18日夕刻、NHKから「敦賀原発 原子力規制委 再稼働の審査中断」に関する詳しい記事が出ましたので、「詳報」として紹介します。
併せて時事通信の記事も紹介します。
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敦賀原発 データ上書き問題 原子力規制委 再稼働の審査中断
NHK NEWS WEB 2021年8月18日
福井県にある敦賀原子力発電所2号機について、日本原子力発電が過去に提出した直下の断層に関するデータを一部削除して上書きし、最新の調査結果のみを記載していた問題で、原子力規制委員会は、原因調査や再発防止に一定のめどがたつまで、再稼働に必要な審査を中断することを決めました。審査の中断は2度目です。
原子力規制委員会は18日の定例会合で、日本原電が敦賀原発2号機の真下を通る断層の地層データなどの一部を削除し、最新の調査結果のみを上書きして記載した問題について、対応を議論しました。
委員からは「書き換えだけでなく記載の誤りも相次いでいて、資料の品質に疑問がある」とか「科学的な作法にのっとって資料を作成してもらわないと話にならない」などの指摘が出されました。
議論を踏まえて更田豊志委員長は「再発防止策の内容が確認できるまでは審査の会合を実施しない」と述べ、原因調査や再発防止に一定のめどがたつまで、再稼働に必要な審査を中断することを決めました。
審査の中断は、去年2月に続き2度目です。
敦賀原発2号機をめぐっては6年前、規制委員会の専門家会合が「原子炉の真下を通る断層が将来動く可能性がある」と指摘したのに対し、日本原電が反論し、審査の大きな焦点になっています。
規制委 再発防止策など改めて報告受け 対応検討
敦賀原子力発電所2号機の再稼働に必要な審査を中断すると決めたことについて、原子力規制委員会の更田豊志委員長は、18日の会見で「規制委員会として重い判断をした。できることならば、断層が将来活動する可能性があるのか、科学的、技術的にデータをそろえたうえで決着つけたい。しかし、今はできない状態にある」などと述べ、まずは原因調査や再発防止策の内容を注視する考えを示しました。
そのうえで、審査を再開する時期については「私たちもわからない。再発防止策などを改めて報告してもらったあとに対応を検討したい」と述べるにとどめました。
一方、同じ日本原子力発電が運営し、3年前に再稼働の審査に合格した茨城県にある東海第二原発については「今の時点で、私たちの判断に疑いを持つ状況にはなっていない」と述べ、現時点で審査を見直す必要はないという考えを示しました。
日本原子力発電「早期の審査会合実施へ全力」
日本原子力発電は「当社は、これまでの分析に基づき、自主的に是正処置を適宜実施しております。本日の規制委員会で示された方針に基づき、業務プロセスの構築を確認していただくための準備を早急に進め、早期に審査会合を実施していただけるよう、全力で取り組んでまいります」とコメントしています。
敦賀原発2号機をめぐる経緯
日本原電が再稼働を目指す敦賀原発2号機をめぐっては、原発の真下を通る断層が将来動く可能性があるかどうか、規制委員会と日本原電の意見が真っ向から対立しています。
敦賀原発の近くには「浦底断層」という活断層があります。
規制委員会の専門家会合は、敦賀原発の真下を通る断層が、この浦底断層に引きずられて動く可能性があるなどと、6年前(2015年)に指摘しました。
原発の新しい規制基準では、原子炉などの重要な設備は「将来動く可能性のある断層の上に設置してはならない」と規定されているため、この指摘を覆せない場合、廃炉になる可能性があります。
日本原電は、追加の調査を実施したうえで、断層は将来動く可能性はないと反論し、再稼働に必要な審査を規制委員会に申請しました。
規制委員会と日本原電の見解が分かれたまま始まった審査の中で、去年2月、日本原電が原発の真下を通る断層に関する観察結果を一部削除し、最新の解析結果のみを記載していたことが明らかになりました。
規制委員会が問題視したのは、地層をくり抜く調査から作成した「ボーリング柱状図」という資料で、日本原電が断層には活動性がないとする根拠のひとつとして示したものでした。
この資料では、当初、肉眼による観察結果として、過去に活動した可能性があり、地層が固まっていない「未固結」と評価された部分がありました。
日本原電は、その後の顕微鏡による詳細な解析の結果として、これらのデータについて過去の活動歴がないと考えられる、地層が固まっている状態を示す「固結」と評価を見直しましたが、当初の記述は削除し、最新の解析結果のみ上書きするかたちで記載して提出していました。
これについて規制委員会は、当初のデータと新しいデータを比較することができず、不適切だとして、再稼働の審査をいったん中断することを決定しました。
その後、日本原電は資料に使用した元のデータをすべて提出し、規制委員会は去年10月、再稼働に必要な審査を再開するとともに、データの記載の問題については並行して原因などを調査することにしました。
この調査について、先月、途中経過が報告されましたが、資料の書き換えだけでなく、誤った記載が相次いでいることも問題視され、資料の信頼性が確保されていないとして、18日、2度目の審査中断となりました。
規制委員会によりますと、再稼働に必要な審査が2度にわたって中断されるのは初めてだということです。
規制委、敦賀原発の審査中断 地質データ書き換えで
時事通信 2021年8月18日
写真を拡大日本原子力発電敦賀原発2号機(福井県)の再稼働に必要な審査をめぐり、同社が提出した地質データが書き換えられた問題で、原子力規制委員会は18日、規制委が別途進めている検査により、同社の審査資料の信頼性が確保されたと確認されるまで、審査を中断することを決めた。
同原発の審査は2015年11月に申請され、敷地内の活断層評価をめぐり長期化。見通しはさらに立たなくなった。
書き換えられたのは、原発敷地内のボーリング調査で得られた地質情報を書いた「柱状図」。昨年2月の審査会合に提出された際、以前の提出時には「未固結」とした記述が、説明なく「固結」に変更されるなどしていたことが判明。計25カ所が書き換えられていた。
原電側は改ざんの意図を否定し、データ原本も提出したため、審査はいったん継続された。しかし、規制委事務局の原子力規制庁は同社本社の立ち入り検査などを実施し、今年7月の中間報告で「膨大なデータを処理するための業務管理が適切にできていなかった」としたため、改めて審査継続の可否が問われることになった。
18日の規制委定例会合で、更田豊志委員長は「審査会合に提出される資料は、基本的な科学的作法にのっとってもらわないと話にならない」と指摘。「確認の余地があるという以上、審査会合を開ける状況ではない」と述べ、審査の中断を決めた。
規制委は、審査資料の作成に関わる同社の管理体制について、(1)データ原本の追跡が可能 (2)資料に記載された判断の根拠が明確—の2点が確保されていることが必要と判断。これらが検査の中で確認されるまで、審査を再開しないとした。
日本原電のコメント 規制委で示された方針に基づき、業務プロセスの構築を確認していただくための準備を早急に進め、早期に審査会合を実施していただけるよう、全力で取り組む。