仏大学のオリビエ・エブラール氏らは福島原発事故で放出された放射性物質についての調査報告で、地面の表層5センチを剥ぎ取る除染工事で放射線レベルは著しく低下したものの、汚染地の4分の3を占める森林地帯の除染は手つかずで問題として残っているとし、「何らかの対処を講じない限りセシウム137は300年にわたって環境中に残存する可能性があり、中長期的には、住民らにとっての最大のリスクとなる」と指摘しました。
現実にこの秋の豪雨で山地から平場に汚染水が流れ落ちた結果、放射能で河川や平場が汚染されたことが確認されています。
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福島原発事故の除染、放射線レベル低下も森林に「問題残る」 調査
AFP 2019年12月13日
【12月13日 AFP】2011年の巨大地震と津波で破壊された福島第1原子力発電所の事故で放出された放射性物質についての調査報告が12日に発表され、除染作業によって放射線レベルは著しく低下しているものの、未作業の森林地帯はまだ問題として残っていることが指摘された。
福島第1原子力発電所事故では、放射性物質が広範囲にわたってまき散らされた。これを受けて日本の関係当局は、汚染度が特に高い土地約9000平方キロを除染作業の対象範囲とした。炉心溶融(メルトダウン)を伴う重大な原子力事故は、1986年にチェルノブイリ(Chernobyl)原発でも起きている。
除染作業では、土壌の最上層を深さ5センチにわたって削り取る必要がある。科学誌「ソイル(Soil)」に掲載された除染作業の調査に関する報告によると、最も多くみられる放射線源のセシウム137は、この作業によって約80%減少することが明らかになっているという。
論文の筆頭執筆者で、仏ベルサイユ・サン・カンタン・アン・イブリーヌ大学(University of Versailles Saint-Quentin-en-Yvelines)気候科学環境研究所の研究者、オリビエ・エブラール(Olivier Evrard)氏は、この除染方法について、容易にアクセスできる領域においてはセシウム137の処理に有効であることが判明していると述べる。
同氏はまた、「何らかの対処を講じない限り(セシウム137は)300年にわたって環境中に残存する可能性がある。中長期的には、住民らにとっての最大のリスクとなる」とも説明している。
ただ、除染には多額の資金が必要となるほか、汚染土の保管場所も考慮しなければならない。そして最大の懸念事項は、これまでの除染作業が耕作地や他の容易に立ち入り可能な土地に限られており、汚染地域の約4分の3を占める森林地帯がほぼ手付かずのままになっている点だ。
研究チームは、放射性物質がゆっくりと流出するこうした森林について、この先何年も放射性物質の貯留地として実質的に機能することが考えられると指摘する。
また、現時点において広大な森林を対象とする除染作業計画は存在しておらず、今回の調査によってこの問題に対処するための「協調的行動の(中略)必要性が浮き彫りになった」と述べている。