2024年2月10日土曜日

8月再稼働予定の「島根原発2号機」「避難計画の抜本的見直しを」専門家が指摘

 山陰中央テレビが、島根原発の再稼働に関連して、能登半島地震を教訓にして専門家が「避難計画の抜本的見直し」を指摘したと報じました。
 別掲の記事にあるように、能登半島地震で明らかにされたのは、志賀原発の避難計画が「絵に描いた餅」「机上の空論」だったということでした。
 また5~30キロ圏内の住民については先ず「屋内退避」をするとなっていることに関しては、家屋倒壊の恐れや(海岸沿いのエリアでは)津波襲来の恐れがあるので実行不可能で根本的に見直す必要があるということです。
 ところが規制委山中伸介委員長「屋内退避を開始するタイミングや退避から避難に移行するタイミングについて検討するということで、原子力災害対策指針そのものを見直さないといけないとは考えていない(要旨)と述べました。そんなことでこの問題が解決する筈はありません。一体何を考えているのか、委員としての適格性に疑問を持たざるを得ません。
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8月再稼働予定「島根原発2号機」専門家が指摘「避難計画の抜本的見直しを」能登半島地震の教訓に
                       TSK山陰中央テレビ 2024/2/7
シリーズでお伝えしている能登半島地震の教訓と備え。
最終回の2月7日は原発についてです。
石川県の志賀原発でもトラブルが相次いだほか、周辺の道路が寸断されるなど避難計画の実効性が問われる事態となりました。
8月に再稼働を予定する島根原発2号機、安全への備えについて改めて考えます。

最大震度7を観測した石川県志賀町にある北陸電力の志賀原発。
1号機、2号機とも運転停止中で、再稼働に向けて安全審査が進んでいる最中でしたが、変圧器が破損したことで油漏れが起きたり、外部電源の一部が使えなくなるなどトラブルが相次ぎました。

2023年8月に再稼働を目指す中国電力の島根原発2号機。
再稼働に向け、運用体制のルールを定めた「保安規定」の審査が続く中、災害や事故への対応力を日々チェックしているのが松江市にある原子力規制庁の事務所です。
原子力規制庁島根原子力規制事務所・岡村龍樹所長:
「フリーアクセスを行うようになっていて、自分(規制庁職員)が検査したいものがあれば、事業者に事前連絡をすることなく、現場に自らが出向いて検査を行える」
規制庁の検査は、中国電力への事前連絡なしに行う抜き打ちが原則で、防災機材を確認したり訓練が適切に行われてるかなどをチェックしています。
原子力規制庁島根原子力規制事務所・岡村龍樹所長:
「原子力安全を達成するためにはどうすればいいか、安全の文化の欠如が見られるところがあれば指摘して事業者の考えを確認する」

再稼働に向けてこうした国の安全審査とともに重要になってくるのが、周辺自治体が策定する万が一の事故の際の周辺住民の避難計画です。
能登半島地震では避難計画の実効性が揺らぐ事態も起きました。
志賀原発の避難ルートに指定されている11本の道路のうち、7本で通行止め。
さらに避難対象となる30キロ圏内では、8地区・約400人が一時孤立状態に。
家屋倒壊などで、原発事故の際に想定される屋内退避そのものができない状況も起きました。

原子力規制委は避難計画のベースにもなる「原子力災害対策指針」について見直しに向けた議論を、2月中旬にも始めるとしていますが…。
原子力規制委員会・山中伸介委員長:
特に屋内退避の運用について見直さなければならないということ、原子力災害対策指針そのものを見直さないといけないとは考えていない

見直しの対象となるのは「屋内退避」を開始したり解除したりするタイミングで、大幅な変更はない見通しです。

石川県と同じく半島地域を抱える島根県。
避難経路となっている道路の寸断など同様の被害を想定した対応力強化は必要とする一方、規制委の方針も踏まえ、避難計画に大きな変更は必要ないとしています。

島根県原子力防災対策室・神村好信室長:
「基本は今の避難計画でも対応できるという認識、それでも道路が通れない、避難をしないといけない孤立しているという場合は、実動組織の支援をいただきながらヘリを使った空路での避難、漁港港湾を使った海路での避難をする」

県は陸路が寸断された場合、自衛隊などの協力を得て、ヘリなどを使った避難も行うとしています。
ただ、原発の避難計画に詳しい東京女子大学の広瀬弘忠名誉教授は自衛隊の協力を得て迅速な避難活動が行われるかは不透明だと指摘します。
東京女子大学・広瀬弘忠名誉教授:
捜索と救助がきちんとできるようなシステムができていない能登半島地震で自衛隊の投入が遅れたように、なかなか決断ができないのが問題

加えて、広瀬名誉教授は現在の「原子力災害対策指針」に基づく各自治体の避難計画は迅速な意思決定ができないとして、抜本的な見直しが必要と訴えます。
東京女子大学・広瀬弘忠名誉教授:
「(今の避難計画は)何段階ものステップを踏んで避難が実現するという状況がある役人的な発想である。意思決定のスピードと実行力がないのが問題もっと柔軟なシステム、これがダメならこれを使うといった意思決定が迅速にできるようなシステムの設計が必要

半年後の2024年8月、12年7カ月ぶりに稼働する見通しの島根原発2号機。
「想定外」をどこまで「想定内」に組み込めるのか。
改めて実効性のある対策が求められています。