東電の再建計画が、国の支援強化を盛り込み、原発事故に伴う負担に枠をはめたうえで、柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働頼みであることに対して、毎日新聞が、原発に依存しない再建の道を探るべきとする社説を掲げました。
社説は、同原発が建屋の下に活断層の存在が疑われるのに加えて、泉田新潟県知事が住民の安全確保を理由に強く反発していることをあげ、原発を「重要なベース電源」と位置づける政府のエネルギー計画案に便乗する形で、なし崩し的に原発依存を強めようとするのでは国民の理解は得られないとしています。
銀行からの融資をつなぐために=自分が生き延びるために(、銀行のいうがままに)なりふりかまわず原発の再稼動に向かうというのでは、まさに「反社会的企業」に他ならないし、収益力改善のためには「企業倫理」も何もかもが捨象されるというのでは、あまりにもみすぼらしい話です。
いまこそ かつては一流企業と看做されてきた矜持を思い出して、さすがはと思える道を探るべきではないでしょうか。
その道がどうしても見出せないということであれば、潔く破綻処理するしかありません。再建計画を作るのであればそういう立場で行うべきです。
「貸手責任」を負うべき銀行筋も全く同様です。
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(社説) 東電の再建計画 原発頼みの脱却目指せ
毎日新聞 2013年12月29日
東京電力が新しい総合特別事業計画(再建計画)を決めた。国の支援強化を盛り込み、原発事故に伴う負担に枠をはめることで再建の道筋を明確に描く狙いがある。
しかし、柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働頼みであることは前の計画と変わらない。それが足かせになっては、計画も絵に描いた餅に終わりかねない。事故の収束や被災地復興を確実に進めるためにも、原発に依存しない再建の道を探るべきだ。
新計画は電力小売りが家庭向けを含めて全面自由化される2016年度をにらんで収益力を改善させるシナリオを描く。16年度に持ち株会社制に移行して発電、送配電、小売りの事業子会社を設立する。発送電分離を先取りして競争環境を整え、事業子会社の収益性を高める狙いだ。
東電は国から借金する形で除染を実施するが、その返済に原子力損害賠償支援機構が保有する同社株の将来の売却益を充てる。自らの努力で企業価値を上げるほど負担が軽くなる仕掛けだ。ただし、企業価値を上げられなければ大きな負担が残り、結局は電気料金に上乗せされる形で国民につけが回る。
収益力改善が重要課題であることは間違いない。しかし、柏崎刈羽原発の再稼働をその前提としている点に大きな問題がある。計画では同原発6、7号機を14年7月に、1、5号機を15年春に再稼働させる。
ところが同原発は建屋の下に活断層の存在が疑われるほか、泉田裕彦新潟県知事が住民の安全確保を理由に強く反発している。経済性を優先させて再稼働を急ぐべきではない。
計画は東電と国が二人三脚で作ったものだ。再稼働重視は原発を「重要なベース電源」と位置づける政府のエネルギー計画案と符合する。なし崩し的に原発依存を強めようとするのでは国民の理解は得られまい。
東電には原発頼みから脱却し、計画に盛り込んだガス販売や小売り部門での新規事業、海外投資などを収益源に育てる努力を求めたい。
今回再稼働を急ぐ計画を作ったのは、収益力改善を銀行に納得させる意味合いも大きい。黒字が見込めなければ融資してもらえないからだ。しかし、東電再建に税金が投入される以上、融資で利益を得てきた銀行も一定の「貸手責任」を負うべきだ。再建の足を引っ張るような融資態度は改める必要がある。
一方、事故を起こした原発の廃炉を進めるため、来春に廃炉部門を社内分社化する。廃炉費用は約2兆円を見込み、既に積み立てた1兆円を超える分は今後のリストラで捻出する。廃炉技術は確立していない。安全、確実に進めるため技術開発などで政府の積極的な支援を求めたい。
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(社説) 東電事業計画―金融機関も変えてこそ
朝日新聞 2013年12月29日
東京電力が、新たな事業計画を政府に提出した。正月明けにも認められる見通しだ。
東電の全額負担とされてきた除染などの事故対策費に上限が設けられ、それ以上については国費が投入される。
法律上、原発事故への無限責任を負っている電力会社に対して、実質的な免責を導入することになる。
一企業では到底まかなえない巨額な費用を東電に押しつけるだけでは、被災者への賠償や除染が滞りかねない。電力改革も進まない。かたや国には原発を推進し、過酷事故対策を怠ってきた責任がある。国費の投入はやむを得ない。
ただし、兆円単位の税金を投じるからには、東電の利害関係者、とくに金融機関の貸手責任を問わなければならない。
事故で事実上、債務超過に陥った東電は、本来なら破綻(はたん)処理されている。そうなれば、金融機関も巨額の債権放棄を迫られていたはずだ。
震災前、東電が優良な公益企業だったことに安住し、原発リスクや安全投資への姿勢を吟味してこなかったと批判されても仕方がない。事故後の支援融資はともかく、それまでの債権が丸ごと守られることに、納税者が納得できるだろうか。
今回、東電に身を切るリストラや経営改革を実行させるのは当然だが、金融機関への追及はまだ甘い。政府はあらゆる手段を検討すべきだ。
柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働を、金融機関が強く求めていることにも注意しておく必要がある。債権の保全や融資の継続のために、再稼働で東電の収益力を上げさせることが金融機関の狙いだ。
しかし、国民負担の増大を抑えられるからといって、早々と原発を再開することは許されない。東電は、数万人に今なお避難を強いる原因をつくった当事者である。
汚染水対策をはじめ、福島第一原発の事故収束がおぼつかないのに、どこにそんな余裕があるのか。
金融機関は、送配電部門や発電・燃料調達部門の分社化をめぐっても、東電から引き受けた社債の担保が散逸しないよう保証を求めている。将来に向けた改革を妨げかねない。
こうした金融機関の振る舞いは、地域独占を前提とした古い電力システムにどっぷりつかっているように映る。
今後、電力業界全体の制度改革が進む。電力向け融資のあり方についても、根本的に見直すときだ。