既報の通り 福島県から群馬県などに避難した住民91人が国と東電に計約四億五千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は21日、国と東電の責任を認めた一審前橋地裁判決を覆し、国の責任を否定しました。
一方、東電に命じた賠償については、一審判決の62人から90人まで救済範囲を広げ、金額も計約3855万円から、約3倍の計約1億1972万円に増額しました。
長谷川亮輔弁護士は「一審よりも認定されている人が多いが、原告ごとに金額増減の判断が分かれている。平均的な損害を超える個別の立証ができた」と一定の評価を示しました。
地元の2紙が伝えました。
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津波対策、国の責任否定 東京高裁原発集団訴訟 一審判決覆す
福島民報 2021/01/22
東京電力福島第一原発事故に伴い、県内から群馬県などに避難した九十一人が国と東電に計約四億五千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(足立哲裁判長)は二十一日、国と東電の責任を認めた一審前橋地裁判決を覆し、国の責任を否定した。津波対策を東電に命じなかった国の対応を「問題があったとまで認めることは困難」と判断し、一審で国に賠償を命じた部分を取り消した。東電の賠償額は一審より増額し、九十人に約一億一千九百七十二万円の支払いを命じた。
約三十ある同種の集団訴訟の高裁判決は二件目。国の責任が初めて高裁で否定された。昨年九月の仙台高裁判決は国の責任を認めており判断が分かれた。原告側は判決を不服とし、上告する方針。
足立裁判長は判決理由で、巨大地震の可能性に言及した政府機関による地震予測「長期評価」には異論もあり、土木学会の知見とも整合しないため、国は長期評価から津波の発生を予見できなかったとした。長期評価を基に防潮堤設置などの対策を講じても事故は回避できず、国の対応が「著しく合理性を欠くとは認められない」と結論づけた。
一方、東電に命じた賠償については、支払う対象を二〇一七(平成二十九)年三月の一審判決の六十二人から九十人まで救済範囲を広げ、金額も計約三千八百五十五万円から、約三倍の計約一億一千九百七十二万円に増額した。
控訴審の原告は避難指示区域内に住んでいた三十七人と避難指示区域外の五十四人。避難に伴う精神的慰謝料など一人当たり三百三十万円~千百万円を求めていた。
国責任「非常に甘い認定」 避難者訴訟、仙台高裁と結論正反対
福島民友 2021年01月22日
東京電力福島第1原発事故を巡る避難者訴訟で、国の責任を否定した21日の東京高裁判決。「(国の対応は)著しく合理性を欠くとは認められない」。先行した仙台高裁判決とは正反対の結論に原告からは「不当判決だ」と怒りの声が上がった。
「一審国の敗訴を取り消す」。21日午後2時10分。東京高裁の足立哲裁判長の主文言い渡しは10分で終わり、傍聴席からはため息が漏れた。東京高裁前では報道陣が集まる中、「不当判決」と旗が掲げられた。
裁判の焦点となったのは、大津波発生の可能性を指摘した2002年の「長期評価」。高裁初となった昨年9月の仙台高裁判決は、「国は当局に期待される役割を果たさなかった」とした上で長期評価の信頼性を認定、国の責任を認めていた。
一転して国の責任を否定した今回の判決に、鈴木克昌弁護団長は「国の責任と東電の落ち度について非常に甘い認定内容。到底容認できない」と酷評。事務局長の関夕三郎弁護士は「高裁判断が分かれた。最高裁に判断を仰ぎたい」と語気を強めた。
一方、賠償については「避難の状況など具体的事情を考慮して個別に慰謝料額を算定するのが相当」と高裁レベルで初めて認め、国の中間指針を超える範囲と金額を認定した。
具体的には〈1〉帰還困難、居住制限、避難指示解除準備の3区域の住民に1100万~1500万円〈2〉緊急時避難準備区域・特定避難勧奨地点の住民に260万~580万円〈3〉自主的避難等対象区域の住民に30万~70万円―とし、一審判決よりも救済範囲を拡大。事故後に生まれた1人の請求は棄却した。賠償範囲の拡大について、長谷川亮輔弁護士は「一審よりも認定されている人が多いが、原告ごとに金額増減の判断が分かれている。平均的な損害を超える個別の立証ができた」と一定の評価を示した。