国から業務改善命令を受けた関西電力や九州電力など5社は12日、再発防止や法令順守体制の強化を柱とする業務改善計画を経済産業相に提出しました。今後の焦点は、電力大手と送配電子会社との資本関係の解消まで政府が踏み込むかで、政府が大なたを振るわないと不正が相次ぐ電力業界の正常化は無理とみられています。
それに対して電力大手は「電力の安定供給に悪影響が及ぶ」と反発しますが、それは電力側にとって都合が悪いという意味で、他国で行われていることが日本で出来ない筈はありません。
むしろ経産省にとって主要な天下り先である電力業界に対して大なたを振るう気があるのかどうかが問題です。経産省が出来なければ政府が行うべきですが、岸田首相は元経産省事務次官の嶋田隆氏を秘書官として重用しているほどなのでそれも期待できない感じです。
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送配電分離案 変革できぬ電力業界に政府の大なたも
産経新聞 2023/5/12
新電力の顧客情報を不正に閲覧したとして国から業務改善命令を受けた関西電力や九州電力など5社は12日、再発防止や法令順守体制の強化を柱とする業務改善計画を経済産業相に提出した。これを受け政府は、電力システム改革の推進に向け、なれ合いが常態化する電力業界に刷新を迫る方針だ。今後の焦点は、電力大手と送配電子会社との資本関係の解消まで政府が踏み込むかだ。不正が相次ぐ電力業界の正常化には、政府の大なたが必要だとの意見もある。
「再発防止・信頼回復に向けて、改善計画の取り組み内容が十分か、着実に実施されているか、継続的にモニタリングをしていきたい」。西村康稔経済産業相は同日の記者会見でこう述べ、電力小売りの競争環境の健全化に向けた仕組みを検討する考えも示した。
電力大手が送配電子会社が管理する新電力の顧客情報をのぞき見ていた行為は、情報の遮断を規定する電気事業法に反するだけでなく、電力自由化の流れとも逆行する。特に関西電力ではこれを営業活動に悪用する事案が発覚しており、悪質性が際立つ。
そこで強制的に情報を遮断するアイデアとして出てきたのが、電力大手と送配電子会社の資本関係を断つ案だ。政府の規制改革推進会議の有識者作業部会が3月に提言した。
これに対し、電力大手は「電力の安定供給に悪影響が及ぶ」と反発する。台風や地震で停電した際に迅速な復旧がしづらくなったり、責任の所在があいまいになるという主張だ。西村氏も「結論ありきではなく、虚心坦懐(きょしんたんかい)に議論を進めてもらいたい」と慎重な姿勢も示す。
ただ、電力業界ではカルテルなどの不正が相次いで発覚している。信頼を取り戻すには、コンプライアンス(法令順守)の徹底が積年の課題だ。自ら襟を正すことができないのであれば、送配電分離のような抜本改革が避けられない。(米沢文)