「福島原発告訴団」の約6千人が18日、汚染水を海に流出させた「公害罪」の疑いで、広瀬直己社長ら現・旧幹部32人と東電に対する2度目の告発状を福島県警に提出しました。
告発は、① 汚染水を貯蔵するために応急的に製作した粗末な仮設タンクを、早期に強度と安全性を備えた通常タンクに切り替えず,漏洩の検知機構も付けず、タンク周りの堰につけた排水弁を開放したままにして汚染水の海洋への漏洩を起したこと。
及び
② 同原発の原子炉建屋地下には山側から海方向に毎日約1000トンの地下水の流れがあり,そのままでは炉心溶融により建屋地下に貯留している放射性物質と接触し,放射性物質が海に排出されることを認識しながら,2011年6月に政府から検討を求められた原子炉施設を囲む遮水壁の設置に対して、費用の出費を惜しんで約2年間にわたり抜本的対策を講ずることなく放置したことで,東京電力が認めているだけでも事故以降セシウム137は20兆ベクレル分,ストロンチウムは10兆ベクレル分を海洋に流出させたこと。
を挙げ、東電の怠慢により放射性物質を海に撒き散らしたとしています。
元々福島原発の敷地には阿武隈山系の地下水が日量1000トンも流れ込み、その地下水は海岸線から約10キロ先の海底から海に噴出していることは、東電は原発立地時から認識していて、地下水位が高いために建屋に浮力がかかることを防止するために、建設の当初から地下水を井戸で汲み上げて海に放出するという対応をしていました。
地下水の汚染度は酷く、原発の海側敷地にある観測用井戸水中のベータ線を出すストロンチウムなどの放射性物質濃度は、13日には1リットル当たり180万ベクレルに達し、この先何処まで上昇するのか分かりません。仮にこの濃度で毎日300トンが海洋に流出すると、月当たりでは16.2兆ベクレルが流出する計算になります。
そのほかにも、原子炉からは今も1日に2億4000万ベクレルの放射性物質が大気中に放出されています(東電の公表値)。
福島原発告訴団は昨年6月に、東京電力の幹部や経産省の役人など33人を刑事告訴しましたが、今年の9月に全員が不起訴となりました(その後東京検察審査会に審査を申し立て中)。
その一方で、福島の16万人が家を追われ、職業を失い、家族や地域社会がバラバラにされました。子どもたちは外で遊べなくなり、広い範囲で食べ物からは放射性物質が検出され、人々はこの先も健康被害に怯えて暮らさなければなりません。
2011年度、2012年度までの18歳以下の甲状腺検査の結果では、早くも約23万人中59人が甲状腺がんまたはがんの疑いとなり、原発事故の被害は今も拡大しています。
2011年度、2012年度までの18歳以下の甲状腺検査の結果では、早くも約23万人中59人が甲状腺がんまたはがんの疑いとなり、原発事故の被害は今も拡大しています。
原発の現場では、一日3000人の作業員が高い線量の中で働き、多重の下請け構造のために正当な対価を受け取れない作業員も多くいます。中間搾取はまさにゼネコンなど元請や上位下請けの格好の収入源になっています。
除染でもまた、原発で儲けたゼネコン会社が利権を獲得する構造が出来ており、多くの福島県民が作業員となっています。
このような被害があるのに、なぜ加害者の責任が問われないのでしょうか。
退職した東電の幹部は皆企業等に天下りしましたが、非常勤のためほぼ全員が普段は海外の超豪華マンションで王侯貴族のような優雅な生活を楽しんでいることが知られています(インターネットで容易に検索できます)。
日本には住みにくいからだと擁護する意見もありますがとんでもないことで、16万人の悲惨な現実を思えば何の説得力もありません。彼らにはそもそも罪悪感というものが欠落しているのでしょう。
日本には住みにくいからだと擁護する意見もありますがとんでもないことで、16万人の悲惨な現実を思えば何の説得力もありません。彼らにはそもそも罪悪感というものが欠落しているのでしょう。
もしもこの公害罪でも東電が相手では検察は立件しないというのであれば、もはや公害罪は中小の企業をいじめるだけの法令ということになってしまいます。
以下に東京新聞の記事と、告発状のうち「告発事実」と「結論」の部分を併せて紹介します。
「告発状」(福島県警本部長宛9月3日付 30ページ)は下記でご覧になれます。
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汚染水で2度目の告発 「福島原発告訴団」6千人
東京新聞 2013年12月18日
