2023年10月23日月曜日

川内原発の運転期間延長、鹿児島県が安全性などを独自検証

 九州電力川内発1、2号機の運転期間延長(最大60年への)の認可を巡り、鹿児島県は、7人の分科会を作って「原発の安全性と避難計画(の実効性)」を独自に検証し、規制委による点検は適正であると結論づける一方で、新しい検査手法の開発など「留意事項」も付けました。国や九電任せとならないようにということで、県は上述の分野の検証を引き受けたということです。
 県の分科会は原子炉の20年後の健全性を「規制委がどのように確かめたのか」との疑問を出していたので、留意事項は「その検査手法の開発」かも知れませんが、記事はその点については言及していません。肝心な20年後の「原子炉の健全性」の根拠が不明なまま、延長が認められることには納得できません。
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川内原発の運転期間延長、鹿児島県が安全性を独自検証…県民投票求める声も
                           読売新聞 2023/10/22
 九州電力川内原子力発電所1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の運転期間延長の認可を巡り、原子力規制委員会の審査が続く中、鹿児島県は、国や九電任せとならないよう専門チームを作って安全性を独自に検証した。県民への理解促進などが狙いで、規制委の結論が年内にも出るのを待って対応を判断する。ただ、県民投票実施を求める声も強く、対応が注目される。(小園雅寛)

 「原子力規制委員会の審査内容やその結果、県の要請に対する規制委と九電の対応、県議会での議論の状況などを踏まえて県としての考え方を整理したい」
 塩田康一知事は先月8日の県議会冒頭、課題報告の中で運転延長に対する自身の考えを改めて述べた。知事は、同様の発言を繰り返しており、県幹部は「判断材料がそろうのを見極めている状況だ」と解説する。
 原発の運転期間は、2011年の東京電力福島第一原発事故を受けて改正した原子炉等規制法で原則40年と定められ、規制委が認めれば最長20年延長できることになった。今年5月には関連法が成立し、今後「60年超」の運転が可能となる。
 九電は昨年10月、川内1号機が24年7月、2号機が25年11月に運転開始40年となるため、20年延長する認可を申請。手続きの一環で申請前に行ったのが「特別点検」だ。延長できるかを見極めるため設備の破損や劣化状況を調べるもので、運転60年時点でも健全性が確保されると評価した。
 特別点検の結果を含めた審査は規制委が行う。期間は1年程度とみられるが、こうした中で県が行ったのが専門チームでの特別点検内容の検証だ。担ったのが県が常設する「原子力安全・避難計画等防災専門委員会」。川内原発の安全性を検証し、県民に情報開示する機関で、原子炉材料工学や地震工学などの専門家7人からなる「分科会」を設立して点検が適正に行われたかを技術的に検証した
 延長の手続きは再稼働と異なり、知事と自治体の同意は必要ない。分科会は他県に先駆けた動きで、県は独自の検証で住民理解を促進させようと考えた。今年4月まで12回の会合を開き、九電担当者らに聞き取りなどを実施。原子炉格納容器の目視試験では、技術者の視力や色覚の確認方法まで質問し、点検内容の正確性などを精査した。その結果、点検内容は「適正」としたが、新しい検査手法の開発など「留意事項」も付けた。

 40年超が認められた原発は現在4基で、川内原発が認可されれば九電管内で初めてとなる。今後運転60年超の原発が各地で増える可能性があり、塩田知事は20日の定例記者会見で「県の考えを事業者に伝えることが必要だ」と述べ、手続き上必要なくても、県としての考えを表明する意義を説明した。
 一方、県が進めた検証の傍ら、住民団体の動きが活発化した。延長の賛否を問う県民投票条例制定を求めた署名活動では、法定数(有権者の50分の1)を2万筆上回る約4万6000筆が集まった。今月4日には塩田知事に条例制定を直接請求。向原祥隆事務局長は「署名数は目標をはるかに超えた。投票実施で県民の声を聴くべきだ」と話す
 県議会では臨時会で条例案を審議し、26日にも採決する。定数の3分の2を占める自民党議員からは「県民を代表する意思決定機関は県議会。県民投票で決めるのは疑問」との声があり、否決される公算が大きい。