川内原発1号機は4日から「40年超」の運転に入りました。九州では初めてです。
薩摩川内市の田中良二市長は3日、川内原発の関連施設を訪れ、発電所の幹部に安全な運転を求める要望書を手渡し、「安全性の確保に最大限の注力が必要だ」とくぎを刺しました。
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九州電力の川内原発1号機「40年超」運転に…「安全性の確保に最大限の注力が必要」市長がくぎ
読売新聞 2024/7/4
九州電力川内原子力発電所1号機(鹿児島県薩摩川内市)は3日、運転開始から丸40年を迎えた。4日から原子力規制委員会の認可を受けた「40年超」の運転に入る。東日本大震災後の新規制基準下で再稼働した原発として4基目で、九州では初めて。政府が原発の最大限の活用を目指す中、安定運転で信頼を積み重ねられるかどうかが課題となる。(松本晋太郎、門岡裕介)
節目
薩摩川内市の田中良二市長は3日、川内原発の関連施設を訪れ、発電所の幹部に安全な運転を求める要望書を手渡した。田中氏は「安全性の確保に最大限の注力が必要だ」とくぎを刺した。
川内1号機は九電の原発全4基の中で最も古く、1984年7月4日に営業運転を始めた。2011年の東京電力福島第一原発事故後に策定された新規制基準下で15年、全国で最初に再稼働して運転を続けている。現在は定期検査で停止中で、8月29日に発電を再開する予定だ。
新規制基準では原発の運転期間を原則40年と定め、1回に限り最長20年の延長を認めた。川内1号機は特別点検などを経て昨年11月、2号機と共に規制委から延長の認可を受け、12月には地元の了承も得ていた。既に40年超の運転に入っている関西電力の高浜1、2号機(福井県高浜町)と美浜3号機(同県美浜町)に続くことになる。
方針転換
国内の原発33基のうち、新規制基準下で再稼働したのは九電の4基を含む12基にとどまる。福島第一原発の事故後、原発には厳しい目が向けられるようになり、再稼働を目指す電力会社が自治体の理解を得るのに時間を要していることや、規制委の審査が続いていることが要因だ。
一方、政府は昨年2月、「可能な限り低減する」としてきた原発について「最大限活用する」と方針を転換し、再稼働や次世代原発の建設を進め、60年超の運転も認める基本方針を閣議決定した。火力発電による温室効果ガスの排出が課題となっていることなどが背景にある。
ただ、今年1月の能登半島地震では、停止中の北陸電力志賀原発(石川県志賀町)の周辺で道路の寸断などが相次ぎ、事故が起きた場合の避難に課題を残した。薩摩川内市の会社役員(43)は「電力会社や行政は、新たに起こった事例も踏まえて最悪の状態を想定して対応してほしい」と訴える。
道半ば
電力会社にとって原発の稼働は供給力の確保だけでなく、経営面でもプラスになる。九電の場合、4基の合計稼働率が9割を超えた24年3月期連結決算の最終利益は1664億円と過去最高だった。ロシアのウクライナ侵略などで火力用燃料費の高止まりが続く中、九電は原発1基あたりの収支改善効果が月60億~75億円に上ると試算する。
九州では半導体受託製造で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に進出し、関連産業の集積が進む。データセンターなどの計画も相次いでいる。電力消費が増加する可能性もある中、CO2を排出せず発電できる原発の存在感は高まっている。
それでも原発の信頼回復はまだ道半ばで、「40年超」運転には一層、厳しい目が向けられる。九電の池辺和弘社長は6月下旬の記者会見で、「常に安心、安全な状態にして、それをさらに高めるような知恵を出していく」と表情を引き締めた。