27日~29日の3日間、柏崎刈羽原発の事故を想定した新潟県の防災訓練が行われました。今回の訓練では様々な課題が浮かび上がったようです。
地域柄一番懸念されているのが冬の大雪など悪天候が重なった場合の避難ですが、今回はそうした悪天候に対応する訓練は非公開の机上訓練のみで終わりました。
途中で被爆量を調査するスポットでは「防災DXアプリ」を使用しますが、高齢者も多くて読み取りに苦戦したり、ログインできないケースもあるなど問題が明らかになりました。
各テレビ局がそれぞれ記事を出しましたので紹介します。
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国・新潟県による“原子力防災訓練” 1400人以上の住民参加 避難の流れ確認も「雪が降ったら…」
NST新潟総合テレビ 2023/10/30
東京電力・柏崎刈羽原発での重大事故の発生を想定した原子力防災訓練が10月29日まで3日間行われました。国の訓練と一体で規模を拡充して行われた一方、課題も残されています。
10月27日に始まった原子力防災訓練。
柏崎刈羽原発で重大事故が発生したことを想定し、18年ぶりに国と新潟県による一体での実施となりました。
初日は県庁などで対策本部の運営手順が確認されると、2日目には…
【岸田首相】
「現時点から避難、屋内退避などの対策を実施します」
官邸から岸田首相が原子力緊急事態宣言を発出し、住民も参加しての避難訓練が始まりました。
まず、28日は原発から5km圏内の即時避難区域の住民の避難です。
柏崎市の海岸で住民が乗り込むのは、自衛隊のホーバークラフト。地震で道路が寸断された想定で、海路で逃げる住民がいる一方、ヘリを使った避難の流れも確認され、三条市のグラウンドでは花角知事も視察する中、空路で逃げる住民たちが降り立ちました。
【参加者】
「ヘリ避難は早い。計っていたら、10分くらい」
そして3日目の29日は、原発から5~30km圏内の避難準備区域の住民の避難訓練が行われました。
参加者は、バスや自家用車で逃げる途中、スクリーニングポイントに立ち寄り、車や自らの体に放射性物質が付着していないか検査を受けてから避難先まで向かう流れを確認しました。
【参加者】
「避難の流れがあまりよく分からなかったので、体験できたのはよかった」
合わせて1400人以上の住民が参加し、大きな規模で行われた訓練。一方で…
【参加者】
「雪があるときは想像がつかない。ぞっとする」
去年、柏崎市でも幹線道路が長時間にわたり通行止めになるなど、懸念される大雪の影響。
今回の訓練では、その大雪を想定した住民の避難は行われず、非公開の机上訓練で関係機関が対応を協議するだけにとどまり、住民から不安の声も聞かれました。
花角知事は「避難道路の整備を国に要望している」とした上で…
【花角知事】
「実際、整備されていけば、少しずつ県民の皆さんの不安というものも少なくなっていくんだろうと思うが、いずれにせよ訓練なりを通して検証していく必要がある」
原発の再稼働議論が進められようとする中、残された課題への対応が求められます。
DX化・トラブル対応など課題も 大雪時は? 柏崎刈羽原発の事故想定 国・県18年ぶり大規模避難訓練
UX新潟テレビ21 2023/10/30
27日から29日にかけて、国と県が連携して柏崎刈羽原発での重大事故を想定した原子力防災訓練を3日間にわたり行いました。1400人以上の住民が実際に避難する中で、課題も見えてきました。
訓練は、柏崎市や刈羽村などで震度6強の地震を観測し、柏崎刈羽原発7号機から放射性物質が放出された想定です。
■花角知事
「地震による原子炉が緊急停止した柏崎刈羽原子力発電所7号機について電源を失う可能性があり予断が許さない状況です」
■岸田総理
「原子力災害対策特別措置法第15条2項の規定に基づき、原子力緊急事態宣言を派出致します」
国が柏崎刈羽地域を対象に訓練を実施するのは、18年ぶりです。
原発から半径5km圏内に住むPAZ内の住民が避難。柏崎市西中通の住民約60人は、海上自衛隊のエアクッション型揚陸艇へ。実際に住民が乗る訓練は今回が初めてです。約4km先の海上で輸送艦「おおすみ」に乗り換え、上越市の直江津港へ向かい、バスに乗り換えて避難先に向かいました。
■住民
「今回、参加している人数が、小規模な感じなので、実際に住民全員が、多くの人数がこれだけスムーズにできるのかが、まだわからない」
柏崎市の西山公会堂にも避難する住民が集まりました。避難者の本人確認には県が開発した「防災DXアプリ」を使用しましたが、高齢者も多く、読み取りに苦戦しました。
■住民
「手続き、あるいはQRコードの読み取り、ログインできない人が大半ですから、こんなことしていると避難が遅れてみんなが汚染される結果に」
「私は、ちょっとミスったみたい、エラーメッセージ出た」
柏崎市や刈羽村の住民は、バスやレンタカーなどを使って約140km先の村上市まで避難。到着すると、こちらもアプリで受け付けをしま下が、初めての取り組みのため、担当者も説明書を見ながらの対応です。
