2023年5月17日水曜日

17- 原発政策転換を理解できるは少数 浜岡原発31km圏市町 静岡新聞調査

 南海トラフ巨大地震の想定震源域にある浜岡原発は、福島原発事故の直後に菅直人内閣の要請によって停止してから12年になりました。

 静岡新聞浜岡原発から半径31キロ圏11市町の首長を対象にアンケートを実施した結果、岸田政権が「発回帰」に政策を大転換したことについて、「理解できる」が1,「ある程度理解できる」が1に対して,「あまり理解できない」が4、「無回答」が5でした。
 地元の市町は政府や規制委より稼働に対して慎重であることが分かります。
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浜岡停止12年 原子力政策転換、賛否分かれる
11首長静岡新聞社アンケート 「国策」理由、無回答も
                            静岡新聞 2023/5/15

 政府要請で中部電力浜岡原発(御前崎市佐倉)が全炉停止してから14日で12年を迎えた。国は東京電力福島第1原発事故以来の原子力政策を転換し、国会では60年を超えての運転を可能にする束ね法案「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」の審議が進む。静岡新聞社は浜岡原発から半径31キロ圏11市町の首長を対象にアンケートを実施し、原子力政策転換についての意見を聞いた。「急転換」「やむを得ない」。長期運転のリスクやエネルギー、環境問題などを背景に賛否が分かれた一方で、「国策」を理由に無回答の市町もあった。
(図表)原子力政策の転換に関する11市町長アンケート結果※敬称略↓
https://news.yahoo.co.jp/articles/81058ff5d33985b64cabbf36525ff8805441f462/images/000
 掛川、袋井、磐田、森の4市町は「あまり理解できない」と回答した。「急転換での制度見直しと感じる」(掛川)や、「使用済み核燃料の処分や再利用の課題解決が必要」(森)との懸念が示された。磐田市は「国会での十分な議論と住民の理解が必要」と指摘する。袋井市は安心安全の担保の必要性を挙げた上で、国や原子力規制委員会への要望に関する自由記述で「将来的に原子力に頼らない再生可能エネルギーを含めた議論をすべき」と強調した。

 政策転換に理解の立場を示したのは御前崎と藤枝のみ。御前崎市は「エネルギー情勢や地球温暖化防止のため安全が認められた原発は活用すべき」とし、規制委に対して「長期運転にはより厳しい審査の徹底を」と求めた。藤枝市は「電力供給量を考慮し、地域住民の理解と安全性が確保できるならやむ得ない」とした。
(図表)Q.国や原子力規制委員会への要望 ※自由記述(一部抜粋)
https://news.yahoo.co.jp/articles/81058ff5d33985b64cabbf36525ff8805441f462/images/000
 一方で、考えを明確にしなかったのは牧之原、菊川、島田、焼津、吉田の5市町。うち4市町は「国策で答える立場にない」「国による十分な説明が必要」などと理由を挙げた。菊川市は「エネルギー環境の変化を踏まえての政策」との認識を示した。

■記者の目 判断や議論の機会創出を
 原子力政策の転換に関する首長アンケートの自由記述では、政策転換の経緯や安全性の担保、長期運転のリスクなどについて「国は丁寧な説明を」と国への要望が相次いだ
 60年超運転の制度では、審査などで停止した期間が上乗せされ、課題が多い原発ほど長期運転が可能になる。安全性の問題が先送りされたままの原発回帰に、南海トラフ巨大地震の想定震源域に浜岡原発を抱える周辺首長が疑問を抱くのは当然だ。ところが、なぜ政策転換に対する意見を問うと「国策」を理由に立場があいまいになるのか。

 電力の安定供給や脱炭素社会の実現には原発の有無を含めてエネルギー政策全体の議論が不可欠。国会での審議だけでなく、本来一人一人が自らが使う電力の在り方を考えることが重要だ。国策だとして首長が考えを示さないのは、住民の判断や議論の機会を奪っているとも言える。浜岡原発周辺の首長には、エネルギー政策に関する議論を率先する姿勢を見せてほしい。