経産省によると、今年12月~来年3月の電力供給の余力を示す予備率は、東電管内では最小値が1月が5・2%ということで、最低必要限度の3%を上回っています。
予備率が8~10%あればより安心なのは当然ですが、「逼迫する」と騒いで原発の起動を迫る状況ではありません(「3%」は決していい加減な値ではなく、一連の突発事故などを見越した基準で、これまで不都合がなかった数値です)。
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柏崎刈羽原発、再稼働見通せず 今冬も首都圏は電力逼迫か
産経新聞 2023/11/8
東京電力が早期の再稼働を目指す柏崎刈羽原発(新潟県)の年内稼働が絶望的となっている。テロ対策の不備で原子力規制委員会が出した運転禁止命令の解除の見通しが立たないためだ。今夏の電力需給が逼迫した首都圏にとって、安定供給に原発稼働は不可欠だが、クリアすべきハードルは高く、8日に「立冬」を迎えたこの冬も綱渡りの状況が続く。
■「もう一歩」
「発電所の目指す姿に向けて、だいぶ進んできたが、もう一歩だ」。6日、柏崎刈羽原発の事故対策を報道陣に公開した稲垣武之所長は、電源喪失時に原子炉の冷却を続けるための新たな設備などを紹介し、早期の再稼働に注力する姿勢を強調した。
同原発では、令和3年に侵入検知器の故障やIDカードの不正使用などのテロ対策上の不備が相次いで発覚。規制委は同年4月に運転禁止命令を出し、今年5月にはテロ対策に関する改善状況を確認する追加検査の継続を決定。これと並行し、東電が原発を動かす事業者としての資格があるかどうか、「適格性」についても再確認している。
東電は同原発6、7号機の再稼働を経営再建の柱と見込む。今年6月に電気料金を値上げした際には、今年10月に7号機、令和7年4月の6号機稼働をコスト計算の前提に織り込んでいたが、運転禁止命令の解除と立地自治体の同意が必要となる再稼働時期は見通せない状況が続く。
新潟県は今年9月、福島第1原発事故に関する県独自の検証結果をまとめた。花角英世知事は「(同意可否の)重要な判断材料にしたい」との考えを示したが、同意を得るまでのプロセスが年内に決着するかは微妙な情勢だ。
また、仮に同意が早期に得られたとしても、規制委による事前検査や原子炉への燃料装填などで原子炉が起動するまでには1カ月程度かかる。東電幹部は「現実的には今冬に間に合うかどうかも微妙」と話す。
■1月の予備率5・2%
経済産業省によると、今年12月~来年3月の電力供給の余力を示す予備率は、東電管内では1月が5・2%と最も逼迫する。安定供給に最低限必要とされる予備率は3%だが、電力各社は発電施設のトラブルによる緊急停止など不測の事態を考慮し、安定供給の目安を8~10%としている。
東電が再稼働を見込む6、7号機の発電能力は、都内の需要の約5%に相当する約270万キロワット。再稼働すれば首都圏の電力不足を補い、高騰する電気料金に歯止めがかかる可能性が高い。
一方、保有する原子炉7基がすべて再稼働した関西電力は、今年6月の電気料金値上げを見送った。この結果、首都圏の電気代は関西地域より5割も高くなり、原発稼働が進む西日本と「稼働ゼロ」の東日本との地域格差は広がりつつある。
東電の小早川智明社長は今年6月の規制委会合に出席し、テロ対策不備を巡る一連の問題について「組織が大きく縦割りになり、現場とのコミュニケーションが不足していた部分はある」と説明。会合後には記者団から再稼働時期について問われ、「見通しは立っていない」と明言を避けた。(白岩賢太)