安倍首相がIOC総会で、福島原発の汚染水問題は「コントロール下にある」、「汚染水は原発港湾内に完全にブロックされている」と述べたことに対して、13日、民主党の会合に出席した東電幹部(山下和彦フェロー)は「今の状態はコントロールできているとは思わない」と述べて否定しました。
その食い違いを問われて政府はいま、事態の沈静化に躍起になっているということです。
しかし国民周知の事実を、ああまであからさまに否定した首相の発言を巡って、上手い収拾策があるとはとても思えません。強権をもって東電幹部の発言を取り消させるというようなことで解決するものでもありません。国民が等しく心配して、世界も重大な問題として一方ならぬ関心を示している汚染水の海洋流出問題が、そんなことで片付く筈がないからです。
それにしても7月23日に東電が汚染水の流出を認めたのを受けて、8月7日に首相が「これからは国が前面に立って解決する」と述べたときには、汚染水問題の深刻さを理解していたのではなかったのでしょうか。
IOC総会という公式な場であのような発言をすれば、当然今起きているような事態が生じるという予見はなかったのでしょうか。何とも理解に苦しむことです。
みんなが大変な事態であること知っていることなのに、いくらなんでも「もう解決済みのことだ」などと取り繕うことはできません。そんなことをすればまさに現代版の「裸の王様」の再演です。それだけはあり得ないことを政府は良く認識すべきです。
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汚染水制御 東電幹部が首相発言否定 政府、沈静化に躍起
東京新聞 2013年9月14日
菅義偉(すがよしひで)官房長官は十三日午後の記者会見で、東京電力幹部が福島第一原発の汚染水問題を「コントロールできていない」と発言したことに関し、「貯水タンクからの汚染水漏れなど個々の事象は発生しているという認識を示したものだ」と説明した。同時に「放射性物質の影響は発電所の港湾内にとどまっている」と、状況は制御されているとの考えを強調した。
菅氏が、東電幹部の発言の釈明に努めたのは、安倍晋三首相が二〇二〇年東京五輪招致演説で「状況はコントロールされている」としたことと食い違うため、事態がさらに深刻になりかねないと判断したためだ。
東電も十三日午後、菅氏の会見内容と同様のコメントを発表。「影響が外洋に及ばないようしっかりと対策を講じる」とした。
ただ、東電幹部が首相発言を全面否定しただけに、混乱が簡単に収まるはずがない。
民主党の海江田万里代表は十三日、汚染水問題について「コントロールできていないのが事実だと思う。重大な問題だ」と強調。首相の認識をただすため、閉会中審査の速やかな実施を要求。政府・与党が十月中旬の開会を想定する臨時国会の前倒しも求めた。
汚染水問題について、東電の山下和彦フェローは十三日、民主党の原発事故に関する対策本部の会合に出席。「今の状態はコントロールできているとは思わない」と述べた。