2023年5月17日水曜日

「次の冬までにLNG調達の柔軟性を高めたい」JERA奥田社長

 読売新聞が東電と中電が共同出資する発電会社JERAの奥田久栄社長に、燃料価格の見通しや脱炭素に向けた取り組みを聞きました。
 奥田社長は次の冬もLNGの需給が緩んだ状態が続くとは考えにくいとしましたが、調達の柔軟性を高めスポット取引の量をできるだけ減らせば、影響は抑えられると考えているとしました。
 火力発電で水素やアンモニアを石油と混焼させることで炭素発生量を抑える方式が現実的とする一方で、別掲の記事で古賀茂明氏が「脱炭素の決め手」と主張する再生エネ拡大への期待は殆ど示されませんでした。
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「次の冬へ需要増え電気料金上昇リスク、LNG調達の柔軟性を高めたい」
  …奥田久栄・JERA社長
                            読売新聞 2023/5/16
 東京電力と中部電力が共同出資する発電会社、JERAの奥田久栄社長に、燃料価格の見通しや脱炭素に向けた取り組みを聞いた。

 ――液化天然ガス(LNG)の需給見通しは。
 「欧州や日本の暖冬、中国経済の低迷が重なり、直近は市場の需給が緩んだ。ただ、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は変わっていない。今冬に向けて、予断を許さない状況が続くと思っている。
 ガス田の開発が進まず、供給力は増えていない。欧州では、LNG受け入れ基地の稼働が相次ぎ、需要が増える見通しだ。中国経済も徐々に回復してきている。次の冬も需給が緩んだ状態が続くとは考えにくい

 ――今後のLNG価格や電気料金の見通しは。
 LNG価格が上昇していく可能性は高く、リスクに備える必要がある。調達では、割安な長期契約と、需給に応じて売買するスポット取引がある。次の冬に向けて、スポット価格は上昇するリスクが相当大きい。電気料金も上昇するリスクがある。スポット取引の量をできるだけ減らせば、影響は抑えられると考えている。
 価格が上昇する前に、LNGを確保しておくことも有効だ。官民共同で検討していきたい。海外のエネルギー企業と需給情報を共有したり、過不足分を融通したりする提携関係も強化している。調達の柔軟性を高めていきたい」

 ――脱炭素化への戦略は。
 「再生可能エネルギーに加え、燃焼時に二酸化炭素を排出しない水素や、アンモニアを使った火力発電を組み合わせることが、脱炭素化や、安定的で経済的なエネルギーの供給につながる
 2023年度末には、碧南火力発電所(愛知県)で石炭とアンモニアの混焼を始める。最初は燃料の20%をアンモニアとするが、既存の設備で混焼率60%まで引き上げることが可能だとみている。
 再生エネでは、洋上風力を強化する。海に囲まれ、風もそれなりに吹く日本はポテンシャル(潜在能力)がある。ただ、欧州と比べて遠浅の海が少ないなど、開発の難易度は高い。
 ポテンシャルを生かすためには、欧州以上の技術やノウハウ、事業開発能力を持たなければならない。今年3月にベルギーの洋上風力発電大手の買収を決め、ようやくスタートラインに立てたと思っている」

 ――火力発電の活用に否定的な国も多い。
 「先進国だけが世界ではない。先進国が利己的な方法で脱炭素化を進めても、途上国はついてこられない。例えば、アジアには新設したばかりの火力発電所が多くあり、これをいきなり壊して再生エネに変えるのは現実的ではない。グローバルな視点で相互に補完しながら、脱炭素化の課題を解決していくべきだ。
 『日本は遅れている』という声もあるが、むしろ進んでいる。より現実的に脱炭素化を世界で進められるアプローチを取ろうとしている。その主張をしっかりとすることが大事だ」

◆奥田久栄氏(おくだ・ひさひで)

1988年早大政経卒、中部電力入社。19年4月に東京電力と中部電力管内の火力発電所を運営するJERAの常務執行役員経営企画本部長に就任。副社長執行役員を経て23年4月から社長。三重県出身。