しかし福島原発の汚染水は安倍首相が公言したように「完全に制御」されているどころか、海に流出する放射性物質は増加する一方です。この2日には海側敷地の観測用井戸の水から、ストロンチウム90などベータ線を出す放射性物質が1リットル当たりついに110万ベクレルの高濃度に達しました。因みにベータ線汚染水の排出基準は1リットル当たり30ベクレルです。
規制値の4万倍の濃度でその排出量は1日当たり数百トンと、桁外れに大量に排出されたストロンチウム90の超微粒子は海水中に拡散し、海中生物の食物連鎖を通じてやがて食卓に供されます。体内に取り込まれたストロンチウムは近傍の細胞を破壊しつくすので、その害毒はセシウム(ガンマー線源)の比ではありません。
一体いつになれば汚染濃度の増加は収まり、いつになれば汚染地下水の海への流出が止むのでしょうか。
汚水の流出防止には、地中凍土壁という聞きなれない方法が予定されている(施行は鹿島建設)ということです。凍土法はトンネル掘削時の小規模漏水を防止するために実施したことはあるようですが、日量数百トンの地下水流のあるところに、大々的に凍土壁を建設することが、技術的に可能なのかは未知数ということです。
いつになれば完成するのかも分からない上に、本当に止水できるのかも出来上がるまで分からないという計画が進行しているわけです。世界が注目している現場に、なぜそんな“ばくち”的な方法が採用されたのでしょうか。何故通常の鋼矢板で止水してコンクリート壁を作るという、間違いのない方法を取らないのでしょうか。
まもなく3年になろうというのにまだ何もかもが五里霧中、心配は増しこそすれ一向に安心などできない、というのが現状です。
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遮水壁 遠い完成 震災1000日 漏れ続ける汚染水
東京新聞 2013年12月4日
東日本大震災の発生から四日で千日目を迎えるのを前に、いまだ収束しない東京電力福島第一原発の事故現場を上空から見た。
いくら安倍晋三首相が「汚染水の影響は完全にブロックしている」と強調しようと、今も海に高濃度汚染水が漏れ続けている。護岸近くに無数の太い鋼管を打ち込んで壁を造り、漏れを止めようとする作業が続く。写真中央を1~4号機の取水口に沿って逆L字形に延びるのが、その遮水壁だ。
上空を飛ぶのは、八月にボルト締め型のタンクから汚染水漏れが発覚して以来、三カ月半ぶりだ。その間にも、敷地南側にあった野球場は消え、タンクの増設用地へと姿を変えていた。耐久性の高い溶接型タンクに切り替えるため、作業員がコンクリートの基礎を造っていた。北側でも森の伐採が進み、汚染したがれきなどの一大集積場と化しつつあった。
気掛かりなのは、海洋汚染対策。鋼管による遮水壁の建設はかなり進んでいるように見えたが、東電によると完成は十カ月も先だ。
建屋と護岸の間には計一万トン超という、小学校のプールでざっと三十杯分の高濃度汚染水がたまった地下トンネルがある。その対策はこれから。押し寄せる大量の地下水を止めるため、政府が税金で1~4号機を囲むように建設する地下の凍土壁も、まだ実証段階だ。
事故収束への出口が見えない。視線を敷地外に移すと、原発から飛び散った放射性物質を民家から除去した除染廃棄物の山が、ぐんと増えた。住民が安心できる日はまだ来ていない。 (山川剛史)
福島第一原発から海への高濃度汚染水の漏出を食い止めるため、1~4号機の取水口に沿って建設が進む海側遮水壁。船で太い鋼管を打ち込み、壁状にしていく=3日、福島県大熊町で、本社ヘリ「おおづる」から(嶋邦夫撮影)