2023年10月21日土曜日

アルプス処理水、不可解な日本企業社員逮捕など 「日中関係の緊張はエスカレート」と豪研究機関

 オーストラリア国際問題研究所は今週、日本と中国両国の政治・外交交渉は行き詰まっていると分析しました
 日中間では、現下の福島第1原発アルプス処理水放出問題での論争に加え、3月に中国駐在のアステラス製薬の50代の日本人男性社員がスパイ容疑で拘束された事件で、10月に入り中国当局が男性を正式に逮捕するなど、緊張はますますエスカレートしています
 8月には麻生太郎自民党副総裁訪台して中国と戦争状態に入る可能性に言及しただけでなく、王毅外相は19日、「日本は台湾問題でたびたび一線を越え、両国関係の政治的基礎を損なっている」とし、岸田首相が、「ウクライナで起きたこと東アジアでも起こり得る」として、中国の台湾侵攻の可能性について度々言及してきたと指摘しました
 何故国のトップが隣国をそんな風に悪しざまに言って憚らないのか、考えてみれば不思議なことです。もはや米国以外の国との関係はどうなったもいいと言わんばかりです。
 アルプス処理水の海洋放出問題でも、日本政府は中国の了解を得ることなく実施した上で、「放出しても無害なのだから中国はそれを認めるべきだ」という態度です。これでは「海洋放出は周辺国の了解を得て行うべき」としているI AEAの原則にも反しています。
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福島処理水、不可解な日本企業社員逮捕など 「日中関係の緊張はエスカレート」豪研究機関
                    The News Lens Japan 2023/10/20
オーストラリアの民間研究機関「オーストラリア国際問題研究所」は今週、日本と中国の長期にわたる歴史問題や領有権をめぐる論争など、両国の政治・外交交渉は行き詰まっていると分析。それに加え、福島第1原発の処理水放出や、中国駐在の日本人社員がスパイ容疑で不可解な逮捕をされるなど、日中関係の緊張はますますエスカレートしている。

豪州の有力シンクタンク「オーストラリア国際問題研究所」は、「8月に日本が福島第1原子力発電所からの処理水放出を決行したことで、新たな騒動が勃発した」と切り出した。処理水放出は国際原子力機関(IAEA)によって承認され、科学的根拠をもとに安全であるとされたが、中国政府はIAEAの評価を受け入れず、激しい日本批判を繰り広げている。
ただ、同研究所は「中国や韓国、台湾をはじめ核施設を持つ多くの国が放射性トリチウムを海洋に放出していることは周知の事実だ」と指摘した。
にもかかわらず中国側は、太平洋が〝日本の私設下水道〟として利用されていると主張。中国政府は〝食品の安全性〟への懸念を示し、全ての日本産水産物の輸入を停止。経済的影響と日本の水産物市場の価格下落を招いた。函館税関が19日発表した9月の道内貿易概況によると、道内から中国向けの「魚介類・同調製品」の輸出額はゼロだった。

外交上の争い以外にも、中国のソーシャルメディアでの荒らし行為や無数の迷惑電話が日本の政府機関や企業を襲っている。中国共産党系タブロイド・環球時報は日本を「ならず者国家」と呼んだ。日本政府は今後も処理水放出を実施するため、同研究所は「この問題は今後もくすぶり続ける」とした。
そんな中、北京でアステラス製薬の50代の日本人男性社員がスパイ容疑で拘束された事件で、中国当局が男性を正式に逮捕したことが19日分かった。松野博一官房長官は記者会見で男性が10月中旬に逮捕されたことを確認していると述べた。
日本政府は早期解放を呼びかけてきたが、中国側は応じなかった。そのため、中国で邦人の安全確保が難しい現状が改めて浮き彫りになり、日本企業が中国への進出や投資を抑制する影響が出るのは避けらず、日本で中国渡航を自粛する動きが広がることが予想される

中国外務省の毛寧副報道局長は19日の記者会見で、詳細な情報提供を求める質問に対し、「中国は法治国家であり、法に基づいて事件を処理する」と述べるに留まった。
逮捕された男性は3月の帰国直前に「反スパイ法と刑法に違反した」として国家安全当局に拘束され、北京の収容施設で監視下に置かれた。正式逮捕するかどうか当局が判断する刑事拘留の措置を取ったと中国側は日本政府に9月に伝え、司法手続きが進んでいた。今回の逮捕により、男性は今後起訴され、裁判が行われるとみられる。
そんな状況下、日本は近隣国との関係が近年どの時期よりも戦略的に最も困難で危険であるかを認識しているとオーストラリア国際問題研究所は指摘。北朝鮮やロシアとの関係悪化に加え、力による一方的な現状変更は日本の安全保障に大きな影響を与えることから、台湾に対する中国の動きは特に懸念されている。
その一環として、ここ数か月、8月の麻生太郎自民党副総裁の訪台を含め、多くの日本の有力政治家が台湾を訪れている。その中でも、麻生氏の「戦う覚悟」発言など、中国抑止への呼びかけは、日本が中国の脅威を真剣に受け止めているという強いシグナルになり、それは日本が防衛予算を大幅に増額し、軍備増強の取り組みにつながっていると同研究所は解説した。
一方、中国の王毅外相は19日、「日本は台湾問題でたびたび一線を越え、両国関係の政治的基礎を損なっている」とし、日本のそうした動きをけん制。また、岸田首相はウクライナで起きたことが東アジアでも起こり得ること、つまり中国の台湾侵攻の可能性について度々言及してきた。同研究所は、こうした展開が中国を激怒させ、関係をさらに悪化させたとしている
同研究所は、「中国は8月に予定されていた連立与党・公明党の山口代表の訪中さえ中止したため、近い将来、首脳レベルの会談が行われる余地は残されていない。注目すべきことに、公明党は1970年代以来、日中間の重要な対話者だったからだ」と説明した。