東電福島原発事故に伴って国で行っている除染事業で、自宅の除染は終わっている筈なのになかなか住民に報告されず、半年遅れくらいになるケースも多いということです。
国の職員が作業漏れがないかを一軒ずつ確認する作業に時間がかかるからだということです。その確認をする職員数はというと、国が除染する11市町村全体で9人だけで、総数が2500軒ある楢葉町でも担当は僅かに3人という具合です。
住宅周りの除染作業が済むと、業者が測定した線量・・・例えば「0.21マイクロシーベルト」などを記載した表示板が玄関に掲げられるのですが、住民は国から報告を受けるまで自宅の線量を知ることはできません。
除染に関しては、住宅周りを局部的に行うだけなので効果も疑問視され、環境省などが帰宅できるとしている基準は年間1mSvから大きく逸脱してるという問題があります。とはいっても住民にとっては、「除染」後に自宅がどういうレベルになったのは大きな関心事で、直ぐに知りたいのですが、それさえも満たされていません。
相次ぐ住民からの苦情を直接受ける市町村の職員たちは、「早く報告するよう、国に何度も要望している。作業が終わったことだけでも知らせてほしいのだ」と語っています。
国は復興と称して他の事業にもふんだんに予算を使い、除染についても1兆円以上の税金を投入しているのですが、ここでも一向に被災者に寄り添った施策になっていません。
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除染終了 報告来ない 「家の線量は?」戸惑う住民
東京新聞 2013年9月2日
東京電力福島第一原発事故に伴う国の除染事業で、自宅の除染は終わっているはずなのに、なかなか住民に報告されないケースが続出している。除染には1兆円以上の税金が投入されているが、作業を確認する国の職員が少ないからだという。除染の効果も疑問視される中、住民から苦情が相次いでいる。 (大野孝志、写真も)
福島県楢葉町(ならはまち)では、既に九百七十軒で除染が終わったが、その結果、自宅の放射線量はどう変わったのか、住民に知らされたのは十軒だけ。終了から半年後に報告された家もある。町役場には連日、住民から「報告してこないのか」との苦情や問い合わせの電話がかかっている。
「うちは四月下旬には終わったはずなのに、報告がない。今の放射線量も知らされず、安心して草取りもできない」。一時帰宅した農業松本広行さん(57)が語った。
松本さんが、役場から借りた線量計で自宅居間の放射線量を測ると、毎時〇・三マイクロシーベルト(一マイクロシーベルトは一ミリシーベルトの千分の一)あった。国が除染後の目安とする〇・二三マイクロシーベルトを超えていた。「除染しても線量が下がらないので、国は文句を言われるのを恐れて、報告を遅らせているのか」と疑念を口にした。
田村市の農業渡辺秀一(しゅういち)さん(57)の家も昨年十一月に作業が終わったのに、報告があったのは今年四月で、半年かかった。川内村でも二、三カ月かかっているといい、各地で住民への報告が遅れている。
作業期間中は、玄関先に除染を受注したゼネコン担当者が線量を書いた札を掲げているが、頻繁に一時帰宅する住民でなければ様子は分からない。
なぜ、速やかに除染結果が住民に知らされないのか。
除染事業を発注した環境省福島環境再生事務所に取材すると、職員が、作業漏れがないかを一軒ずつ確認する作業に時間がかかるからだという。
住宅除染が終わった田村市や川内村は、対象が百二十~百六十軒だったが、楢葉町はまだ終わっていない家も含めると二千五百軒ある。一方、確認をする職員は、国が除染する十一市町村全体で九人だけ。楢葉町の担当は三人と少ない。
楢葉町の職員は「早く報告するよう、国に何度も要望している。線量が完全に下がったという報告ではなく、作業が終わったことを知らせてほしいのだ」と語った。