2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標を掲げた菅首相の「宣言」を機に、自民党内で原発推進論が勢いづいているということです。しかしひとたび過酷事故を起こせば少なくとも100年近くは正常に戻らない環境汚染を引き起こす原発の再稼働を、地球環境保全のために進めるというのは辻褄が合いません。
そもそもウランの採掘から核燃料に精製するまでと、使用済み核燃料を10万年に渡って管理するためには、天文学的な量の室効果ガス排出を伴います。
それに原発は燃料効率が30%と低いため、その分同じ量の電力を生むのに火力に比べて海水を暖める度合いが高く「海水暖め器」と称されています。
原発の再稼働が地球温暖化を防ぐというのはタワゴトです。
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菅首相の「脱炭素」宣言機に勢いづく原発推進議員 「新設」発言も
西日本新聞 2021/1/12
2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標を掲げた菅義偉首相の「宣言」を機に、自民党内で原発推進論が勢いづいている。国内の二酸化炭素(CO2)排出量の4割を占める発電部門の脱炭素化を図るには、CO2を出さない原発が不可欠だという主張だ。東京電力福島第1原発事故から3月で丸10年。世論の反応を試すかのように、原発の新増設の必要性を訴える声が出てくる可能性もある。
昨年10月26日の所信表明演説で首相が実質ゼロを宣言した翌日。自民党の世耕弘成参院幹事長は間髪入れず、記者会見で「安全に配慮しながら再稼働を進め、新技術を取り入れた原発の新設も検討することが重要」と述べた。下村博文政調会長も追随し、同28日に「原発を全く稼働しないで脱炭素を実現できるのか」と強調してみせた。
原発事故後は沈黙を余儀なくされてきた党内の原発推進派だが、このところの「復権」ぶりは目を見張る。
「原発を進めないと中国との経済格差が広がる」「原則40年の原発運転期間から福島事故後の停止期間を除くべきだ」。エネルギー関連の党内議論や議員連盟では強気の発言が相次ぐ。推進派の「番頭格」とされる高木毅元復興相は「大変意を強くしている」と手応えを口にする。
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推進派の戦略は党内世論を高め、政府を動かすこと。だが首相は所信表明演説で「安全最優先で原子力政策を進める」と触れただけ。昨年秋の臨時国会では従来通り、新増設は「現時点では考えていない」と答弁した。
推進派の若手議員は「脱炭素を訴える割に、原発推進の意欲を感じない」と不満を隠さない。ある派閥領袖(りょうしゅう)は「支持率が下落する中、党内の声を聞かないと首相の立場は危うくなる」とけん制する。
原発政策に首相の関心は必ずしも高くない。官邸幹部によると、所信表明演説の原案に原子力の記述は全くなく、世耕氏が「脱炭素と原発の活用は一体だ」と注文し、土壇場で追加された。官邸幹部は「原発のことは首相の頭になかった」と明かす。
もっとも、首相は16年の官房長官当時、鹿児島県の三反園訓(みたぞのさとし)知事(当時)が九州電力川内原発の一時停止を主張した際、県内自治体の首長に直接電話し、原発の運転継続に協力を求めている。
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政府は昨年12月に「グリーン成長戦略」を発表した。50年の電源構成に占める再生可能エネルギーの割合を「参考値」として5~6割と設定しつつ、原子力の役割も明記。「確立した脱炭素技術」と位置付け、「可能な限り依存度を低減しつつも引き続き最大限活用」「再稼働を進めるとともに安全性に優れた次世代炉を開発」するとした。
「声を上げた成果が実った」と九州の推進派議員はうなずく。次に照準を定めるのは、今年改定される国のエネルギー政策の指針「エネルギー基本計画」に、原発の新増設を盛り込ませることだ。
政府は原発事故後、新増設を封印し、新たな安全基準による再稼働を優先。経済界も、新増設を迫り国民の反発でつぶれる「やぶ蛇」を警戒してきた。ただ、電力会社や原発メーカーには「これ以上、新増設があいまいなままでは経営戦略を描けない
。はっきりしてほしい」との声もあり、これが推進派議員の動きにつながっている。
いわばタブーとして封印されてきた新増設が表面化する日は近いのか。原発の活用に慎重な立場の柴山昌彦幹事長代理は、前のめりの推進派に「政治は国民とのキャッチボールだ。そこはしっかりと意識してほしい」とくぎを刺す。 (湯之前八州)