復興庁が8月30日に公表した「原発事故子ども・被災者生活支援法」実施のための基本方針は極めていい加減なもので、切実な状況に置かれている被災者の声や、苦労しながら被災者支援を継続している民間団体や市民の声は一切反映されていません。
最大の注目点であった、どの放射線量までの地域を「支援対象地域」にするのかについては、根本復興大臣も関係部署に科学的な検討を求めて、それを線量基準の参考にすると強調していたにもかかわらず、結局は線量基準を決めずにいきなり福島県内33市町村を対象地域に指定するという、予想もされなかった方式がとられました。それ以外は福島県外は勿論のこと、法令が年間被曝限度としている1ミリシーベルトを超える地域であっても全て除外されました。
また支援策の内容も、殆どが既に行われている不十分な施策を貼り合わせだけのもので、支援法にうたわれた趣旨は完全に骨抜きにされました。
まことに被災者たちの期待を裏切り、立法の趣旨を外れた、無内容で酷薄な基本方針案でした。それなのにこの方針案に関するパブリック・コメント(一般からの意見聴取)の受付は9月13日で終了するということです。
毎日新聞がこの1年あまり基本方針がどのように検討されてきたのかを知ろうとして、7月上旬に同庁に議事録や提出資料の公開を請求したところ、9月4日、「協議内容を記録する議事録は作っておらず、各省庁が検討用に提出した資料約120枚も開示できない」という回答があったということです。いい加減で無責任を極めた省庁です。
以下に毎日新聞の記事を紹介します。
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被災者支援法:復興庁、議事録作らず 会議資料も開示せず
毎日新聞 2013年9月6日
東京電力福島第1原発事故に対応する「子ども・被災者生活支援法」で、復興庁が支援対象地域や内容を決める際に関係省庁と協議した会議の議事録が作成されていないことが、同庁への情報公開請求で分かった。会議資料についても同庁は「国民の誤解や臆測を招く」などとして開示しなかった。復興庁は、会議の存在も明らかにしてこなかった経緯があり、「秘密体質」が改めて問われることになりそうだ。【日野行介、袴田貴行】
同庁は8月30日、福島県内33市町村を支援対象地域とする基本方針案を公表した。本来は放射線量の基準を決めて対象地域を線引きするはずだったが、同庁は基準を決めないまま自治体単位で指定する手法に転換。「対象地域を不当に狭めている」と批判を浴びた。
この方針案について、根本匠復興相は「関係省庁間の意見交換、議論を踏まえた」と説明。関係省庁の課長や参事官が参加するこの会議で事実上決められたことを示唆した。
毎日新聞は方針案が出る前の7月上旬、会議での協議の経過を知ろうと、同庁に議事録や提出資料の公開を請求した。
これに対し同庁は9月4日、4月から6月までの4回の会議の日時、場所、出席者と議事次第を記した文書計8枚を開示したが、協議内容を記録する議事録は作っておらず「不存在」と回答。各省庁が検討用に提出した資料約120枚は「現段階で未成熟な情報で、公にした場合は国民の誤解や臆測を招く」などとして「不開示」とした。
議事次第などによると、会議は復興庁が主催し、環境省、内閣府被災者生活支援チーム、原子力規制庁の課長や参事官らが出席。上司に当たる復興庁統括官や規制庁次長が出席することもあった。
同法は、被災者の意見を反映させ、議論の透明性の確保を規定している。また、原発事故を巡っては昨年初め、政府の原子力災害対策本部などが議事録を作成していなかったことが問題化。政府の公文書管理委員会は2012年4月、東日本大震災関連の会議では積極的に議事内容の記録を作成するよう求めている。
議事録を作らず、資料も出さないことについて、復興庁は「公文書管理法は、議事録などの作成を一律には求めていない。会議は意思決定ではなく情報交換の場と位置づけている」としている。
子ども・被災者生活支援法の基本方針案について、政府は13日まで実施するパブリックコメントを経て閣議決定する方針で、復興庁は11日に福島市内で説明会を開く。