2023年10月11日水曜日

東電の追加賠償受け付け開始半年 支払い完了まだ2割 48万人の住所が不明

 東電による追加賠償の進捗状況は、賠償の受け付けを始めた4月10日から9月26日までに約76万人(51・4%)から請求があり、支払いが終了したのは約306000人(20・7%)ということです。

 遅延の理由は「請求書の記入内容の不備や委任状など追加書類の提出などで、何度かやりとりするケースがある」ためとされますが、福島訴訟(なりわい訴訟)原告団の中島孝団長(67)は「国を通じ、避難先の自治体から情報提供を呼びかけるなどの対策をなぜ取らないのか。賠償額を抑えようとしていると思わざるを得ない」と憤ります
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東電の追加賠償受け付け開始半年 支払い完了まだ2割、48万人の現住所把握せず 賠償完遂危ぶむ声も
                        河北新報 2023年10月11日
 東京電力福島第1原発事故の国の賠償基準「中間指針」見直しに伴う追加賠償を巡り、東電が請求の受け付けを始めてから10日で半年となった。支払いが完了したのは対象者148万人の2割にとどまる上、東電が現住所を把握していない対象者は約48万人と3割強に上る。避難者からは賠償の完遂を危ぶむ声も上がる。(福島総局・岩田裕貴、佐々木薫子)

臨時窓口の開設を知らせる東電の折り込みチラシ
 追加賠償の進捗(しんちょく)状況、9月27日に開かれた原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)で東電が示した。
 賠償の受け付けを始めた4月10日から9月26日までに約76万人(51・4%)から請求があり、支払いが終了したのは約30万6000人(20・7%)担当者は停滞の理由について「請求書の記入内容の不備や委任状など追加書類の提出などで、何度かやりとりするケースがある」と説明する
 追加賠償は、手続き開始直後から電話回線や窓口が混雑し、請求書の誤発送もあった。東電は臨時窓口を新設し、賠償業務の人員を順次1800人増やして対応を強化。11月までにさらに300人を増員し、住所を把握できた対象者には本年度中の支払いを目指す。
 原賠審で東電は、住所を把握せず、本人からも請求がない対象者が約48万人いることも明らかにした。事故後の転居先を確認できない例が多いという。
 福島県によると、対象者の氏名や住所などの情報は、各市町村から県を通して東電に提供するのが基本的な流れ。東電は自社のデータと照合し、一致すれば請求書を発送する。
 富岡町は東日本大震災発生当時の住民登録の情報に加え、町に届け出のある避難先の情報も提供する。賠償を望む町民に確実に請求してもらうのが目的。東電には、届け出先に請求書を発送するよう伝えているという。

 一方、避難指示がなく、自主避難者らが追加賠償の対象になる福島市では、住民票を他市町村に移し、市でも把握できない対象者が一定数いる。約10年前の前回賠償で情報提供した対象者は約29万人だったが、今回は約20万人に減った。
 原発事故で農業や商業など生業を奪われた福島県民らによる福島訴訟(なりわい訴訟)原告団の中島孝団長(67)は「国を通じ、避難先の自治体から情報提供を呼びかけるなどの対策をなぜ取らないのか。賠償額を抑えようとしていると思わざるを得ない」と憤る
 原告団は11月にも東電に改善を要望する予定。6月に続き、再度の要望となる。東電は「自治体広報誌への折り込みチラシやホームページなどで広報を続ける」と説明している。