2024年7月29日月曜日

29- 敦賀2号機「不合格」、原発城下町 財政面依存から脱却できるか

 かつて敦賀市では敦賀原発1~2号機新型転換炉「ふげん」、高速増殖炉「もんじゅ」の4つが稼働していました。そのうちの3基はすでに廃炉が決まり、唯一残っていた敦賀原発2号機も再稼働が難しい状況となりました。

 ただ廃炉と決まっても国からの交付金などがあり、地元経済への影響は小さいとされます。一方で、同市はふるさと納税の活用や物流の推進などを図り、財政面で原発依存からの脱却を目指しています。読売新が報じました。
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城下町から原発消える?…敦賀2号機「不合格」、財政面依存脱却模索
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 日本原子力発電の敦賀原子力発電所2号機(福井県敦賀市)の再稼働が厳しい状況に追い込まれた。地元経済への影響は限定的とみられるが、半世紀以上、日本の原発推進を担ってきた「原発城下町・敦賀」から原発がなくなる可能性が出てきた。(敦賀支局 高山智仁、科学医療部 中田智香子)

 福井県内には原子炉が15基(廃炉作業中を含む)あり、敦賀市ではかつて4基が稼働していた
 1970年に運転が始まった敦賀1号機は西日本初の商用炉で同年の大阪万博会場に送電され、「原子の灯」と紹介された。その後2号機や日本原子力研究開発機構の新型転換炉「ふげん」、高速増殖炉「もんじゅ」が建設され、商用から研究用まで様々な施設が集まる地域として栄えた
 1号機の建設工事に携わった原発向け工具販売会社「キコー綜合(そうごう)」(敦賀市)の小森英宗会長(76)は「敦賀で作られた『未来のエネルギー』。誇らしく感無量だった」と振り返る。しかし、2011年の東京電力福島第一原発事故を機に国内の全原発が停止。その後、安全対策費がかさむなどで1号機ともんじゅは廃炉が決まり3、4号機の建設計画も凍結された。ふげんは事故前に運転が終了し、唯一運転可能だった2号機も、先行きが不透明になった

 原電は再稼働を目指す方針だが、廃炉になった場合でも国からの交付金などがあり、地元経済への影響は小さいとされる。一方で、同市はふるさと納税の活用や物流の推進などを図り、財政面で原発依存からの脱却を目指す。
 米沢光治市長は「原子力だけではなく、地の利を生かした産業の活性化にも力を入れていく」と話す。
 原子力政策に詳しい長崎大の鈴木達治郎教授は「稼働できるか不透明な敦賀2号機にこだわるよりも、敷地周辺で再生可能エネルギーに取り組む方が将来的に良い」と指摘する。

「関西への影響はない」 支援の関電
 関西電力が出資する日本原電は、敦賀2号機が運転を始めた1987年以降、発電量の33%を関電に供給する契約を結んでいる。2号機は福島第一原発事故後13年間、運転が止まっており、今後停止が続いても、原発7基を再稼働させた関電の関係者は「関西への影響はないだろう」と話す
 2号機停止中も維持費用として「基本料金」を原電に支払っている関電は26日、2号機は貴重な原子力電源。今後も必要な支援を行う」とした。
 国際大の橘川武郎学長(エネルギー産業論)は「電力需要は増加傾向で、原電の役割がなくなることはない。送電インフラが整っており別の発電方法での活用も考えられる」と話す。
 龍谷大の大島堅一教授(エネルギー政策論)は「地域経済へのダメージが限定的だとしても、国は影響を緩和する対策として、地元から生まれる産業を育成していくべきだ」と指摘する。(村上和史)