市の一部が東海第二原発から30キロ圏に入る鉾田市が、全市民の約3分の1に当たる約1万4000人を対象とする広域避難計画を策定しました。
これまで住民説明会を6回実施しましたが、「整然と避難できるのか」「ペットや家畜の避難はどうなるのか」への言及はありませんでした。
避難所での新型コロナの感染拡大や、複合災害で避難所や道路が被災した際の対応や、放射性物質の付着を調べるスクリーニング、安定ヨウ素剤配布の体制、体が不自由な人の移動手段の確保などの課題が残っています。
一通りの計画は出来ても、多面的な問題には対応できていないようです。
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<新型コロナ>
東海第二、事故備え 鉾田市が広域避難計画を策定 コロナの複合災害触れず
東京新聞 2020年5月14日
日本原子力発電(原電)東海第二原発(東海村)で深刻な事故が発生した場合に備え、鉾田市は全市民のうち約1万4000人を対象とする広域避難計画を策定した。計画策定が義務付けられている14自治体のうち、4自治体目になる。避難所での新型コロナウイルスなどの感染症対策や、複合災害が起きた場合の具体的な対応も必要だが、盛り込まれていない。(水谷エリナ)
市は、一部が原発から三十キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)に入る。UPZの自治体には広域避難計画の策定が義務付けられており、市は三月三十一日付で策定した。他に笠間、常陸太田、常陸大宮の三市が策定している。
鉾田市は二〇一八年三月に避難の受け入れ先となる鹿嶋市と協定を結び、計画の策定を進めてきた。
計画によると、旭東、旭北、旭西の三小学校区の全域と旭南、鉾田北の二小学校区の一部に住む約一万四千人が避難の対象で、全鉾田市民の約三割に当たる。
原則として、自家用車か市内六カ所の一時避難所から出るバスなどで、UPZ外の市内や鹿嶋市内の避難所二十四カ所に向かう。
計画に基づき、原子力災害が起きた際の行動や避難所などをまとめたガイドマップを作製。避難対象地域に配布して計画の周知を図る。避難計画を含め、鉾田市のホームページから確認できる。
市は計画策定以前に素案を作り二月三日から九日にかけて住民説明会を六回実施した。説明会には計百十九人が参加し「整然と避難できるのか」「ペットや家畜の避難はどうなるのか」などの意見が寄せられていた。だが、計画にはペットや家畜の避難についての言及はなかった。
さらに、避難所には避難者が密集し、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されるが、触れられていない。複合災害で避難所や道路が被災した際の対応や、放射性物質の付着を調べる避難退域時検査(スクリーニング)と、甲状腺がんを防ぐ安定ヨウ素剤配布の体制、体が不自由な人の移動手段の確保などの課題も残したままだ。
市の担当者は「課題解決に向けて関係機関と協議を重ねるなどし、実効性を高めていく」と計画を見直していくとした。「新型コロナウイルスが収束したら、地区ごとに説明会を実施していきたい」と話した。