2024年7月6日土曜日

TSMC第3工場は?「原発再稼働なしにあり得ない」  半導体政策のキーパーソン

 世界最大の半導体受託生産企業TSMCが熊本県に進出し、年内にも第1工場が本格稼働します。6月には隣接地で第2工場の造成工事も始まりました。
 甘利明元経産相は、第3工場の新設に当たっては絶対的に電気が足りないので、原発の再稼働なしにはありないと述べました。
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TSMC第3工場は?「原発再稼働なしにあり得ない」
  半導体政策のキーパーソン
                         KAB熊本朝日放送 2024/7/6
 世界最大の半導体受託生産企業TSMCが熊本県に進出し、年内にも第1工場が本格稼働します。6月には隣接地で第2工場の造成工事も始まりました

 政府は、2つの工場に1兆2千億円もの補助金を投じるなど、国家プロジェクトと位置づけて推進しています。自民党の半導体戦略推進議員連盟の会長を務め、半導体政策のキーパーソンと目されている甘利明元経済産業大臣がKABのインタビューに応じました。

世界の勝ち組に入るには「半導体は最大のチョークポイント」
甘利明 元経済産業大臣
――半導体政策を推し進める理由は
これから世界は二分されます。半導体を供給できる国と、半導体を供給してもらう国に二分されます。半導体はデジタル社会の中で最大のチョークポイント(重要な点)になる。握っていれば、あらゆる点で有利になる。握られていれば、あらゆる点で不利になる。その有利不利を国家として分けてしまう。だから、この戦略は否応なしに供給する側に回っていかないと、最初から負け組に入っていってしまう」
――国の経済成長へのインパクトも大きくなるのでしょうか
「デフレに沈んでいた日本列島に、いい意味での健全なバブルを起こしたい。かつてのバブルは、ただ土地がぐるぐる回っただけなのに価格が上がっていく、中身のないバブルだった。そこに付加価値をつけていくことで、エコシステムが回っていく、そういったバブルは歓迎していい。デフレで給料も上がらないけれど、物価も上がらないからいいじゃん、という状況を打破するには、牽引産業の立地が必要だ。そしてDX社会の最大の牽引産業は半導体だ。
スーパーコンピューター、自動運転、AI……。これからの技術は、すべて半導体がないと進化できない。これからの半導体ののびはケタが違う」
――その一方、地元の熊本では莫大な量をくみ上げる地下水への影響や、工場周辺で朝晩に発生する交通渋滞を心配する声が高まっています
TSMCに必要なインフラは、県民にとっても必要なインフラ。あの企業が来たおかげで生活のレベルが上がったけど、こういう迷惑も出ているという苦情が拡大することになれば、立地した企業にとっても幸せではない。そこはTSMCも一番気をつけているところだ。
住民に必要なインフラへの支障のないよう、予算をつけるところはしっかりとつけるということをやっていく」

TSMC第3工場はどこに?いつの時点で判断?
――さらなる半導体工場誘致を国としても進めています。工場のある熊本では、第3工場の立地場所への関心が強く、木村敬熊本県知事も誘致に前向きです
「今は第2工場をきちっと完成させる方向で全力投球だ。第2工場は今年中に着工し、生産開始が2027年になるだろう。
『電気、水、人材』をバランスよく確保する見通しが立ってきたときに第3工場をどうするか(という話が出てくる)。予算要求の話が入るのは26年ぐらいではないか。まだ、ちょっと気の早い話だし、それどころではない。水や交通渋滞の問題がある中で、地域にとってウェルカムな企業ではなくなりますから」
――立地場所はあくまでもTSMCの経営判断なのでしょうか
「あくまでも経営判断だろう。第3工場が(熊本から)ずっと離れたところだと非効率になると判断されれば、経済合理性を考えて、あるいは地域との親和性を考えて、TSMCが立地場所を判断するんだと思います」

半導体産業に必要な「水、人材、そして電気」
――工場の稼働にむけて、従来から言われている「水、人材」に加えて「電気」も必須だと強調しています
「これは現実に、TSMCが熊本に来ることができたのは、九州の原発が再稼働できているからだし、(北海道千歳市の次世代半導体メーカー)ラピダスは泊原発がちゃんと再稼働しなければ動かない。原発の安全性を迅速に確認して、活用していくということはマストだと考えている。
 半導体の製造工場や、半導体を使ったデータセンターは、ものすごい数が必要になる。まさにこれは電気の塊だから、絶対的に将来にむけて電気が足りない。原発の再稼働なしにDX社会はあり得ないと思います」