現在、貴重な遠浅の海域がある秋田県沖で、事業総額1兆円と試算される着床式風力の大型プロジェクトが進んでいます。
国は12年から約600億円を投じ福島県沖で浮体式の事業を進めてきましたが、経産省は昨年末、不採算を理由に施設を撤去すると表明しました。発電機の選定に問題があり、稼働率が想定より低かったということです。
着床式風力発電が可能な海洋は限定されているので、出来れば浮体式風力発電の方が望ましいのですが・・・。
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社説 洋上風力発電 山積する課題を詰めつつ
信濃毎日新聞 2021/01/12
洋上風力発電に対する期待が急速に高まっている。
政府と関連産業の関係者でつくる協議会は昨年末、2040年の発電能力を最大4500万キロワットとする目標を決めた。
原発45基分に相当する規模である。2万キロワットほどにとどまる現状から出発し、30年までに一気に1千万キロワットを目指すとした。
2050年に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする政府の実行計画でも、再生可能エネルギー普及の目玉に位置付けられた。
背景には、技術開発を進め急拡大を遂げた欧州の実績がある。日本でも同様の可能性が開けているとの見通しがある。
陸上風力では近年、巨大な風車による環境への影響を懸念する声が高まっている。洋上なら比較的克服しやすい利点もある。
投資を呼び込む上で長期目標ができた意義は大きい。部品点数の多い風力発電は産業の裾野が広く、経済効果への期待も高い。
ただ、欧州と比べると関連産業の育成は大幅に遅れている。挽回は容易でない。技術者や建設工事の経験不足、欧州とは異なる日本の海洋環境への対応など、課題は山積している。
明るい展望を掲げるだけでなく、課題を一つ一つ詰めながら、普及に向けた環境整備を積み重ねていく必要がある。
欧州の海が遠浅で風車の土台を海底に固定する「着床式」を採用しやすいのに対し、日本沿岸の海は比較的深く、海上に風車を浮かべる「浮体式」にせざるを得ないケースが多い。こちらはまだコストが高く、世界で少数派だ。
福島県沖では、原発事故からの復興の象徴として国が12年から浮体式の事業を進めてきた。経済産業省は昨年末、不採算を理由に施設を撤去すると表明した。
これまでに約600億円を投じている。同省は「データなどの財産を得られた」とするが、「税金の無駄遣いではないか」との批判が出ている。
発電機の選定に問題があり、稼働率が想定より低かったという。このままでは地域に何も残らない可能性がある。浮体式の開発は目標を掲げたビジョンにも盛り込まれた。どう位置付けるのか。失敗の十分な検証が要る。
全国では現在、貴重な遠浅の海域がある秋田県沖で、事業総額1兆円と試算される着床式風力の大型プロジェクトが進む。
計画は今後各地で持ち上がるだろう。地域に根を張った産業に育てる視点を忘れてはならない。