25日、泉田新潟県知事は東電の廣瀬社長と再び会談し、最終的に安全設備の設置について事前の了解を求める文書を受け取って、内容を検討する考えを示しました。
問題のフィルターベントについては、原子炉建屋のすぐ脇の地下に埋めるタイプを増設することにして、原子炉建屋と共通の岩盤で支持することで連絡配管の破損を防止するという改善案が、東電から示されました。
その点に関しては一歩前進ですが、フィルターの除去性能は住民を被曝させない程度に十分なのか、そのとき住民は安全に避難できるのか、中越沖地震時に3600箇所が破損した装置の耐震性はどのように改善されたのか、何よりも豆腐の地盤といわれている活断層の件はどう考えるのかなど、まだまだ問題は山積しています。
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新潟知事と東電社長会談 事前了解求める文書検討へ
NHK NEWS WEB 2013年9月25日
東京電力柏崎刈羽原子力発電所の運転再開を巡って、新潟県の泉田知事は東京電力の廣瀬社長と再び会談し、再開の前提となる安全設備の設置について事前の了解を求める文書を受け取って、内容を検討する考えを示しました。
今後は泉田知事が運転再開に向けた安全審査の申請を容認するかどうかが焦点となります。
東京電力柏崎刈羽原発6号機、7号機の運転再開を巡って、新潟県の泉田知事は25日、新潟県庁を訪れた東京電力の廣瀬社長と再び会談しました。
この中で廣瀬社長は、「原発の立地地域と結んでいる安全協定は信頼関係の根底を成すもので、これを順守します」と伝えました。
そのうえで、泉田知事の懸念を受けて、運転再開の前提となるフィルターベントと呼ばれる設備を増設する考えを伝え、安全協定に基づいて事前の了解を求める文書を手渡しました。
前回=7月の会談では泉田知事が受け取りを拒否していましたが、今回「預かります」と答えて文書を受け取り、今後、内容を検討する考えを示しました。
フィルターベントは、原発事故の際、放射性物質の放出を抑えながら格納容器の圧力を下げる設備で、ことし7月に施行された新たな規制基準で設置が義務づけられたものです。
会談では、泉田知事が、万が一フィルターベントを使用する際の住民への周知の方法や、被ばくを極力避けるための対策などをただしたのに対して、廣瀬社長は、必要な対策を施しているとしたうえで、住民への周知などは自治体とのコミュニケーションを深めて対応したいと答えました。
前回の会談は物別れに終わっていましたが、25日の会談では、東京電力側が設備の増設や自治体との連携を重視する考えを示したことに、泉田知事も一定の理解を示し、今後、知事が運転再開に向けた安全審査の申請を容認するかどうかが焦点となります。
会談後、廣瀬社長は「地域の安心、安全を最優先に考えることをしっかりと申し上げた。一日でも早く申請を出したいが、新潟県から事前の了解を頂くまでは申請する考えはない」と述べました。
増設のフィルターベントは地下に
柏崎刈羽原子力発電所の運転再開を目指す東京電力は、原発事故の際、放射性物質の放出を抑えながら格納容器の圧力を下げる、「フィルターベント」という設備について、現在建設中のものとは別に、地下に設置するタイプの、より耐震性の高い設備を新たに造る方針を示しました。
東京電力の廣瀬社長は、25日に行われた新潟県の泉田知事との会談で、柏崎刈羽原発6号機と7号機に、「知事の指摘を踏まえ、県民の安心安全を考えて、もう1つのフィルターベントを造りたい」と述べました。
「フィルターベント」は、原発事故の際、放射性物質の放出を抑えながら格納容器の圧力を下げる設備で、ことし7月に施行された新たな規制基準で設置が義務づけられました。
柏崎刈羽原発では、すでにフィルターベントの設置に向けた準備工事が始まっていますが、25日に廣瀬社長が表明したのは、これとは別に、放射性物質を除去するタンクを原子炉建屋のすぐ脇の地下に埋めるタイプだということです。
基礎部分を建屋と同じ岩盤にほぼ直接設置するため、地上よりも耐震性を高めることができ、より建屋の近くに設置することで、設備と建屋をつなぐ配管などが壊れにくくなるとしています。
具体的な設計や着工時期については今後検討するとしています。
専門家「地元と一緒に解決する姿勢必要」
25日の東京電力の廣瀬社長と新潟県の泉田知事との会談について、電力会社と地元自治体の関係に詳しい東京工業大学の西脇由弘特任教授は、ことし7月の会談と比べ、廣瀬社長が歩み寄り、泉田知事が一定の理解を示したとみています。
西脇特任教授は2人のやり取りについて、「フィルターベントや福島第一原発の事故の原因、それに防災対策など、知事の質問に廣瀬社長はきちんと対応しようとしていて、地元との関係を損なうことなく、姿勢については一定の理解が得られたという印象だ」と述べました。
一方で、「周辺住民の防災対策などは地元と詰めきれていないので、東京電力は地元の一員として一緒に問題を解決していくという姿勢が求められる。その過程では、東京電力が何に困っていて、それをどう解決するかというステップを地元に説明し、検討状況を含めて公開することが求められる」と指摘しました。
また、東京電力が地元の事前了解を得ることなく、柏崎刈羽原発の運転再開に向けた安全審査の申請はしないとしたことについては、「安全協定に基づく事前了解は、あくまでも地元と取り交わした紳士協定のようなもので、法的な拘束力は持たないが、これまで新潟県の理解を得るのに非常に時間を費やしてきたことを考えると、当然、地元の回答を得てから申請という次のステップに進むことになるだろう」と話しています。
新潟県知事「共通の認識持てた」
東京電力の廣瀬社長との会談を終えた新潟県の泉田知事は、地元を重視するとした廣瀬社長の姿勢について評価したうえで、「東京電力とは、原発の規制基準をクリアしても安全を確保できず、自治体との協議が必要だという共通の認識を持つことができた。東京電力から提示された内容について、今後、内部で協議していきたい」と述べるにとどまり、安全審査への申請を認めるかどうか明言しませんでした。
柏崎刈羽原発:フィルター付きベントでも数百ミリ被ばく
毎日新聞 2013年09月25日
東京電力の広瀬直己社長は25日、柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)で設置を計画中の「フィルター付きベント(排気)装置」を使用した場合、原発の敷地境界で住民に数百ミリシーベルトの被ばくが生じ得るとの試算結果を明らかにした。この日会談した泉田裕彦・新潟県知事の指摘などを受けて答えた。
健康に影響が生じ得る被ばく量で、今後、同原発と同じくフィルター付きベント装置の設置を計画している全国の沸騰水型原発で住民の避難計画作成の重要性が高まりそうだ。
知事は会談で「県の試算では『甲状腺等価線量』で260ミリシーベルトだ」と指摘。これに対し広瀬社長は県の結果を認めながらも「敷地境界にじっとしていた場合の数字で例外的」と主張。会談後に「数字はいくつかあるが(甲状腺等価線量でなく全身線量で)数百ミリシーベルト」とした。
一方、知事は会談で「中越沖地震の際は渋滞で車が進まなかった。じっとしているのは例外ではない。ベントの前に避難できるのか」と懸念を示した。【高木昭午】