山間の町、広島県庄原市西城町では近くを流れる小さな川から水を引いて発電する小水力発電が行われ、スキー場の電力を賄い地域の貴重な収入源になっていましたが、18年の西日本豪雨で取水口に土砂が流れ込み発電ができなくなってしまいました。
修理するにも、それをやめて借地を原状復帰するにしても多額の費用がかかり、住民たちは途方に暮れていました。そこに救世主として現れたのが、東広島市に本社を置くイームル工業(創業75年の水力発電機のメーカー)でした。テレビ新広島が伝えました。
原記事では動画が見られるので興味のあるかたはアクセスしてください。
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「小水力発電」の秘めたる可能性 燃料高騰で注目の再生可能エネルギー
テレビ新広島 2023/1/11
原記事↓(動画あり)
「小水力発電」の秘めたる可能性 燃料高騰で注目の再生可能エネルギー
ロシアによるウクライナ侵攻などの世界情勢の変化で石油などの化石燃料が高騰する中改めて再生可能エネルギーが注目されています。広島の老舗の発電機のメーカーの新たな挑戦を追いました。
庄原市西城町三坂地区、山に囲まれた県北の町です。
この地区にひそっりとたたずむこの建物が建設されたのは今から56年前。
【イームル工業・向橋宏昭さん】
「水を水槽に貯めたものを流して発電するというの水力発電です」
建物の中に設置されているのは古びた鉄の大きな装置。『小水力発電』と呼ばれる小規模な水力発電施設で、近くを流れる小さな川から水を引いて発電をしています。高度経済成長期に建設されたこの発電所。スキー場の電力を賄い地域の貴重な収入源になっていました。
しかし2018年の西日本豪雨で被災。水を取り込む取水口に土砂が流れ込み発電ができなくなってしまいました。修理するにも、それをやめて借地を原状復帰するにしても多額の費用がかかり、住民たちは途方に暮れていたといいます。
【三坂住民の会 役員・堀井康夫さん】
「直すか直さないか決断を迫られまして、当初、三坂には80戸あったんですが今は48戸しかないんで、みんなで借金するにもちょっと無理だなと、どうしようかなという話をしていたんですが」
そんなとき、声をかけたのは発電機にも名前が刻まれている製造会社「イームル工業」でした。発電設備の譲渡を受け、地域に親しまれた発電所を引き継いで再生させるというのです。
東広島市に本社を置くイームル工業は創業75年の水力発電機のメーカーです。
創業から主に発電機器などの製造を行ってきましたが、今回、発電事業に乗り出すことを決めたのです。
【イームル工業・山口克昌社長】
「非常にチャレンジングなことだとは思っていたんですけども、創業者の思いに背中を押されたということもあって」
そのイームル工業の創業者・織田史郎。陸上競技・三段跳びの金メダリスト・織田幹雄の兄でもある織田史郎は会社を創業すると戦後電力が不足する中国地方の山間部で小水力発電所の建設に地域とともに汗を流したといいます。創業の精神を大切にし発電事業に取り組むことにした背景には小水力発電の秘めたる潜在能力をあげます。
【イームル工業・山口克昌社長】
「小水力の分野でも約400万キロワット、ピンと来ないかもしれませんけども原発約4基分ぐらいの相当のポテンシャルを日本国内にまだまだ有しています。再エネの一つのベース電源に成り得るのが小水力発電所なんだろう」
小水力発電は太陽光や風力に比べて年間を通じて安定した発電量が期待でき、発電所を長く使えるメリットがあります。一方で初期投資額が大きいことがデメリットです。
【イームル工業・山口克昌社長】
「我々は製造している機器のメーカーですし、そこはこれからの社会のために我々ができるコスト低減策ということはメーカーの努力として続けていかないといけないことだと思いますし、簡便にできる工法を模索するために我々そういったモデルをいくつか作って、実現させたいというこれからの未来構想も持っています」
山間の小さな集落から始まったこの計画。将来のエネルギー生産のあり方の1つとして注目されています。
【スタジオ】
日本の総発電量に占める再生可能エネルギーの割合です。太陽光発電などの普及でおよそ20%ほどとなっていて、このうち水力は7・8%にとどまっています。
欧米の国の中には再生可能エネルギーの割合が50%を超えている国も少なくありません。
今後、課題を解決したうえで山が多い広島の特色を生かした小水力発電の普及が、改めて今後の再生可能エネルギーの普及のカギを握りそうです。