2023年5月27日土曜日

東北電女川原発、差し止め認めず 異常事故「前提にできず」

 仙台地裁は24日、避難計画が実効性がないからとして石巻市民17人が女川原発2号機の再稼働差し止めを求めた訴訟を、「放射性物質を異常に放出する事故が起きる具体的な危険が存在することを立証していないから、避難計画の実効性については判断するまでもなく「再稼働の差し止めは不要」という判決を出しました。
 判決を言い換えれば「具体的な危険が立証されなければ避難計画は不要乃至形だけのものであればよい」ということになります。しかし逆に言えば「具体的な危険が立証されれば原発の稼働は出来ない」のですから、原発を稼働させる以上実効性のある避難計画は不要ということになり、稼働する原発においては避難計画の策定自体が不要ということになります。
 そもそも判決は、原発推進派のIAEAの原発の「深層防護」の考え方の第5層「避難」自体をも否定するもので、国際的に全く通用しません
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女川原発訴訟 運転差し止めの訴え退ける判決 仙台地裁
                     NHK NEWS WEB 2023年5月24日
宮城県にある東北電力・女川原子力発電所2号機について、重大な事故が起きた場合に備えて自治体が作成した避難計画は不備があるとして周辺の住民が運転の差し止めを求めた裁判で、仙台地方裁判所は避難計画に実効性がないという主張だけでは運転の差し止めを求めることはできないという判断を示し、住民側の訴えを退けました。

来年2月に再稼働が計画されている東北電力・女川原発2号機について、周辺の宮城県石巻市の住民17人は重大な事故が起きた場合に備えて市が作成し、県が関与する避難計画は不備があり、実効性がないと主張して運転の差し止めを求める訴えを仙台地方裁判所に起こしていました。
原発の運転差し止めをめぐる裁判は多くの場合、重大な事故が起きる具体的な危険性の有無などが主な争点になりますが、今回の裁判では原告側が「避難計画の不備」だけを理由に差し止めを求めていました。
24日の判決で仙台地方裁判所の齊藤充洋裁判長は、「原告側は放射性物質が異常に放出される事故が発生する具体的な危険があることについて主張や立証をしておらず、事故が起きる危険性を前提とすることはできない」と指摘しました。
そのうえで、避難計画に不備があるという主張だけでは裁判で原発の運転の差し止めを求めることはできないという判断を示し、住民側の訴えを退けました

原告側「不当判決」 
午前11時すぎ、原告側の弁護士と原告の1人が「不当判決」と書かれた紙を掲げて裁判所から出てくると、集まった支援者らは落胆した様子でした。

原告団長「中身のない判決。控訴に向けて準備急ぐ」 
判決のあと、仙台市内で原告団が会見を行い、今回の判決を批判しました。
原告団長の原伸雄さんは、判決で避難計画に実効性がないという主張だけでは運転の差し止めを求めることはできないという判断が示されたことについて、「避難計画の実効性の有無についての判断を放棄した判決だ。避難計画は事故が起きることを前提に作成されているにもかかわらず、放射性物質が放出される危険性についての立証を住民側に求めることは過剰だ」と批判しました。
その上で「全く中身のない判決で、何のために2年間も裁判してきたのか疑問に思っている。原発の再稼働が迫っているので控訴に向けて準備を急ぎたい」と話していました。
また、小野寺信一弁護士は「事故の危険性について人間の判断が絶対ではないということは福島第一原発の事故ですでに示されている。そのために避難計画があるにもかかわらず、実効性について判断されなかったことは非常に残念だ」と話していました。

東北電力「当社の主張 裁判所に理解していただいた」 
判決のあと、東北電力は仙台市内で取材に応じ、総務部の佐藤正人法務室長は「きょうの判決について当社の主張が裁判所に理解していただいたと受け止めています。引き続き、避難計画の実効性の向上に向けて、事業者としてできるかぎりの協力をしてまいります。また、地域のみなさまの理解を得ながら2024年の再稼働を目指してまいります」と話しています。

原発周辺の住民 さまざまな声
原発周辺に住む人たちからはさまざまな声が聞かれました。
石巻市は、市内全域が東北電力・女川原子力発電所からおおむね30キロ圏内の原子力災害対策重点区域に含まれ、原発で重大な事故が起きた場合に避難の対象となっています。
市内に住む70代の男性は「判決を聞いて残念です。福島第一原発の事故もありましたし、最近も全国各地で地震が起きているので、事故のリスクを考えると再稼働には反対です」と話していました。
また、市内の80代の女性は「原発が再稼働し、もし重大な事故が起きたら無事に避難できるかどうか不安です」と話していました。
一方、市内に住む20代の女性は「原発の安全性に不安はありますが、エネルギーが不足するなかで地域経済の面からも再稼働を受け入れなければいけないとも感じています。ただ、原発のリスクについて国や自治体にはもっとわかりやすく説明してほしいです」と話していました。

村井知事「防災体制の継続的な検証、改善に努める」
判決を受けて宮城県の村井知事は、「報道で承知しているが、県は訴訟の当事者ではないのでコメントは差し控える」とした一方で、「県としては国や関係市町などと連携し、防災訓練の実施などを通じて女川原子力発電所周辺の防災体制について継続的な検証、改善に努めていく」としています。

齋藤市長「避難計画の実効性の向上に努める」

石巻市の齋藤正美市長は、「訴訟の当事者ではないためコメントは差し控えますが、今後も国や県のほか、関係機関と連携して原子力防災訓練を実施し、検証をふまえて避難計画の実効性の向上に努めていきます」としています。