南日本新聞が、「核燃サイクル 破綻認め政策転換せよ」とする社説を出しました。
六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場は、本格稼働に向けて原子力規制委の審査に事実上合格しました。同工場は「核燃料サイクル政策」の中核をなすものですが、そもそも「サイクル」の実態はなく、既に破綻状態にあります。
「もんじゅ」は20年余にのぼる休転中も日額6500万円という信じられない高額な維持費を要し、総額1兆円を掛けた挙句に近年になってようやく廃炉と決定されました。
原子力ムラは、苦肉の策として原発でプルトニウムを再利用する「プルサーマル発電」を強調していますが、そこでのプルトニウムの消費量(削減量)は微々たるもので、とても既に保有している約46トンものプルトニウム量に対応していません、
再処理工場の稼働に、経済的異議は皆無で、物質収支的に保有プルトニウムの削減に寄与するものでもありません。それだけでなく、逆に稼働すれば周囲の空間や近海をトリチウムなどの放射性物質で著しく汚染します。百害あって一利なしの施設です。
現有のプルトニウムはどこかに引き取ってもらい、再処理工場は動かす前に廃棄するのが得策です。
規制委は、工場を稼働させることが国のエネルギー基本計画と整合するかどうか、経済産業相に異例の意見照会をしたということです。
施設設立の意義等には全く関与できずに、所定の手続きに従って規制基準に適合するかどうかの審査だけをさせられている委員会のせめてもの意思表示と思われます。
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社説 [核燃サイクル] 破綻認め政策転換せよ
南日本新聞 2020/ 5/24
日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)が、本格稼働の前提となる原子力規制委員会の審査に事実上合格した。
工場は国の「核燃料サイクル政策」の中核施設である。だが、原発利用が低迷する中で政策は既に破綻状態にあり、再処理を進める意義を見いだしにくい。国は現実を受け止め、政策転換を決断する必要がある。
国が核燃料サイクル政策を進めてきたのは、化石燃料などの資源が乏しい日本のエネルギー供給に必要だという判断があったからだ。
原発から出た使用済み核燃料からプルトニウムを抽出し、新たな燃料に加工。次世代原発の高速増殖炉で使えば、発電しながら消費した以上の燃料を生み出すことができる。そんな判断から、国策として進められてきた。
しかし、研究段階のもんじゅ(福井県敦賀市)は1兆円以上の国費を投じながら、トラブル続きで廃炉が決定、増殖炉路線は行き詰まった。
国や電力業界は、一般の原発でプルトニウムを再利用する「プルサーマル発電」を軸に核燃料サイクル政策の維持を図っている。
ただ、そのプルサーマルも当初は16~18基の原発で行う計画だったが、東日本大震災後に導入しているのは4基にとどまる。これでは、再処理で得られる年間最大約8トンのプルトニウムを消費するには不十分だ。既に保有する約46トンものプルトニウムの削減もおぼつかない。
使い道の見通しもないまま、核兵器に転用可能なプルトニウムを日本が大量に保有し続ければ、国際社会から疑念を持たれる可能性もある。
こうした状況で工場を運転し、プルトニウムを生み出す必要がどこにあるだろう。もはや、再処理の必要性はなくなったと言わざるを得ない。
それでも核燃料サイクル政策にこだわるのは、サイクルが実現しなければ各地の原発に使用済み核燃料がたまり続け、いずれ運転できなくなることを恐れるからだろう。
しかし、今の政策を維持することは問題の先送りにすぎない。処分場の確保に難題があるとはいえ、再処理せずに地下に埋める直接処分もある。国は政策の行き詰まりを認め、国民に真摯(しんし)に説明する必要がある。
規制委は、工場を稼働させることが国のエネルギー基本計画と整合するかどうか、経済産業相に異例の意見照会をした。2018年改定の同計画にプルトニウムの削減方針が明記されたことを重く見たからにほかならない。
政府は、近く始まる次の計画改定作業で、30年度の原発の発電比率を20~22%にするという現実離れした目標の見直しとともに、核燃料サイクル政策の転換を明確にすべきである。