政府は除染の費用を全額国が負担するなどの東電支援策を正式に決定しました。政府が保有する東電株の売却益をそれに充て、不足分は国民が負担するという言い方をしていますが、政府保有の東電株自体が国民の財産です。
除染事業は原子力村のメンバーの莫大な収入源につながることは既に明らかにされていますが、その除染や補償も東電に任せていてはいつまでたっても埒が明かない現状では、国民の負担で進めることはやむを得ないことに思われます。
しかし東電を温存したままでそこに莫大な支援を行っても、東電はそれらを銀行からの借入金の返済や利子の支払いに最優先で廻します(銀行はそれでもまだ不足で、これまでの融資金を万一の破綻処理に備えて、そのときでも返済が最優先される社債に転換を進めているといわれます)。
また数兆円に及ぶ送電設備も保有したままなので、それらが損害賠償資金に廻されることもありません。
政府には東電を破綻処理する意向は全くないので、国費による東電の支援にはいつまでたってもこの不合理さと不明朗さが付き纏います。
この胡散臭さはいずれボディーブローのように政権に対して効いてくる筈なので、いまは早く効いてくることを期待するしかありません。
それにしても、売却する東電の株価を上昇させるためには収益改善が必要なので、新たな国民負担を避けることを名目に、こともあろうに政府が柏崎刈羽原発の再稼働を加速させる恐れもあると観測される、というに至ってはまことに本末を転倒した暴論で、東電より一足先に政府の論理の方が破綻しているという他はありません。
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東電除染 国が全額肩代わり 国民負担、追加の恐れ
東京新聞 2013年12月21日
政府は二十日、除染費用三兆六千億円を全額、国の負担とするなど新たな東京電力への支援策を正式決定した。除染費用の大部分に政府が保有する東電株の売却益を充て、東電の負担分を最終的にゼロとする仕組み。だが、政府のもくろみ通りに東電株が値上がりしなければ、追加の国民負担につながる恐れがある。 (桐山純平、岸本拓也)
東電への新たな支援策の柱は、賠償や除染の資金支援枠を現行の五兆円から九兆円に拡大した上で、除染費用に関しては全面的に国が負担する。
茂木敏充(もてぎとしみつ)経済産業相は二十日の会見で「前(民主党)政権では、すべて東電に押しつける形で対策が後手に回っていた」と国が前面に出る理由を強調した。
除染費用のうち、放射性物質で汚染された土壌を保管する「中間貯蔵施設」の建設費用は一兆一千億円を見込む。その費用は、電気料金の一部が原資となっているエネルギー対策特別会計から三十年かけて充てる。
残りの二兆五千億円は、除染作業そのものにかかる政府の見積もりだが、財源はあやふやだ。政府は、原子力損害賠償支援機構が東電支援のために保有する東電株(一兆円分)の将来の売却益を充てる予定。だが、政府の想定通りに二兆五千億円という巨額の利益を得られなければ、不足分は税金か電気料金で埋められることになり、追加の国民負担となる。
東電の株価上昇には、会社の収益改善が必要。新たな国民負担を避けることを名目に、政府が柏崎刈羽(かりわ)原発の再稼働を加速させる恐れもある。
これまでの除染費用の負担をめぐっては、支払い義務があるにもかかわらず東電は財務状況の悪化を理由に拒否し続けてきた。除染費用の全額国費負担は東電の「ごね得」の結果ともいえ、なし崩し的な救済には批判も出そうだ。