9月の台風で、日本原子力研究開発機構の大洗研究所の冷却塔(高さ17m)が倒壊した原因は、建物の木製の筋交いが腐食していたためであることが分かりました。冷却塔は設計基準のおよそ半分の風速(30m/秒)で倒壊しました。
冷却塔は多湿の状態で運転されるものなので、建設後51年も経てば木製の筋交いが健全である筈がありません。起こるべくして起きた事故で人身事故が起きなかったのは幸いなことでした。
原子力機構によると全国で89の施設が老朽化し、その7割が建設から40年以上たっているということです。人身事故が起きる前に早急に対処すべきです。
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原子力関連施設の全壊 木製筋交いの腐食が原因 老朽化対策課題
NHK NEWS WEB 2019年12月18日
ことし9月の台風で全壊した茨城県にある原子力関連施設について、日本原子力研究開発機構は、建物の木製の筋交いが腐食していたため設計基準の半分の風で倒れたとする調査結果をまとめました。原子力機構にはほかにも昭和の時代につくられた施設が多く残り、老朽化対策が課題となっています。
茨城県大洗町にある原子力機構の大洗研究所では、ことし9月の台風15号で研究用原子炉を冷却する高さおよそ17mの建物が全壊しました。
当時、敷地内の最大瞬間風速はこの建物の設計基準のおよそ半分の30m余りしかなかったことから、原子力機構で倒壊の原因を詳しく調べていました。
その結果、建物を支える木製の筋交いの一部が腐食していたことが分かり、それを基にシミュレーションしたところ、基準を下回る風で倒壊することが確認されたということです。
施設は昭和43年に完成し51年がたっていて、すでに廃止が決まり放射性物質はありませんでしたが、外壁にアスベストが含まれ、倒壊時、微量が飛散したおそれもあります。
定期的に点検はしていたということですが、木材の表面が金属に覆われていたため腐食に気付かなかったということです。
原子力機構によりますと、全国で89の施設が老朽化し、その7割が建設から40年以上たっているということで、今後、点検方法の見直しなど再発防止策を検討したいとしています。
限られた予算 老朽化対策が課題
国立研究開発法人の日本原子力研究開発機構は
▽昭和31年に設立され原子力の基礎研究を進めてきた原研=「日本原子力研究所」と、
▽昭和42年に設立され新型の原発の開発などを担ってきた動燃=「動力炉・核燃料開発事業団」の後継の組織が統合してできた組織で、原子力導入時期の昭和の古い研究施設が多く残っています。
茨城県のほか、福井県、岡山県、兵庫県、岐阜県、福島県、青森県、北海道に研究所などの拠点を持ち、原子力機構によりますと、ことし4月時点で老朽化が進んでいる施設の数は89あるとしています。
このうちのおよそ7割がすでに建設から40年以上たっているということです。
原子力機構の関係者によりますと、古い施設の点検や解体などは順次進めているとしながらも、限られた国の予算の中では手当てできる費用にも限界があるなどとしていて、今後こうした古い施設の老朽化対策をどう行っていくかが課題になります。