウムが発する放射線の遮蔽(しゃへい)効果があり、周辺環境に与える影響は小さいと見ている。現在は陸上など生活圏の除染を優先しており、担当者は「今後、除染の検討が必要になると思うが、現時点でダムやため池を除染対象に加える予定はない」と説明する。
一方、農林水産省は調査結果を踏まえ「高い数値の放射性セシウムが検出された。環境省には除染の必要性を訴えていく」としている。
県農地管理課の菊地和明課長は「帰還を目指す住民にとって、除染されていないと不安感が増す。継続して調査するとともに、環境省に除染の実施を促したい」と訴える。