2023年1月21日土曜日

21- トリチウム水の海洋放出 漁業者側と交わした約束はどうなったのか

 政府と東電は15年、福島県漁連に対しトリチウム水の処分について、「関係者の理解なしには、いかなる処分(海洋放出)も行わない」と文書で約束していましたそれが8年経った23年1月でも、東電の社長によれば「地元の理解がしっかり進んでいる状況にはない」ということです。
 そうであればもはや「丁寧に説明を尽くす」というような段階ではない筈です。それなのに何の切迫感も伝わらないのは一体どういうことでしょうか。それとも天下に知られた約束を反故にするつもりでなのでしょうか。つくづく東電は化け物のような会社です。
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原発処理水の海洋放出は「今年春から夏」と政府が決定 漁業者側と交わした約束はどうなったのか
                         東京新聞 2023年1月13日
 政府は13日、東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)で発生する汚染水を浄化処理した後の水の海洋放出について関係閣僚会議を開き、「放出開始は今年春から夏ごろを見込む」とする方針を決めた。2021年4月の海洋放出方針の決定時に「2年程度後」としていた開始時期が具体化した。漁業関係者からは反対の声が上がっており、実際に放出できるかは見通せない。
 政府と東電は15年、福島県漁連に対し「関係者の理解なしには、いかなる処分(海洋放出)も行わない」と文書で約束していた。全国漁業協同組合連合会の坂本雅信会長は13日、「海洋放出に反対であることはいささかも変わらない」との談話を出した。
 この日の閣僚会議では、海洋放出に向けた行動計画を改定した。放出開始の見込みのほか、全国の漁業者向けに新たに500億円の基金を創設し、漁業の継続支援を強化。新たな漁場の開拓や漁船の燃料コスト削減策などに対し、必要経費を基金から支援する。
 テレビCMなどを活用した情報発信の拡充も盛り込み、計画は「安全確保と風評対策のために必要な具体策のメニューはおおむね出そろった」とした。

 東電の小早川智明社長は会議後の報道陣の取材に「地元の理解がしっかり進んでいる状況にはない。丁寧に説明を尽くしたい」と話した。
 福島第一原発で発生する汚染水は、多核種除去設備(ALPS)で浄化処理。東電の計画では、放射性物質トリチウムが残る処理水に大量の海水を混ぜ、トリチウム濃度を国の排水基準の40分の1未満に薄めた上で、海底トンネルを通じて沖合約1キロに放出する。放出関連設備の工事は6月ごろまでかかる見通しで、政府は工事の進捗しんちょく状況を踏まえ、開始時期の見込みを示した。(小野沢健太)

◆形骸化した約束…理解得られたかの判断基準もなく
 <解説> 東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出の開始時期を「今春から夏ごろを見込む」と政府が示したことで、反対を貫く漁業関係者との「約束」の形骸化が進んだ。「関係者の理解なしに海洋放出はしない」と約束してきた以上、開始時期の目安は、漁業関係者らの理解を得た後に示すのがあるべき姿だ。
 反対意見に向き合わずに手続きを進める政府の姿勢は、昨年末の原発政策の見直しで、原則40年、最長60年としてきた原発の運転期間について60年超の運転を可能とするなど原発の積極活用に転じた際も同じだった。
 処理水の海洋放出について政府や東電は「丁寧に説明を続ける」とするが、理解が得られたかどうかをどのようにして判断するのか、詳しい説明をしようとしない。漁業関係者の間でもあきらめの声が上がる
 福島第一原発では汚染水が毎日増え続け、いずれは処理水の貯蔵も限界を迎える。ただ、処理水の増加量は東電の従来の説明よりも緩やかになっており、今夏までに放出するほど差し迫ってはいない。なし崩し的に放出に踏み切るのではなく、時間をかけ、まずは関係者の理解を得ることが前提だ。(小野沢健太)