2023年10月30日月曜日

築地で99%が「福島産の魚 買います」、拒否反応なく応援したいと

 福島県漁連が東京・築地で14日に開いた「常磐もの」のPRイベントで行ったアンケート(対象者801人)で、来場者の99%が県産の魚が売られていたら「購入する」と答えました。

 また築地魚市場卸協同組合理事長早山豊氏は、三陸・常磐ものの価値高く評価されていてアルプス処理水放出後もイメージは変わらず、卸先のすし店や飲食店から特に拒否反応もなくむしろ積極的に使って応援したいという動きが広がっていると語りました。
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東京・築地で99%「福島産の魚、買います」 処理水放出に理解浸透
                           毎日新聞 2023/10/29
 福島県漁業協同組合連合会(県漁連)が東京・築地で14日に開いた「常磐もの」のPRイベントで行ったアンケートで、来場者の99%が県産の魚が売られていたら「購入する」と答えた。2017年から継続している調査で、東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出後では初めてだが、県産の魚への支持の固さが改めて示された。【柿沼秀行】

◇県漁連「安全性の理解再確認」
 いわき市で26日にあった県地域漁業復興協議会で報告された。アンケートは12回目。801人に聞き、「県産の魚が売られていたら購入しますか?」の問いに、789人が「はい」と回答した。理由は、「おいしいから」45%▽「支援と思い」15%▽「産地は気にしていない」32%――など。4月の前回も、同じ質問で97%が「はい」と回答しており、海洋放出の前と後でも高評価が続いている。
 また、県内で水揚げされた魚は放射性物質の検査を通ったもののみ出荷されていることについて「知っている」との回答は79%を占め、前回の69%を上回った。担当者は「来場者はもともと常磐ものに理解がある人たちだと思うが、安全性が理解されていることが再確認された形だ」と受け止める。
 イベントでは、県産のカツオの刺し身、メヒカリの唐揚げ、メヒカリの握りを試食として提供。準備した1100食が時間内になくなったという。アンケートの意見・要望欄には「歯切れの良さと味におどろいた」「鮮度の良い魚が売っている場所が分かれば、常磐ものを買う」「応援しています」などの声が寄せられた。一方で、わずかながら「小さい子供には食べさせたくない」など否定的な声もあった。
 8月24日に処理水の放出が始まってから、東電は第1原発周辺の海域でモニタリングを強化しており、これまでに検出された放射性物質トリチウムはほとんどが検出限界値を下回っている。水産庁が県沖で実施している調査でも、ヒラメなどの魚のトリチウム濃度は検出限界値未満となっている。


拒否反応なし、応援したいという動きも
<流通のいま~処理水放出2カ月(上)東京魚市場卸売協同組合理事長・早山豊氏に聞く>
                           河北新報 2023/10/30
 東京電力福島第1原発にたまる処理水の海洋放出が8月24日に始まり、2カ月が経過した。「三陸・常磐もの」と呼ばれる東北の水産物を中心に風評被害が懸念される中、生産地と消費者をつなぐ流通の現場にはどんな影響があるのか。卸売り、小売り、経済団体のトップらに現状と生産地を守る決意を聞いた。
  【グラフでみる】豊洲市場の県別水産物の価格推移 ⇒グラフは5/5に
                            (東京支社・古賀佑美)

はやま・ゆたか 1972年、東京都中央卸売市場築地市場水産物部のマグロ仲卸業者「早山商店」入り。2007年、「大作早山商店」に称号を変更し、社長に就任した。17年1月に東京魚市場卸協同組合理事長、同7月に全国水産物卸組合連合会長に就いた。73歳。東京都出身。

■風評介入させぬ
 -処理水放出後、東北の水産物への風評は起きているか。
 「影響は出ていない。われわれは2011年の東日本大震災から風評の問題に取り組んできた。元々、三陸・常磐ものの価値を高く評価していたので、処理水放出後もイメージは変わらない。卸先のすし店や飲食店から特に拒否反応もなく話題にも上らない状況だ。最近は、これまで福島の水産物を扱っていなかった西日本からの問い合わせも増えた。むしろ積極的に使って応援したいという動きが広がっている

 -処理水の安全性についてどう見るか。
 「安全性の是非を言える立場ではない。市場に入っているものは安全というのが大前提。それ以上でも、それ以下でもない。質の良いものを選ぶのが仲卸の仕事。どこの海で取れても公平・公正に取り扱う。風評を一切介入させない決意だ。むしろ、漁業者がしっかりと魚を扱うことが重要だろう。生産地で鮮度を保つ作業をきちんとする方が市場価値は上がる」

■無言の意思表示
 -東京・豊洲市場内で三陸・常磐ものをPRする「夢市楽座」を設けた。
 「市場の活性化と被災地支援を目的に始めた。(国内最大の)豊洲市場で企画する意味は大きい。多い日は1日約200人が来場する。消費者には処理水に懸念もあると思うが、魚のプロが普通に扱う姿を見てもらえば、不安は少しでも解消されるのではないか」
 「プロの目利きが選んだ質の高い三陸・常磐ものを食べてもらい、魚食の普及にも一役買いたい。日本人が日本の海を大事にし、主体的に守っていく気持ちに結び付けばいい。スペースは小さいが、名前の通り夢は大きく描いている」

 -中国が日本産水産物の輸入を全面停止した。政府への要望は。
 「食のことが政治問題に絡んでいるのが一番、頭の痛いところ。われわれが政治に入り込んで言う立場ではないと思う。日常的に仲卸という仕事をきちっとやることで、無言の意思表示をしているつもりだ」

■東北4県の水産物、豊洲市場で価格下落せず
 東京都江東区の豊洲市場の9月の出荷地別取り扱い実績によると、青森、岩手、宮城3県の水産物の平均価格は前月より上昇し、福島は全国平均を上回った。処理水の放出後、目立った下落は見られなかった。
 平均価格は青森が前年同月比28円増の1760円、岩手は247円増の1288円、宮城は12円増の1356円、福島は増減なしの1563円だった。
 全国平均を基準値(0)とし、各県の平均価格との差を比率で見た推移はグラフの通り。青森はマイナス19・6%からプラス19・6%へ大幅に上昇した。マイナス幅は岩手が24・6%から12・5%、宮城が20・0%から7・9%に改善。福島はプラス幅が8・7%から6・2%に減った。
 豊洲市場で水産物を扱う仲卸業者が集まる東京魚市場卸協同組合は今年7月、岩手、宮城、福島3県の水産物を一般向けに販売する「三陸常磐 夢市楽座」を市場内に開設した。消費拡大と水産物のPRに取り組む。来年2月末まで第1、第3土曜日に開催する