福島原発の地下水汚染問題で国は、原発設備の山側で地下水をくみ上げて海に放出する対策について、全漁連(=全国漁業協同組合連合会)に新たな方針を示し、理解を求めました。
この対策は設備内で処理すべき汚染水のボリュームを減らす手段として、以前から全漁連に提示されていたものですが、昨年来、汚染水の海への流出や、タンクからの漏えいなどの問題が相次いで、風評被害への不安から同意が得られないままになっているものです。
今回の提示では、排水許容限度として、くみ上げた水のトリチウム濃度を排水の法令基準の1リットル当たり6万ベクレルに対し3万ベクレルと設定、またストロンチウム90などベータ線を出す放射性物質は1リットル当たり10ベクレルとするとしています。また運用目標値としてトリチウム濃度を1500ベクレルなどに設定し、目標値以上の濃度を確認した場合、水の移送を停止するなどの対策を取るとしています(産経新聞)。
海側の井戸水のベータ線濃度は既に1リットル当たり310万ベクレルというような膨大な濃度に達していて、どう考えてもそうした高濃度汚染水が敷地内の地下に留まっているという保障はありません。そういうあまりにも酷い状況の中で、上流のかなり清澄な水をバイパス放流することによって、トータルで海の汚染を減らすことができるというのであれば、実際的な対応として一考する余地はありそうです。
全漁連の岸会長は「地下水バイパスの必要性は認識しているが、地元の漁協の理解がないと進まない問題で、地下水の監視や風評被害への対策を見極めて、今後、判断していく」と話したということです。
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地下水放出 漁連に理解求める
NHK NEWS WEB 2014年2月3日
東京電力福島第一原子力発電所の汚染水の問題を巡り、国は、周辺の漁業者の同意が得られていない山側で地下水をくみ上げて海に放出する対策について、全漁連=全国漁業協同組合連合会に新たな方針を示し、理解を求めました。
福島第一原発では、建屋などに流れ込む地下水が核燃料を冷やした水と混じり、汚染水が増え続けていて、国と東京電力は敷地内の山側で地下水をくみ上げて海に放出する「地下水バイパス」という対策を計画しています。
しかし去年、汚染水の海への流出や、タンクからの漏えいなどの問題が相次いで、地元の漁業者の風評被害への不安が高まり、同意が得られないままになっています。
経済産業省の赤羽副大臣は3日、全漁連の岸会長に、去年の秋以降検討してきた汚染水対策や地下水バイパスを実施する際の新たな方針などを示し、理解を求めました。
このなかで、放出する地下水の放射性物質の濃度を国が定めた海への放出基準より低く設定し、風評被害を防ぐため情報を発信すると説明したということです。
説明を受けたあと、岸会長は「地下水バイパスの必要性は認識しているが、地元の漁協の理解がないと進まない問題で、地下水の監視や風評被害への対策を見極めて、今後、判断していく」と話していました。
地下水バイパスが実施されれば、建屋に流れ込む地下水1日およそ400トンのうち100トン程度を減らせるとされています。
地下水バイパスに厳格基準 福島第1原発の汚染水対策
産経新聞2014年2月3日
東京電力福島第1原発の汚染水対策に関し、経済産業省の赤羽一嘉副大臣は3日、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長に、汚染される前の地下水をくみ上げて海に排水する「地下水バイパス」を稼働する場合、放射性物質の濃度には現行の法令基準より厳しい基準を適用する方針を示した。
地下水バイパス計画は漁業関係者を中心に懸念が強いことから、稼働のめどが立っておらず、赤羽副大臣は新たな基準を説明して理解を求めた。
新基準では排水許容限度として、くみ上げた水のトリチウム濃度を排水の法令基準の1リットル当たり6万ベクレルに対し、3万ベクレルと設定。ストロンチウム90などベータ線を出す放射性物質は1リットル当たり10ベクレルとする。
さらに運用目標値として、トリチウム濃度を1500ベクレルなどと設定。目標値以上の濃度を確認した場合、水の移送を停止するなどの対策を取る。