福島県平田村の病院で、公益財団法人が最新型ホールボディーカウンター(WBC)を用いて、子どもから大人までを対象にして内部被ばく検査を続けています。
検査は国や県の資金的支援を受けないもので、年齢や居住地に関係なく無料で検査を受けられる施設は「ほかに聞いたことがない」ということです。
2011年秋、約7000万円でWBCを購入し、当初は18歳以下の受検者に限って無料でしたが、13年4月からは年齢制限なく無料にしました。これまでに有料も含めると、延べ約5万人が検査を受け、県外からも茨城県から約8500人、栃木県から約2000人などが受けました。
理事長は「福島原発事故から3年しかたっておらず、継続した検査がとても重要」と話しています。
同法人は12年6月、検査結果を基に内部被ばくについて調査するため研究所を設立し、検出限界値を超えた人の食生活を調べて関連を明らかにし、その結果はホームページで順次公開しています。
高価な設備を使って無料で住民の健康管理をするとは心の温まる話ですが、行政側は何んと「WBC検査は住民の不安をあおる」と白眼視しているということです。住民の被曝レベルが明らかになるのを怖れているのでしょうか。なんとも理解しがたいことです。
理事長は「放射能への不安が薄れつつある」ことを懸念し、受診した人には今後10年間、半年に一度の検査を受けるように呼び掛けているということです。
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【福島原発事故】 無料検査「力尽きるまで」 内部被ばく 目離さない
東京新聞 2014年2月14日
福島県平田村の民間病院内にある公益財団法人「震災復興支援放射能対策研究所」が、大人も子どもも無料の内部被ばく検査を続けている。佐川文彦理事長(54)は「検査を続ける必要はないという意見もあるが(それを言う人が)責任をとってくれるわけではない。東京電力福島第一原発事故から三年しかたっておらず、継続した検査がとても重要なんです」と話す。 (大野暢子(まさこ))
検査は、国や県の支援を受けない独自のもの。本紙が福島県と首都圏の一都六県の担当者に取材したところ、年齢や居住地に関係なく無料で検査を受けられる施設は「ほかに聞いたことがない」という。
同研究所がある「ひらた中央病院」は東日本大震災後、津波に襲われた沿岸部や警戒区域の病院から約百八十人の患者を受け入れた。患者たちから、内部被ばくの検査を望む声が多く寄せられた。
そこで二〇一一年秋、約七千万円で米キャンベラ社製の最新型ホールボディーカウンター(WBC)を購入。当初は十八歳以下の受検者に限り無料だったが、一三年四月からは年齢制限なく無料にした。これまでに有料も含め、延べ約五万人が受検。茨城県から約八千五百人、栃木県から約二千人など、県外の線量が高い地域からも受け入れた。
検査はWBC検査、甲状腺エコー検査、尿検査、血液検査を行う。「見えない放射能を『見える化』することが重要」と佐川さん。
一二年六月、検査結果を基に内部被ばくについて調査するため、同研究所を設立。検出限界値を超えた人の食生活を調べて関連を明らかにし、結果はホームページで順次公開している。
WBCの購入費や毎月約一千万円の運転資金は、同病院の収入や、趣旨に賛同した企業や個人による寄付金で賄う。国や県に資金援助を求めているが、認められていない。佐川さんは、「WBC検査は住民の不安をあおる」という行政側のつぶやきを、人づてに聞いたことがあるという。
佐川さんは、事故から三年を前に「放射能への不安が薄れつつある」と懸念。受検者には今後十年間、半年に一度の検査を受けるように呼び掛けている。資金面の苦労はあるが、「力尽きるまでやる」と誓う。
検査などの問い合わせは同研究所=電0247(57)5012=へ。
◆公的支援が不可欠
放射能に関する住民意識調査を続けている清水奈名子(ななこ)・宇都宮大准教授の話 子育て世帯への意識調査では「事故当時どれくらい被ばくしたのか分からない」という不安の声が多い。平田村の研究所は、そういった人々の受け皿になっている。一法人の力には限界があることを思うと、国や県の支援は不可欠だ。小中学校の定期健診など、身近で継続的に被ばく検査を受けられる環境をつくるべきだ。
<ホールボディーカウンター(WBC)> 食事などで体内に取り込まれた放射性物質を計測し、内部被ばくを調べる装置。検出できるのはセシウムなどガンマ線を出す放射性物質に限られ、ストロンチウムやプルトニウムは測定できない。
本紙の取材では福島県内には48台あるほか、首都圏には放射線医学総合研究所(千葉県)や日本原子力研究開発機構(茨城県)、栃木県那須町など、少なくとも20台以上ある。