2013年9月20日金曜日

首相が福島第1原発 全号機廃炉を指示

 安倍晋三首相19日福島第一原発を視察したのを機に、5号機と6号機を廃炉するよう東電に指示し首相に同行した東電の広瀬直己社長は年内に判断すると回答しまし。東電が廃炉を拒否することはないとみられています。
 また首相は記者団に対して、「国が前面に出て、私が責任者として対応していきたい」と強調し放射能の影響は湾内の0・3平方キロメートル以内の範囲において完全にブロックされている」とあらためて明言したということです(北海道新聞)

 廃炉が具体的に動き出したのは、廃炉決定後も10年間は電気料金で費用を回収できる会計制度を経産省年内にも実施することにしたためです。
 その骨子は(1)廃炉になっても引当金は運転停止後10年延長できる。(2)廃炉と決めても原子炉などの価値を認め減価償却できる。(3)福島第一で追加対策が必要になった場合、新たに作る設備の費用は減価償却を認める。そして新たに認めた引当金や減価償却費は、発電コストとして料金に上乗せできる というもので、東電の「経営破綻を回避する」ための、会計常識を無視した特別なルールAERA 2013年9月16日号)といわれています。

 茂木経産相は「福島第1原発では14号機の廃炉と汚染水対策集中する態勢を作るために5、6号機廃炉にする」と述べましたが、17日に日本共産党が提言したように、事態の解決のためには「東電を破綻処理」することが最も必要なことであり、そうすれば国民の経費負担もかなり軽減されます。
 政府がそのことに触れないのは、東電を破綻させれば銀行が困る株券は紙くずになる電力債の償還ができなくなる、東電に天下ったOBたちが困るからだといわれています。

 東電は首相の指摘を受けて、その他にも(1)廃炉への安全対策のため、現場の裁量で使用できる資金として2013年度から10年間で総額1兆円を追加で確保する 2)多核種除去装置の増強も含め、2014年度中に全ての汚染水の浄化を完了するよう取り組む、としています

 春に完成した筈の多核種除去装置9月中にようやく稼働できることになりましたが、それをさらに2基増設して浄化能力を1日1500~2000トン来年度中の浄化処理完了を目指すということです。
 しかしこれまで水処理装置は満足に動いたためしがないので、果たして目論見どおりに行くのか大いに懸念されます
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福島第1原発全号機廃炉へ、首相が東電に指示
ロイター通信 2013年9月19日
[東京 19日 ロイター] 安倍晋三首相は19日、東京電力福島第1原発を視察し5号機と6号機を廃炉するよう東電に指示した。首相に同行した東電の広瀬直己社長は年内に判断すると回答したが、拒否することはないとみられ、全6基の廃炉は確実だ。同原発を視察後、首相が記者団に語った。

首相の指示を受け、茂木敏充経済産業相は19日夕、経産省内で記者団の質問に応じた。茂木経産相は「福島第1原発では14号機の廃炉と汚染水対策が最優先課題。これに集中する態勢を作るために5、6号機の廃炉は妥当な判断」と述べた。

<廃炉会計整備が影響か>
1─4号機の廃炉方針については、事故発生から3週間後の2011年3月末、東電の勝俣恒久会長(当時)が意向を表明する一方で、5、6号機は再稼働の可能性が全くないにもかかわらず東電が廃炉を決定していないのは、引当金不足が影響しているとみられる。
経産省の試算によると、国内全50基の廃炉を決定した場合、業界全体で4兆4000億円規模の損失が発生し、東電を含め電力6社が債務超過に陥る。そうした事態に至る可能性はほとんどないとはいえ、活断層の有無の確認や巨大地震・津波への備え、安全性に関する最新の知見の反映などを求める新規制基準に基づく審査の結果、再稼働が不可能になり、まだ動かせるとみていた原発が「突然死」を迎えるリスクが従来に比べ高まっている。

そうした事態に備えるため、経産省はこの夏、廃炉決定後も10年間は電気料金で費用を回収できる会計制度を導入する方針を打ち出し、年内にも実施する方向だ。首相による5、6号機の廃炉指示も関連制度が整ったからといえそうだ。5、6号機の廃炉費用を電気料金に上乗せする場合の対応について茂木氏は、「新たな料金申請があった場合は、最大限の合理化努力をしているか厳正に審査したい」と述べた。
地元福島県の佐藤雄平知事や福島県議会は、第1原発6基だけでなく、約10キロ南に位置する福島第2原発1─4号機の廃炉も求めている。第2原発の扱いについて茂木氏は、「エネルギー政策全体での原子力の位置づけの問題など様々な観点での検討が必要。各事業者においてそれぞれの原発のあり方について判断する」と述べた。

<東電、10年間で1兆円追加ねん出>
東電は同日、首相による指示を受け、コメントを発表。1)廃炉への安全対策のため、現場の裁量で使用できる資金・予算枠を確保するとし、コストダウンや投資抑制により2013年度から10年間で総額1兆円を追加で確保する、2)多核種除去装置の増強も含め、2014年度中に全ての汚染水の浄化を完了するよう取り組む、としている。
東電の広報担当者によると、5、6号機の廃炉を年内に決定した場合の2014年3月期決算への影響については現時点では不明としている。 (ロイターニュース 浜田健太郎)