2023年5月8日月曜日

原発事故で住民が離散しても…みこしがつなぐ古里の絆 福島・双葉

 福島第1原発事故で被災し、全49世帯が福島県内外に離散した同県双葉町浜野地区に憩いの場所としてあずまやが建てられ、みこしが巡行しました。
 同地区は町内ではいち早く避難指示が解除されましたが、町の復興事業に使われ、住民が住む場所ではなくなりました。それでも元住民らは「あずまやに座ると昔の記憶がよみがえる。墓参りで近くに来た際、落ち着ける場所ができた」として、古里とつながり将来に残そうとしています
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原発事故で住民が離散しても…みこしがつなぐ古里の絆 福島・双葉
                          河北新報 2023年5月7日
 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で被災し、全49世帯が福島県内外に離散した同県双葉町浜野地区にあずまやが建てられ、みこしが巡行した。町内ではいち早く避難指示が解除された地区だが、町の復興事業に使われ、住民が住む場所ではなくなった。それでも元住民らは古里とつながり、将来に残そうと動く。

地区の憩いの場にと整備されたあずまや
 4月30日、同地区の中野八幡神社。完成したばかりのあずまやに元住民ら約120人が集まり、記帳した。兵庫県淡路島の神社から贈られたみこしが、地区外の人の手も借りてにぎやかに練り歩くのを楽しんだ。
 いわき市から駆け付けた主婦(65)は「一人一人の性格を知り、けんかしても後を引かなかった」と古里の結び付きを振り返る。「あずまやに座ると昔の記憶がよみがえる。墓参りで近くに来た際、落ち着ける場所ができた」と喜んだ。
 田園地帯と美しい海岸が広がる浜野地区は震災の津波で大半の住宅が流失し、14人が死亡・行方不明になった。さらに原発事故に伴う避難指示が全町に出され、住民らは県内外に散り散りになった。
 町の大半が帰還困難区域となる一方で避難指示解除準備区域に再編され、2020年3月に町内でいち早く避難指示が解除された。津波の浸水リスクがあるとして、町は防潮堤や防災林、復興祈念公園、産業拠点などの整備を決めた。
 先祖代々の共同墓地も閉じた。古里の風景は大きく変わったが、人の営みや暮らしがあった証しを後世に残そうと、行政区は震災時にあった全世帯の世帯主の名前などを刻んだ石碑を建てる予定だ。
 行政区長の高倉伊助さん(67)=須賀川市=は、人的支援を受けながらできるだけみこしの巡行を続け、町内を盛り上げたいと願う。「(避難指示が続く地域の分も)少しでも動きたい」と話す。