■柏崎市からきた男性
「いつ起きるかわからないので、大雪とか天候が悪いときには、ここまで距離があるので避難できるか不安はある」
「若い人は自分の足で動けるけど、動けない人をどうやって連れてくるのか。そういう訓練は全然しないでしょ、だから心配ですね。うちも年よりいるから」
原発から5~30km圏内のUPZの住民も避難。
■防災無線
「高田地区の皆さんは、上越市の避難経由所に向けて、自家用車などで避難を開始してください。」
柏崎市高田地区の住民は上越市へ避難。経由地の公園で、放射性物質の付着を検査するスクリーニングと除染作業が行われました。今回の訓練はこれまでよりも、自家用車での避難を増やしました。。
■検査員
「ワイパーの汚測定をした。付近に放射性物質の付着の可能性がある。」
一方、上越市吉川区の住民を乗せたバスのタイヤが会場内でパンクするトラブルも起きました。
■参加者
「大変だった。これもまた良い訓練になったのでは」
柏崎市の桜井雅浩市長は国の訓練実施について、「18年に1回というのは、あまりにも頻度として少ないのでは」と指摘。
DXアプリを使った避難者受付の混乱については。
■桜井市長
「こういうときこそマイナンバーカードが使われるべきであって、柏崎市も70数%所有されていると思うので、本人確認はマイナンバーカードをメインに使われるべきではないかと思う」
原発事故と大雪が同時に発生したときの避難の難しさは以前から指摘されています。しかし今回、大雪の想定は非公開の机上訓練だけ行われました。
■花角知事
「国には除雪体制を止めないための、最大限の体制の強化・やむを得ず止めてもできるだけ早く再開できる、そのための集中的な態勢づくりをお願いしているところ。そうしたものが少しずつ実際整備されていけば、少しずつ県民の皆さんの不安は少なくなっていくと思うが、こうした訓練を通して検証していく必要はある」
「一斉に動いたら…」船にヘリ、自家用車 スムーズに避難するためには? 原発事故想定の防災訓練 新潟
BSN新潟放送 2023/10/30
29日までの3日間、柏崎刈羽原発の事故を想定した新潟県の防災訓練が行われました。18年ぶりに国と一体となって行った今回の訓練。様々な課題が浮かび上がったようです。
今回の訓練は、新潟県の上・中越沖を震源とする地震で柏崎刈羽原発7号機の炉心が冷やせなくなり、放射性物質が放出されるという想定で行われました。
岸田総理
「原子力緊急事態宣言を発出いたします」
国と一体での訓練は18年ぶりです。屋内退避も含めると住民およそ16万5000人が参加する大規模な訓練です。
原発から5キロ圏内の住民が避難のために使ったのは、海上自衛隊のエアクッション型揚陸艇=「LCAC」です。この船は2021年の訓練でも登場しましたが、波が高く住民を乗せるのは断念していました。
記者リポート
「住民を乗せたLCACが海上へと出ていきました。そして沖合4~5キロほどのところに泊っている輸送艦に船体ごと入り、住民を移すということです」
住民はその後、直江津港まで移動しました。「船での避難」に住民は…
住民
「海が荒れた時がちょっと不安かなと思います」
「本当に放射性物質があるところに自衛艦が迎えに来てくれるのか」
「自動車もありますし、わざわざ船に乗ってこれだけ時間がかかると放射能浴びる可能性があるので、早く抜けたいと思えば車で逃げるか…その方が早いのかな」
今回の避難訓練には他にもヘリコプターを使った避難や自家用車、バスを使った避難も訓練も行われました。
「左手に放射性物質が付着している可能性がありますので、隣で簡易除染を受けていただきます」
車で避難した住民は『スクリーニングポイント』に立ち寄り、体や車などの表面に付着した放射性物質を検査。15秒ほどで2人が同時に検査できる新たな機器も使って検査の流れを確認しました。
また避難所での本人確認では、新潟県が開発したアプリを使い、作業が効率的に進むかも確認しました。
住民
「避難の方はスムーズにできるかと思います。今回のでだいぶ手順が理解できましたので」
一方で「車の避難」には、こんな不安も…
住民
「車で移動している時は、情報を受け取る方法があるのかないのかが心配ですね」「ほとんどみんな自家用車になるじゃないですか。その場合に果たしてスクリーニングポイントなどに全員が通過していけるのかどうか…逃げたい一心になれば、そういうところを飛ばしていくということもありますよね」
また懸念されているのが、冬の大雪など悪天候が重なった場合の避難です。今回、悪天候に対応する訓練は非公開の机上訓練のみで終わりました。
住民
「去年の柏崎の大雪で国道止まりましたよね。ああいう時はどうするのかなっていう細かいところが計画に組んでないので、避難経路だけはわかったですけども、交通状況は把握していない感じ、そういうところはちょっと心配でした」
「一斉に動いたらどうなるのとちょっと疑問」
