2024年2月5日月曜日

岸田内閣は志賀原発廃炉決定へ(植草一秀氏)

 植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
 原子力規制委は原発の直下に活断層がなければ原発は再稼働できるという立場ですが、植草氏によれば実際の地震の半数は活断層として知られていないところで起きているということです。淡路神戸大震災、東日本大震災がそうでした。
 大地震では2000ガル以上が大半であるのに対して日本の原発は、一部の例外を除くと1000ガルを基準地震動(設計基準)としており、志賀原発も同様です。
 それに対して能登半島先端地域では20年から群発地震が発生し、21年9月にマグニチュード51、最大震度5弱の地震が22年6月にマグニチュード54、最大震度6弱の地震マグニチュード50、最大震度5強の地震が立て続けに起き、23年5月にマグニチュード65、最大震度6強の地震が発生しました。それに加えての今回の地震です。
 志賀町は今回の地震で2828ガルが掛かったことを即座に明らかにしましたが、志賀原発はいまだに加速度の全容を明らかにしていません。
 能登半島の近傍の海底の地震源の長さについては、これまで96キロとしていましたが、約150キロに及ぶことも国の機関が明らかにしました。基準地震動の見直しが必要です。
 それに加えて避難路の国道が数十か所で寸断されました。これは決定的な事態で原発事故時に避難が出来ないことが証明されました。この1点で原発の再稼働は不可能です。
 原子力規制委はこれまでの敷地直下の活断層の有無だけを再稼働可否の基準にしたやり方を改めるべきでしょう。
 植草氏は
志賀町に立地する志賀原子力発電所の危険性は鮮明である。政府は速やかに志賀原子力発電所の廃炉を決定すべきである。日本が今回の事例を教訓にして原発問題に向き合わなければ、早晩天誅が下されることになるだろう」と述べています。
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岸田内閣は志賀原発廃炉決定へ
                植草一秀の「知られざる真実」 2024年2月 3日
1月1日に発生した令和六年能登半島地震。
日本の防災対策の杜撰さと日本における原発稼働が合理性を持たないことを立証するものになった。日本は2011年3月の東日本大震災に連動する重大な原発事故を経験している。
この経験が日本における原発稼働の非合理性を証明する事象だった。

「歴史に学ばぬ者は歴史を繰り返す」という言葉がある。
日本は歴史に学ばず、歴史を繰り返そうとしている。
日本の国土面積は世界の0.25%しかないが、この日本で世界の地震の1割から2割が起きている。

他方、原発の耐震性能は一部の例外を除いて1000ガルが上限である。
原発を建造した時代、関東大震災は震度7で、ガル数としては350ガルないし400ガル程度だろうと思われていた。
しかし、阪神淡路大震災後に全国各地に地震計が設置された結果、現在では震度7は1500ガル以上に相当するということが科学的に判明している
つまり、現在の原発はまったく見当違いの低い耐震性で設計建設されてしまっている

今回の地震で最大震度7が観測されたのは石川県志賀町と輪島市。
志賀町では2828ガルの最大加速度が観測された。他方、志賀原子力発電所の基準地震動(耐震性能)は1000ガルである。
志賀原発が運転停止中であったために大惨事を免れたと言える。

地震で最大被害を受けた珠洲市には原発建設計画があった。
珠洲原子力発電所が実現し、珠洲原子力発電所が運転中であったら、いかなる惨事が発生していたか。
今回の地震で志賀原発では重大事故が発生している。志賀原発では1号機地下で震度5強の揺れが観測された。
この地震で変圧器が故障して油が漏れ、外部電源5回線のうち2回線が使用不能になった。
1月16日の余震後には1号機の非常用発電機3台のうち1台が試運転中に自動停止した。

京都大学原子炉実験所元助教の小出裕章氏は中日新聞のインタビューで次のように指摘する。
「志賀原発が10年にもわたり停止していたことが何より幸いだった。
原発の使用済み燃料は発熱しているが、10年たつと発熱量は運転停止直後に比べ、千分の1以下に低下する。
今回の地震で志賀原発は外部電源の一部系統が使えなくなり、非常用発電機も一部停止した。
稼働していたら、福島第1原発と同様の経過をたどったかもしれない。」
志賀原子力発電所は極めて重大な事態に直面した可能性が高い。

小出氏は原発運転中の地震災害に関して次の点を指摘する。
出力100万キロワットの原発の場合、原子炉の中では、ウランが核分裂して3倍の300万キロワット分の発熱をしている
大地震の際は制御棒を入れて核分裂反応を止めるが、実は300万キロワットのうちの21万キロワット分の発熱は、ウランの核分裂で出ているわけではない。
それまでに生成された「核分裂生成物」が原子炉の中に膨大にたまっており、「崩壊熱」を出している。
制御棒でウランの核分裂反応を止めても、21万キロワット分の崩壊熱は止められない
膨大な発熱だ。
福島でも核分裂反応は止まったが、崩壊熱を止めることができないまま、電源が何もなくなり、冷やせないために炉心が溶けて、(放射性物質が)大量に出てしまった。」
運転停止から10年が経過した原発と、運転中の原発との間には比較にならない大きな差が存在する。

能登半島先端地域では2020年から群発地震が発生し、2021年9月にマグニチュード5.1、最大震度5弱の地震が発生。
その後も、2022年6月にマグニチュード5.4、最大震度6弱の地震、マグニチュード5.0、最大震度5強の地震が立て続けに発生した。
さらに、2023年5月にマグニチュード6.5、最大震度6強の地震が発生した。
これらの地震の震源は能登半島先端地域に集中していた。

ところが、今回の地震で震源域が珠洲市から志賀町にかけての150キロにも及ぶ沿岸域に広がった。このなかで志賀町を震源とする地震が急増している。
志賀町に立地する志賀原子力発電所の危険性は鮮明である。
政府は速やかに志賀原子力発電所の廃炉を決定すべきである。
日本が今回の事例を教訓にして原発問題に向き合わなければ、早晩天誅が下されることになるだろう。

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