東電は6日に、昨年7月に地下水のストロンチウムの濃度が500万ベクレルに達していたことを初めて公表しました。
これに関して民間福島原発事故収束員会が、こうした東電の隠蔽(体質)を放置してきた原子力規制委に対し強い遺憾の意を表明するとともに、放射線の計測は民間で設立する監視委員会の指揮のもとで行うなどの緊急措置を求める声明を出しました。
同委員会は、1月27日にも「福島原発事故対応に関する声明」を出していますので、併せて紹介します。
(関係記事)
2014年2月8日「福島原発 井戸水放射能誤測定 続報」
2014年2月7日「海側井戸で7月に約1000万ベクレル それを90万ベクレルと」
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東電及び原子力規制委員会に極めて遺憾の意を表明し、緊急措置を求めます
2014年2月7日
民間福島原発事故収束員会
2月6日に東京電力が発表した情報によれば、昨年7月の時点で、ストロンチウム(Sr)の濃度が500万ベクレルに達していたということです。
余りに大きな値だったために、これを計器の故障もしくはキャリブレーションの手違いとして調査をしていたということですが、これだけ重大な問題を解明するのに6カ月も費やす訳が有りません。東電が作為的にこの事実を隠ぺいしたことは明らかです。
それでは原子力規制委員会は、いったい何をしていたのでしょうか?東電から報告を受けて、はいそうですかと言って計器が故障中であることを了承したのでしょうか?
もしそうであるならば、科学者の風上におけない行為です。一刻も早く東電に計器を修理すべきと言う指示を出すべきだったのではありませんか?
ここに至り、民間福島原発事故収束委員会は、東電及び原子力規制委員会には、もはや事態を収拾する能力が無いものと判断すると共に、国民の安全をないがしろにする両組織を糾弾し、告訴すべきと断定します。
原子力規制委員会は、速やかにこれを陳謝し、人事を刷新して真に国民の安全を守ることのできる人材を起用すべきです。福島第一原発で行われている放射線計測は、民間で設立する監視委員会の指揮のもとで行うべきものです。そして、我々は、福島第一原発が危機的状況であると判断して、1月27日に緊急声明を発表し、その中でも述べましたが、以下の措置を緊急に行ってください。
① メルトアウトの状況を監視するため、中性子の連続モニタリングポストを100基ほど設置して、リアルタイムで常時外部からアクセスできる形で公表すること。
② 原子炉近辺の地中温度を監視するため、温度モニタリングポストを100ヶ所ほど設置し、温度測定を連続的に行い、リアルタイムで常時外部からアクセスできる形で公表すること。
③ Sr (ストロンチウム) のサンプリングを毎日行い、測定値を遅滞なく公表すること。
我々は、メルトアウトが起こり、デブリが地下水脈と接触し、いつ核分裂が再開するかも知れないことを危惧しています。直ちに行動に移して下さい。
以上
福島原発事故対応に関する声明
2014年1月27日
民間福島原発事故収束委員会
代表 山田 廣成
福島第一原発には更なる危機が迫っています。周辺住民をさらに避難させるべき危機的状況です。
メルトアウト(炉心漏出)が起こり、地下水脈に接触し、核分裂反応が再開する危険があります。
今までは、地下コンクリート内部を沈下していましたから、核分裂反応は起こりませんでした。
民間福島原発事故収束委員会からの提案:
1. 核分裂反応が持続するようならば、必ず中性子が検出されます。熱中性子は水により遮蔽されますが、高速中性子は遮蔽されません。従って、東電は中性子を測定し、結果を公表すべきです。
2. 東電はこのところストロンチウムの測定データを公表していません。できないというのであれば、その理由を明らかにすべきです。
3. 福島県は、第2の危機を前にして、避難準備を勧告すべきです。避難対象区域は東電からの詳細情報を見た上で、関係省庁・福島県と協議して決める必要があり、我々も協力します。
4. 1号炉、3号炉のメルトアウト(炉心貫通)を止めるために、直ちに我々が提案している鉛冷却法の実施を準備すべきです。
5. 国・東電は、国民の信頼を得るために、市民の立ち合いの下で、施設内の放射能測定を行うべきです。
声明概要:
昨年末頃から、福島第一原発2号炉建屋の屋上や周囲の地表から水蒸気の発生が観測され、観測井戸の汚染水濃度が日々最高値を更新し、直近では、全ベータ線量が1リットル当たり310万ベクレル検出されている。これに対し、東電は原因不明としている。
しかし、これはメルトダウン(炉心熔融)した核燃料が、完全なメルトスルー(炉心貫通)を起こし、更にメルトアウト(炉心漏出)を起こして地下水脈に接触したことが原因と判断される。
原爆の約5倍と想定される核燃料のメルトアウトは、従来の100倍以上の量の高濃度汚染水を海洋へ流出させる可能性と、事故当時のような高濃度の放射性物質が大気中に放出される可能性は否めない。
この状況が更に進行する可能性は高く、水素爆発の危険性もある。チャイナシンドロームが実際に起きることを想定し、政府、東電、関係官庁、行政、学者、原発製造企業が総力を挙げて早急にしかるべき検証と対策を取る必要がある。
しかるに、政府も東電も現在までに十分な対応をしていないことは誠に遺憾である。民間福島原発事故収束委員会は、真剣に対応していないこれらの当事者たちを非難するものである。
我々、民間福島原発事故収束委員会は、福島原発から一定距離内の住人は避難準備を始め、早急に避難する必要があり、危険が差し迫っていることを警告するものである。
民間福島原発事故収束委員会について:
2011年3月11日の大地震と津波により起きた東京電力福島第一原発事故に対する東京電力の対応を見て、同年6月、立命館大学の山田廣成教授は、大量の汚染水を発生させる水冷式ではなく、鉛の粉末又は粒子の注入という画期的な鉛冷却法を提案した。しかし、国も東電も前例がないと取り合わず、事故から2年が経過するも、収束の見通しが立たず、汚染水を垂れ流しにしているため、事故原発の収束を民間の活力で実現するしかないという危機感から、山田廣成教授を代表発起人として、民間福島原発事故収束委員会を2013年6月2日に立ち上げた。現在、約60名の会員が参加している。同年8月には東電と各政党に提案書を送った。更に同年9月には経済産業省に鉛冷却法を提案し、同年10月、国際廃炉研究開発機構に正式な登録提案となったが、同機構も東京電力も、詳細な検討を行おうとはしていない。
民間福島原発事故収束委員会ブログ
以上