福島第1原発にたまり続けるトリチウム汚染水(処理水)の処分問題で、国による福島県内の市町村議会への説明会が一巡しました。
処理水の放出には風評被害などへの懸念の声が根強く、海洋放出反対を決議する議会もありましたが、多くの議会は賛否まで踏み込まず、温度差も目立ちました。
国はこの処分について、一般からの意見募集の期限を6月15日まで1か月延ばすことにしました。専門家は広く国民的な議論を経て決定すべきと指摘しています。
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福島第1処理水放出、政府の説明会一巡 市町村議会の温度差鮮明
河北新報 2020年05月25日
東京電力福島第1原発にたまり続ける処理水の問題で、政府による福島県内の市町村議会への説明会が一巡した。放射性物質トリチウムを含む処理水の放出には風評被害などへの懸念の声が根強く、海洋放出反対を決議する議会もあった。ただ多くの議会は賛否まで踏み込まず、温度差も目立った。
説明会は政府小委員会が処理水の放出先を「海洋か大気が現実的」とする報告書を策定したことを受けて開催。3月10日の広野町議会を皮切りに、今月中旬までに政府の担当者が第1原発周辺など14議会(いわきは書面開催)で報告書を説明し、意見交換を行った。
反対姿勢を鮮明にしたのは浪江町議会。「海に流せば風評被害が強まる」「住民帰還にも影響が出る」といった懸念が噴出した。
町内の請戸漁港は原発事故を経て9年ぶりに競りを再開したばかりだ。佐々木恵寿議長は「浪江は水産で成り立っていた町。地元で放出されれば厳しい場面が想定される。反対は自然の流れ」と強調する。説明会の5日後に海洋放出に反対する決議も可決した。
南相馬市議会も海洋放出反対が大勢だった。今村裕議長は処理水放出に「『もうたくさんだ』というのが本音。われわれにまだ負担を強いるのか」と憤りを隠さなかった。
一方で多くの議会は説明会を「勉強会的」な位置付けにとどめ、賛否の集約までは行わなかった。
第1原発が立地する大熊町議会は非公開で開催。会合後の取材に吉岡健太郎議長は「処理水への理解を深める場だ」と賛否を集約しない理由を説明した。新地町議会も風評被害を懸念する声があったが、遠藤満議長は賛否集約について「今後検討する」と述べるにとどめた。
処理水は2022年夏に保管するタンクが満杯になると見込まれ、放出の準備期間の2年間を含めると今夏がリミットとなる。議論が低調な背景には放出期限が迫る中で、国がどんな風評被害対策を打ち出すかに議員の関心が移っていることがあるとみられる。
政府は今後も関係者から意見を聞き、処分方法を決定する。資源エネルギー庁の木野正登参事官は「風評被害の不安が根強いのは原発事故を経験した県民の意見としては当然。国としてしっかり受け止め、被害を抑える処分方法を含めて検討したい」と語った。
<東京電力福島第1原発にたまり続ける処理水>原発の汚染水に含まれる放射性物質は多核種除去設備「ALPS(アルプス)」によって大半が取り除かれるが、トリチウムは残る。第1原発構内にはトリチウムを含む処理水が119万トンあり、2022年夏に満杯の137万トンに達する。政府小委員会は2月に出した報告書で海洋放出と大気放出の2案を「現実的な選択肢」とした上で「海洋放出の方が確実に実施できる」と利点を強調した。
トリチウムなど含む水の扱い 一般意見募集の期限を延長
NHK NEWS WEB 2020年5月25日
東京電力福島第一原子力発電所で増えるトリチウムなどを含む水の扱いについて、国では一般からの意見募集の期限を6月15日まで1か月延ばすことになりました。専門家は広く国民的な議論を経て決定すべきと指摘しています。
福島第一原発の汚染水を処理したあとに残るトリチウムなどの放射性物質を含む水の処分をめぐっては、専門家による国の小委員会が基準以下に薄めて海か大気中に放出する方法が現実的だとする報告書をまとめ、国は先月から福島県などで自治体や関係団体などから意見を聞く会を開いています。
また、一般の人からも処分方法や風評対策などについて意見募集を行っていて、当初、今月15日までだった期限を来月15日まで1か月延ばすことになりました。
経済産業省は「検討は継続していて、より多くの声を反映したい」としています。
これまでの意見を聞く会では比較的影響が抑えられるなどとして放出へ理解を示す意見がある一方、風評被害などを心配する声は根強く、保管の継続や具体的な風評対策を求める意見もあがっています。
国の小委員会の委員を務めた福島大学の小山良太教授は「新型コロナウイルスの渦中で国民的議論になっていない。広く意見を聞いたうえで決定すべき課題だ」と指摘しています。
一般からの意見はメールかFAX、郵送で受け付けています。
▽FAX番号は03-3580-0879
▽メールアドレスはtakakushu-iken@meti.go.jp
▽郵送は「経済産業省 廃炉・汚染水対策チーム事務局」までです。
詳しくは経済産業省のホームページをご覧ください。