視察した花角知事は、「繰り返し行う中で防災意識が高まる」と訓練の意義を強調しました。
新潟県 花角英世知事
「例年県がやってきたものに比べれば、はるかに規模が大きくなって、言うならば『より実際に近いもの』になってきていると思います。訓練を重ねる中で、非常に効率的なものになっていくとは思います」
新潟県は3日間の訓練で得た教訓を国や自治体などと共有し、今後の対応に役立てるとしています。
原発の重大事故に備えて住民参加の避難訓練 計画の実効性は? 不安や課題の指摘も 《新潟》
TeNYテレビ新潟 2023/10/30
東京電力・柏崎刈羽原発での重大な事故を想定し、10月28日と29日の2日間、住民の避難訓練が行われました。国がかかわりさまざまな訓練が行われる中、課題も浮き彫りとなりました。
《防災行政無線》
「西中通地区に避難指示が発令されました」
10月28日、柏崎市の西中通地区。
住民たちが一時集合場所となる地元の小学校に続々と集まってきました。始まったのは原子力防災訓練です。
〈参加した住民〉
「やっぱり身近に感じていないとダメだと思っている」
「福島の事故をみてますので、自分たちもいつそういうことが起きるのか不安はどこかにはあります」
首相官邸には岸田首相をはじめ、閣僚たちの姿が…
〈岸田首相〉※訓練
「東京電力・柏崎刈羽原発において事故が発生したことから原子力緊急事態宣言を発出し関係自治体への避難等の指示を行いました」
訓練は震度6強の地震が起き柏崎刈羽原発7号機の原子炉が自動停止。その後、原子炉を冷やすための非常用の冷却機能が喪失し全面緊急事態に至ったとの想定です。
国が柏崎刈羽原発を対象に訓練を行うのは2005年以来18年ぶりです。被ばくを防ぎながら住民をどう安全に避難させるのかが訓練のテーマです。初日は原発から5キロ圏内の住民が参加しました。
住民を乗せたバスが向かった先は原発をのぞむ柏崎市の海水浴場。
沖合から水しぶきをあげて向かってくる2隻の船…自衛隊のホーバークラフトです。地震によって道路が寸断されたり渋滞が起きたりした場合を想定し海上からの避難を試みます。
〈参加した住民〉
「ちょっと恐ろしいです…今まで経験したことないので」
「大きな音がするのでこれからどれくらい大きな音がするのか不安です」
住民は沖合で輸送艦に乗り換え上越市へ向かいました。
このほか、自衛隊のヘリコプターを使い、空からの避難も行われました。
ただ、雨天候のため予定されていた一部のヘリの飛行は中止となりました。
◇ ◇
訓練2日目は5キロから30キロ圏内の住民が対象で、放射性物質が放出されたあと避難を始めた想定です。
柏崎市の住民は上越市の公園に到着しました。
《訓練》
「これからワイパーの方を測定します。エンジンを切ってお待ちください」
行なわれていたのは放射性物質が付着していないか調べるスクリーニング検査です。住民たちが乗った車やバスの放射線量を調べ、汚染されていないか確認していきます。
《訓練》
「左ワイパー基準値未満です」
「基準値未満了解です」
基準値を超えた場合は住民の検査に移ります。放射線量の高いか所を調べ、簡易除染が行われました。
スクリーニング検査を終え、上越市の避難経由所に到着しました。
住民が手にしているのはスマートフォン。時間の短縮や効率化を図ろうと専用のアプリを使いオンラインでの受付が行われました。
ただ…
〈職員〉
「ダメだ。大変申しわないです。こちら読み取れなくて。あちらの紙に書いていただいて」
うまく受付ができないケースも。
また、扱いに不慣れな高齢者からは。
〈参加した住民〉
「年をとっているとこれ、スマホで出せないという人はこれ(名札)を町内会でつくってくれた。逆にね、時間がかかってますね」
柏崎市や刈羽村など7市村から約880人の住民が参加した避難訓練。
住民からはさまざまな声が聞かれました。
〈参加した住民〉
「若い人はアプリがいいだろうしお年寄りは携帯のない人もいますし」
「受付から滞ってみなさんやっぱり登録が難しいのかと感じました」
「私たちの訓練というよりどちらかというと県の主催者側の訓練のような気がして、(自分が)実際に動けるのかなって不安はすごくあります」
とくに不安の声があがったのが…
〈参加した住民〉
「逆にもう家に閉じこもっていた方がよっぽど安全かと、“真冬”は」
「実際に“冬道”だったらしかもあの大型バスなので路面悪ければこの道通れないとかもう少し時間かかるのではないかと感じた」
原子力災害と大雪が重なる複合災害。
去年12月には大雪の影響で柏崎市を通る国道8号が38時間にわたって通行止めとなる事態が起きました。
訓練を視察した花角知事は。
〈花角知事〉
「訓練というのはいろんな角度でやるべきものでありますので。さまざまな機会をとらえてできるだけシナリオのパターンをつくって訓練することは重要だと思う。それが対応力の向上につながると思います」
県は課題を洗い出し、今後の訓練や県の広域避難計画に反映させていくとしています。