東京電力福島第一原発の汚染水問題で、福島県民3人が3日、東電の広瀬直己社長ら幹部約30人と法人としての同社について、汚染水管理のずさんさが大量の汚染水漏れにつながったとして、公害犯罪処罰法違反の容疑で福島県警に告発することになりました。
具体的には
①原子炉の冷却に使った水をためるタンクから漏れた高濃度汚染水約300トンを海に流出させたのは、タンクが応急的に作られたためで、早期に丈夫なタンクを設置し汚染水を移送する義務を怠り、排水弁を開けっ放しにしたなどの管理上の過失があった。
②敷地内に流れ込んだ地下水が放射性物質に触れて一日約300トン発生している汚染水が連続的に海洋に流出しているのは、東電が2011年4月~6月には敷地の地下には海に向かう大量の地下水流があることを認識した上で、一旦は1~4号機を取り囲む地中の遮水壁の建設を検討しながら、費用約1000億円を要するので会社の損失が大きいとして工事をせずにそのまま放置した過失による。
としています。
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地上タンクの漏水の原因となっている計画~施工~管理上の瑕疵のお粗末ぶりにはあきれる他はありませんが、今日手が付けられないほどに拡大してしまい世界的に注目されている汚染水の海洋流出が、事故の直後から東電(と国)にはいずれはそうなるという認識があったのに、殆ど何もせずに2年あまりも放置された結果である、というのにはさらに驚かされます。無責任きわまる話です。
民間会社や個人が不注意や管理不行き届きで、毒物を紛失したり、運搬中に散乱させたり、あるいは河川に流したりすれば当然処罰されます。最初から承知のうえでこれほどにまで大規模で深刻な惨害を招いたことに、責任がなく処罰もされないということはあり得ません。
武田邦彦教授は、8月20日のブログ「どこまでやっても犯罪ではないのか」で、「これはあまりにもハッキリした犯罪だ。人の生活を破壊し、日本列島や太平洋を汚染し、食材を食べられないようにして、それでも平然としている。すぐ、犯罪として逮捕しなければならない。これほどの巨悪を法令の隙間をぬって言い訳するのなら、裁判員裁判制度などいらないではないか。汚染水を漏らした責任者を直ちに逮捕すれば少しは自分たちがやっている事が犯罪であることを知るだろうし、電力の人も“原発の恐ろしさ、経営リスク”というものを知るだろう」と、述べています。
以下に3日付の東京新聞の3本の記事を紹介します。
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汚染水、公害処罰法に違反 東電社長ら刑事告発へ 福島県民
東京新聞 2013年9月3日
東京電力福島第一原発の汚染水問題で、福島県民三人が三日、東電の広瀬直己社長ら幹部約三十人と法人としての同社について、汚染水管理のずさんさが大量の汚染水漏れにつながったとして、公害犯罪処罰法違反の容疑で福島県警に告発する。
告発するのは、原発事故で被ばくしたとして東電前会長らを業務上過失致死傷容疑などで告訴・告発した「福島原発告訴団」のメンバー。検察当局は昨年八月、ほかの市民団体の同様の告発などとともに受理し、東京、福島両地検が捜査している。
今回告発するのは
▽原子炉の冷却に使った水をためるタンクから漏れた高濃度汚染水約三百トン
▽敷地内に流れ込んだ地下水が放射性物質に触れて一日約三百トン発生している汚染水
への東電の対応。
告発では、タンクからの汚染水漏れについて「タンクは応急的に作られた。早期に丈夫なタンクを設置し、汚染水を移送する義務を怠った」と主張する予定。ずさんな監視体制や、汚染水を食い止める堰(せき)の排水弁を開けっ放しにしていた点も過失とみている。
地下水の汚染については、東電が二〇一一年六月、1~4号機を取り囲む地中の遮水壁の建設を検討しながら放置したことが過失に当たると指摘。「対策費が一千億円レベルで、『債務超過に近づいた』と市場から厳しい評価を受けるのを恐れ、先送りを決めたのは過失」と批判する。
政府や東電の試算によると、タンクからの汚染水漏れで、二四兆ベクレル相当の放射性物質を放出。国際的な原子力事故評価尺度による評価が、七段階のうち上から五番目の「レベル3」とされた。
<公害犯罪処罰法>
