2021年1月20日水曜日

20- 原賠審の中間指針 現状に照らし見直しを(福島民報)

  原発ADRの和解案を東電が拒否する主な理由は、東電が住民の精神的苦痛などへの賠償は準拠した「中間指針」に織り込み済みと考えているためで、東電はその主張を譲りません。

 そうであれば既に丸10年が経過し不合理があきらかになっている「中間指針」を改定するしかないのですが、19年1月に住民側弁護団が、中間指針の見直しを原陪審に要求しましたが、原陪審は「討議する必要なし」ということで審議もせずに門前払いにしました。横暴な態度です。
 福島民報が「原賠審の中間指針 現状に照らし見直しを」とする論説を出しました。
   (1月25日) 原発ADR和解案東電拒否 弁護士会が中間指針の見直しを要請
  (19年2月15日)原陪審は何故中間指針を見直そうとしないのか
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 【原賠審の中間指針】現状に照らし見直しを
                          福島民報 2021/01/19
 東京電力福島第一原発事故の損害賠償の基準となる原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)の中間指針は二〇一三(平成二十五)年十二月の見直しから大きな改定がないまま七年余りが経過した。被災者からは現状に即していないとの声が上がっている。原賠審は東日本大震災と原発事故から丸十年という節目に際し、被災地の現状に照らし適切な中間指針に改めるべきだ。
 中間指針は避難区域の住民の精神的損害への賠償額などを定めた。原発事故直後は、被災者の生活再建に役立てるため、早期に一律の目安を示す必要があった。七年前の改定では、帰還困難区域について避難の長期化に伴う古里喪失の慰謝料を増額した。
 一律の賠償で十分に救済されない場合には、裁判外紛争解決手続き(ADR)や民事訴訟の道がある。ADRの申立件数は二〇一九年末現在で約二万五千件に上り、このうち20%近くは和解に至っていない。
 集団訴訟では二十地裁・高裁で判決が出ており、一件を除いて東電に中間指針を上回る支払いを命じている。東電と国を相手取った生業[なりわい]訴訟では、仙台高裁が中間指針にはない居住制限、避難指示解除準備両区域の古里喪失の慰謝料支払いや、避難区域以外の住民の精神的賠償を上乗せする判断を下している。
 個人でADRや民事訴訟を提起し、損害を立証するのは容易ではなく、被災者に等しく十分な賠償が行き渡っているとは言い難い。判決はいずれもまだ確定していないとはいえ、原賠審は積み上がってきたADRや民事訴訟の結果から、被災者の精神的損害などを今一度分析し直す必要があるのではないか。
 県民のうち今も約三万六千五百人が避難生活を送り、避難指示が解除された地域の再生も途上にある。廃炉の行方も不透明だ。原賠審は中間指針について「直ちに見直す必要はない」との見解を示しているが、山積みの課題が被災者を精神的に追い詰めているのは明白だ。県は復興が道半ばである実情をこれまで以上に国に訴えてほしい。
 東電は和解案の尊重という誓いを掲げているにもかかわらず、集団申し立ての場合、中間指針を理由に拒否するケースが相次いでいるとされる。昨年十二月、法律上の時効となる三月以降も賠償請求に応じることを明言したが、時効がないからといって救済が進むとは思えない。原賠審の中間指針の見直しとともに、東電には当事者としての責任を再認識することが求められる。(円谷真路)