東京新聞に掲題の記事が載りました。
15日、東電が再稼働を目指す柏崎刈羽原発への理解を求める政府の説明会の第1回が新潟県長岡市で行われ、オンラインや中継会場も含め120人が参加しました。経産省資源エネルギー庁の依頼で、新潟県が8月までに計7回開くもので、避難計画作りを支援する内閣府と原子力規制庁の担当者も出席しました。
参加した住民たちは能登半島地震で露呈した事故時の避難への不安を口にし、「東電に運転する資格があるのか」や「事故時の賠償金を大消費地である首都圏の住民は負担するのか」と問う場面もありました。
最大の関心は事故時の避難で「能登半島地震への対応も不十分だ。自己責任で切り捨てられる危惧がある」「原発周辺は豪雪地帯で大雪と大地震、原発事故の同時発生もあり得る。最悪シナリオを考えた避難を想定しているのか」と問われたのに対して、内閣府の担当者は「基本的な考えは示している。今後、作業部会で検討したい」と応じました。要するに避難計画は未定ということです。
事故時の賠償の質問に担当者は「東京電力が無限の責任を負う」と強調しました。事実は異なっていて「最終的に電力料金に反映させる」か税金に反映させるのが実態で、東電の経営者や株主、社員が身銭を切ることはありません。。
参加者からは「発電単価は再生可能エネルギーより原発が高く、原発はとんでもなく金がかかるのでそれに依存するべきではない」との発言が相次ぎました。
最も時間がかかる避難の問題について、内閣府は6月、県が要望した避難路の整備などを国が全額負担すると表明し、県はその際、大雪対策や、屋内退避の運用について原子力規制委の検討を踏まえるよう求めました。しかし規制委がそうした検討を進めているのかは不明で、先般発足させた検討委員会のテーマはかなり限定されているようです。
再稼働の必要条件は、十分な避難道路の完成、冬季の積雪対策、路面融雪設備の完成、必要な強度と換気設備を持った避難施設の完成等々ですが、より基本的な問題は5~30キロ圏内の屋内退避が可能か否かの見極めです。
花角県知事は再稼働に同意するかの決定を2年後の知事選に絡めて行いたい感じに見受けられますが、その時点で「再稼働の必要条件」が満たされている可能性はかなり低いというしかありません。
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原発事故時の賠償は「東京の人が負担してくれるのか」 柏崎刈羽、住民説明会で噴出した国と東京電力への不信
東京新聞 2024年7月17日
東京電力が再稼働を目指す柏崎刈羽原発への理解を求める政府の説明会が、新潟県で始まった。参加した住民たちは、能登半島地震で露呈した事故時の避難への不安を口にし、福島第1原発事故を起こした東京電力に資質があるのかと迫った。「事故時の賠償金を大消費地である首都圏の住民は負担するのか」と問う場面もあり、政府が前のめりな再稼働に疑問符を付けた。(渡辺聖子)
◆「自己責任」で切り捨てられるのでは
説明会は経済産業省資源エネルギー庁の依頼で、新潟県が8月までに計7回開く。初会合は長岡市で15日にあり、避難計画作りを支援する内閣府、原発の規制機関である原子力規制庁の担当者も出席。県によると、オンラインや中継会場も含め120人が参加した。
質疑で関心が集まったのは事故時の避難だった。「能登半島地震への対応も不十分だ。自己責任で切り捨てられる危惧がある」という参加者からの指摘に、内閣府の担当者は「ご理解をお願いしたい」。原発周辺は豪雪地帯で大雪と大地震、原発事故の同時発生もあり得る。「最悪シナリオを考えた避難を想定しているのか」と問われ、担当者は「基本的な考えは示している。今後、作業部会で検討したい」と応じた。
◆賠償は「最終的に電気料金で対応」
東京電力への不信感もにじんだ。東京電力は再稼働に向けた国民との約束に、福島第1の廃炉をやり遂げ、柏崎刈羽の事故対策に必要な資金を確保するなど7項目を掲げる。参加者は「7項目を厳しく審査し東京電力に守らせてほしい」と注文した。
事故時の賠償の質問に、内閣府の担当者は「東京電力が無限の責任を負う」と強調。参加者が「消費地の東京などの人が電気代で負担するのか。了解はあるのか」と問うと、「最終的に電力料金で対応する」と述べた。福島事故では東京電力は責任を負いきれず、国が肩代わりしている。担当者は、国の財政支援を説明し、負担した分は「税金で跳ね返ってくる」と話した。
◆「原発はとんでもなくカネがかかる」
エネ庁担当者が原発の利点を強調すると、参加者らが「発電単価は再生可能エネルギーより原発が高いといわれている」「原発はとんでもなく金がかかる。命と暮らしを奪われるエネルギーに依存するべきではない」と相次いで発言した。
新潟市から参加した桑原三恵さん(76)は取材に応じ、「原発事故が起きたらどうなるのかという不安を受け止めてくれる国の機関がない」と訴えた。
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◆首都圏住民は受益者 「受苦者」への理解を
「国の方針を県民に知らしめようという、上意下達の姿勢が明らかだ」。新潟で始まった説明会を池内了(さとる)・名古屋大名誉教授(宇宙物理学)は批判し、「県民の声を反映する場がないなら、声を聴いているかのように見せるパフォーマンスにすぎない」と指摘した。
池内氏は、福島事故の原因や避難などを検証する新潟県の委員会で総括委員長を務めた。だが県側との運営方針の違いから昨年、事実上解任。「県民が疑問や意見を気軽に出し委員会で議論したい」と訴えたが、県が応じなかった。
県民の声を聴くことは、電気の受益者である首都圏の人々が、原発事故が起きれば苦しむ「受苦者」の立場を理解する上でも大切と説く。「原発は一度事故を起こせば元に戻らず、使うべきではない。それでも動かすなら、受益者は受苦との偏りを理解することが求められ、その偏りを消費者に語りかけ、小さくするのが国や電力会社の義務でもある」(大野孝志)
◇ ◇
◆残る「県の同意」、知事の判断は2026年か
柏崎刈羽原発の再稼働に向けた手続きは、新潟県の「同意」を残すだけとなっている。能登半島地震で原発事故時の避難への不安が高まり、花角英世知事が判断を示すのは、2年後の2026年6月に迎える任期満了に伴う知事選になるとの見方も広がる。
知事は判断材料として、住民避難がスムーズにいく避難計画ができるのかや、原発の事故対策が十分かを検証する県の有識者会議の議論、経済効果などを挙げている。結論が出たのは経済効果のみで、6、7号機が再稼働して10年間継続した場合に4396億円と試算。これには「過大評価」という批判が出ている。
◆大雪対策や屋内退避、国の回答まだなし
最も時間がかかるのが避難の問題だ。内閣府は6月、県が要望した避難路の整備などを国が全額負担すると表明。県はその際、大雪対策や、屋内退避の運用について原子力規制委員会の検討を踏まえるよう求めた。これらに国の回答はなく、規制委の検討は来年3月まで続く見通しだ。
そのため、年内に材料が出そろうのは難しい。自民党県議は「国は避難路を全額負担するというが、具体化もしていない。2年後の任期満了まで、知事は判断しないこともあり得る」と指摘した。(荒井六貴)