東京新聞が、エネルギー基本計画を改定する有識者会議で原発の利用に積極的な意見が相次ぐ実態を報じました。
これは経産省がその様になるように委員を選出した結果で、政府が世論との隔たりを埋めることなく原発政策を進めようとすることには、会議の一部委員からも懸念の声が上がっています。
いわゆる有識者会議が、一見、第三者風に見えながらその実政府の意向に沿った結論を出すのはごく普通のことで、まさに「欺瞞の形式」そのものです。
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経産省有識者会議、原発支持続々 段階的廃止求める世論と溝 エネルギー基本計画改定論議
東京新聞 2021年1月20日
2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする菅内閣の目標を見据え、政府は今年夏にもエネルギー基本計画を改定する。焦点である将来の原発利用に関し、世論の多くは段階的廃止を望むが、改定論議を進める経済産業省の有識者会議では利用に積極的な意見が相次ぐ。政府が世論との隔たりを埋めることなく原発政策を進めようとすることには会議の一部委員からも懸念の声が上がっている。(妹尾聡太)
改定論議の主体は企業経営者や研究者ら24人で構成される「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」。原発を推進してきた経産省が所管しているため、原発に好意的な委員が選ばれやすいとの指摘があり、原発産業に直接の利害関係を持つ委員も散見される。
原子炉メーカーのIHIの水本伸子氏は「人材、技術、産業基盤の維持強化には原発の新設が必要だ」と強調。原子力研究者の山口彰東京大大学院教授は原発の再稼働や新設の「価値を正当に評価するべきだ」と訴えた。元経産審議官の豊田正和氏は「新増設の準備を始めるべきではないか」と発言した。
原発と火力発電の課題を議論した昨年12月21日の会合では21人が原発に関し発言。うち約3分の1が原発の新増設や建て替えの議論が必要だと主張。残る委員の大半も原発存続に賛意や一定の理解を示した。
だが新増設などを求める国民は少ない。一般財団法人日本原子力文化財団の19年10月の世論調査では原発の将来に関し「増やしていく」と答えた人は2%にとどまり、「即時廃止」「徐々に廃止」を合わせ廃止を望む人は6割に達した。
3年ごとに見直す基本計画は発電での原発や再生可能エネルギーなどの将来比率も決定。それにもとづき予算や税制、規制も決まるため政策の基礎になる。国民生活に密接に影響するだけに委員の中からも、原発推進論者の多い分科会だけでは議論が尽くされないとの声が漏れる。ある委員は「さまざまな業界や団体、人々が発言する形で身近な問題として議論しないといけない」と話した。
「新増設準備を」「運転延長が必要」 原発推進に息潜める反対意見 経済産業省の分科会
東京新聞 2021年1月20日
昨年12月21日に開かれた経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の会合では、原発の新増設や建て替えに加え、運転期間の延長などさまざまな観点から「推進色」の濃い意見が飛び交った。
原発は運転開始後40年を上限に、廃炉にする原則だ。それ以上は、安全対策を徹底することなどを前提に60年まで延長できる。だが、東京海上日動火災保険の隅修三相談役は「60年や80年への延長は必須だ」と訴えた。
原発に関する人材や技術を維持するためには原発建設が必要との意見も出た。
原発の安全性を強調する声もあった。
NTTの沢田純社長は、東京電力福島第一原発事故の原因は全電源喪失にあるとした上で「実は原子炉は安全だったと、ちゃんと振り返るべきだ」として原子炉自体には問題はなかったとの持論を展開し、将来の新型炉は「従来と比べて安全性が高い」と語った。
一方で、原発に明確に慎重な意見を述べた委員は少なかった。
ANAホールディングス社外取締役の小林いずみ氏は「コストの分析と開示をしないと国民の納得は得られない」と指摘。消費生活アドバイザーの村上千里氏は「(原発推進に)反対する研究者や団体の意見も聞いて検討してほしい」と経産省に求めた。(妹尾聡太)