東京電力福島第1原発事故の責任を追及している「福島原発告訴団」の約6千人が18日、汚染水を海に流出させたとして「人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律」違反の疑いで、広瀬直己社長ら現・旧幹部32人と東電に対する2度目の告発状を福島県警に提出した。
県警は、告訴団の武藤類子団長ら3人が9月に提出した告発状を受理し、捜査を進めている。
告発状によると、東電は、地下水が原子炉建屋で汚染されることを認識しながら対策をとらず、毎日300~400トンの汚染水を海に流出させたとしている。
告訴団は昨年6月、事故の責任を問い東電幹部らを業務上過失致死傷容疑などで告訴・告発したが、東京地検は今年9月、全員を不起訴処分にした。告訴団は東京の検察審査会に審査を申し立てた。 〔共同〕
告発状 (福島県警本部長宛 9月3日付)よりの抜粋
・告発事実
被告発人東京電力株式会社は,福島県双葉町において福島第1原子力発電所(以下,「福島第1原発」という)を設置し,原子力発電の事業を営んでいた者であり,平成23年(2011年)3月11日間原子力発電所の全電源喪失から炉心溶融事故を引きおこし,その後継続して同原発の炉心冷却を継続して放射性物質のさらなる放出を防止する業務を電気事業の一環として遂行し,披告発入らは平成23年(2011年)3月11日以降,今日まで同社の取締役として,事故を起こした福島第1原発の事故対策,事故収束業務,汚染水管理の業務に従事してきた者らであるが,
(1) 人の健康に有害な放射性物質を大量に含んだ汚染水を貯蔵するために設置した応急仮設タンクからの汚染水漏洩を防ぐため,応急仮設タンクを早期に通常の強度と安全性を備えたタンクに切り替え,またタンク周りに設置された堰に設けられた排水弁を開放したままにすることなく,止栓して,仮にタンクからの流入が起きても,海洋への流出を防ぎ,さらにタンクからの漏洩が起きていないかを確実に検知し,速やかに漏洩防止の措置をとるなどの善管注意義務を負っていたにもかかわらず,これらの注意義務をことごとく怠り,平成25年(2013年)7月までに,タンクに損傷を引きおこし,汚染水のタンクからの約300トンの汚染水の漏洩に引き続いて海洋環境への漏洩を引きおこし,また,これを速やかに検知して漏出を早期に食い止めることができず,事業場における事業活動に伴って人の健康を害する物質を大量に排出した,
(2) 福島第1原発の原子炉建屋地下には山側から海方向に毎日約1000トンの地下水の流れがあり,これを迂回させて海に排出する確実な経路を確保しなければ,早晩地下水が建屋地下に流入し,炉心溶融により建屋地下に貯留している放射性物質と接触し,放射性物質に汚染された状態となって海に排出される事態となることを認識しながら,平成23年(2011年)6月17目政府から検討を求められた原子炉施設を囲む遮水壁の設置について,経営破綻を危惧して中長期的対策として問題を先送りにし,その後約2年間にわたり,抜本的対策を講ずることなく放置し,また危機的な状況を政府規制担当者らに説明しなかったため,日付不明の時期から今日に至るまで,毎日300ないし400トンの,東京電力が認めているだけで,平成23年(2011年)5月以降,海洋に流出したセシウム137は20兆ベクレル,ストロンチウムは10兆ベクレルに上る人の健康に有害な放射性物質を大量に含んだ汚染水の海洋への排出を引きおこし,事業場における事業活動に伴って人の健康を害する物質を排出した,ものである。
・結論
汚染水が大量に海洋に漏洩していたにもかかわらず,このことが国民には国政選挙終了まで知らされていなかった。事故の早期の収束を願ってきた福島県民・日本国民の願いは踏みにじられ,復興に立ち上がろうとする被害者の心を折るものと厳しく批判されている。
汚染水に含まれる放射性物質は膨大であり,太平洋全体の汚染が懸念されている。この汚染水の漏洩は,事故収束と汚染水管理の責任を負っている東京電力・同社役員が必要な初歩的な注意義務を怠り,無策のまま,対策を先送りしたことによるものであり,公害罪法違反の犯罪である。捜査当局は,一刻の猶予もなく、現場検証と関係書類の押収捜索、遮水壁の建造を先送りにした責任者らの逮捕などの強制捜査に踏み切り、事案の真相を明らかにするべきである。東京電力が、事業活動に伴って人の健康を害する物質を排出したことは明らかであり,責任者と法人の刑事責任を明らかにするため本件告発に及んだ。