正式名は「人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律」。事業活動に伴って公害を生じさせる行為を処罰することにより、公害防止を図るのが目的。水俣病やイタイイタイ病など深刻な公害被害の多発を背景に、1970年に成立した。故意犯に3年以下の懲役または300万円以下の罰金、過失犯には2年以下の懲役あるいは禁錮または200万円以下の罰金を規定。人を死傷させた場合、さらに厳しい罰則となる。法人または法人代表者らの両方を罰する両罰規定を置いている。
汚染水漏れ 東電社長らを告発 公害処罰法違反疑い
東京新聞 2013年9月3日
「地下水汚染を無策のまま放置し、もはや手が付けられなくなっている。悪質な犯罪と言うほかない」。東京電力福島第一原発の汚染水問題で、法人としての東電と幹部を公害犯罪処罰法違反容疑で福島県警に告発した福島原発告訴団は三日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見し、東電を厳しく批判した。
河合弘之弁護士は、入手した内部資料のコピーを手に、東電が1~4号機を取り囲む遮水壁の設置を「後追いにならない備え」と認識しながら、高額の費用負担を理由に先送りしたのではないかと指摘。「安全よりお金を優先して原発事故を起こした東電の体質や構造は、事故後もまったく変わっていない」と主張した。
原発事故で被ばくしたとして、告訴団が東電幹部らを業務上過失致死傷容疑で告訴・告発してから一年以上たつが、東電への家宅捜索を行わない検察当局の捜査手法も批判。「原発事故でも、危険を認識しながら津波対策を先送りしたことを示す文書が東電内にあるはず。検察は速やかに強制捜査に踏み切るべきだ」と強調した。
福島原発告訴団は三日、広瀬直己社長ら幹部三十二人と東電の告発状を福島県警に提出。告発状によると、原子炉冷却に使った水をためるタンクから汚染水が漏れたのは、「丈夫なタンクを早く設置し、汚染水を移す義務を怠ったため」と指摘している。また、「高額の費用負担を恐れ、遮水壁の建設など必要な対策を怠った」として、地下水が放射性物質に触れ、汚染水となる原因をつくったと主張している。
東電、費用公表に難色 「四方遮水壁 1000億円規模」
東京新聞 2013年9月3日
東京電力福島第一原発の汚染水問題で、福島県民らでつくる福島原発告訴団は三日、東電が汚染水対策として原発地下の四方に遮水壁を造るのが「最も有力」と位置付けながら、一千億円規模の費用や着工時期を公表しない方針を記していた内部文書を入手したと発表した。遮水壁は結局、海側にしか設置されていない。
告訴団は同日、汚染水漏れは管理のずさんさが招いた公害だとして、この内部文書のコピーなどを添え、公害犯罪処罰法違反容疑で東電幹部らの告発状を福島県警に提出した。
告訴団によると、入手したのは原発事故から約三カ月後の二〇一一年六月に、東電から政府側にあてた内部文書という。発電所の四方に壁を造って遮水する「地下バウンダリ」という対策について、基本仕様や記者発表の対応方針が書いてある。
このうち「基本仕様について」と表題のある文書は、1~4号機原子炉建屋などの地中の四方を囲む遮水壁の工事は設計がまとまり次第、着手する予定とし、「高濃度の滞留水(汚染水)をこれ以上海洋に流出させないために、『後追いにならない備え』とする」と明記している。
だが、併せて作成されたとみられる記者発表に関する文書では、遮水壁は設計次第で一千億円規模の工事費がかかる可能性があり、「仮に一千億円レベルの更なる債務計上を余儀なくされることになれば、市場から債務超過に一歩近づいたとの厳しい評価を受ける可能性が大きい。是非回避したい」と記述。発表する際は着手時期や費用を「今後の調査・設計次第で不明」とする方針を伝え、政府側に理解を求めている。
地下の四方に造るはずだった遮水壁は海側にしか造られず、東電側はこの設置費も公表していない。東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は先月の会見で「建屋地下の汚染水は地下水位との微妙なバランスで管理している。不用意に陸側に壁を造ると、バランスを崩す恐れがあった。技術的側面の判断で、決して予算面での判断ではなかった」と強調していた。
東電はこの文書について本紙の取材に回答せず、告発状については「コメントは控える」としている。