福島原発の濃厚放射能汚染水の海洋流出は、いまや外国紙の第1面を飾るほどに注目されています。
これはいずれはそうなると分かっていながら、東電が1000億円の出費を惜しみ、政府もそれを容認した結果でした。
東電の非と不明のほどはいうまでもありませんが、指導の権限を持ち、予算の調整権も持っていた政府の責任こそがより重大でした。
事故の年・2011年12月に政府の対応のまずさを懸念した当時の原子力委員会が、1979年の米スリーマイル島原発事故時に、米政府が事故処理を電力会社任せにせず、エネルギー省や原子力規制委員会などに責任を分担させる体制を作り、費用面でも電力会社を主体にしつつ汚染水対策も含む廃炉の技術・装置開発などに国費を投じたことを紹介し、福島原発事故でも「国が責任を認識し、関与することが重要」と強調する提言書を政府に提出していたことが分かりました。
それ以外にもさまざまな重要な提言が含まれていましたが、なぜか当時の菅政権は殆ど何も採用せずに結局今日の惨状を呈するに至りました。
菅首相(当時)は当時確か20近くもある対策組織の長を務めていましたが、最初の頃東電に怒鳴り込むなどした以外には、一体どのように指導力を発揮したのかが殆ど伝わっていません。まさか最初のパフォーマンスで燃え尽きたわけではないと思いますが・・・
菅政権以降も、野田政権、安倍政権と、福島原発の後処理についての政府の不作為と無責任さは連鎖しています。
以下に毎日新聞の記事を紹介します。
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汚染水:「国の関与」提言放置 原子力委が民主政権に提出
毎日新聞 2013年09月07日
東京電力福島第1原発の放射性汚染水対策について、内閣府の原子力委員会(近藤駿介委員長)の専門部会が2011年12月に漏えい防止や安全な保管・処理のために国の主体的関与を求める提言をしながら、政府に事実上放置されていたことが6日分かった。国が第三者機関を設け、東電の事故対策を監視、地元との対話に努めるようにも提言したが、実現していない。
原子力委幹部は「原子力を推進し厳しく批判されていたが、我々も福島原発の安全な廃炉に責任があると考えて提言をまとめた」と話す。しかし、当時の民主党政権関係者は「事故処理は東電が主体だった」「政府が提言通りしなければならない理由はない」と重視しなかったことを認める。
事故9カ月後に出された原子力委の提言に政府がもっと耳を傾けていれば、汚染水問題がこれほど深刻化しなかった可能性がある。自民党の安倍晋三政権は事故から約2年半後の今月3日、汚染水対策への国費投入や東電の作業に対する監視体制強化などの「基本方針」を打ち出したが、党内には「国の関与があいまい」と指摘する声も根強い。
提言は「東京電力福島第一原発に関する中長期的措置に関する検討結果について」と題され、原子力委の専門部会(部会長・山名元京大原子炉実験所教授)が11年12月13日付で策定、政府に提出した。
1979年3月に起きた米スリーマイル島原発(TMI)事故の対応を分析し、複数の原子炉が損傷した福島第1原発事故では、汚染水発生量がTMIの20倍程度にのぼる可能性があると想定。米政府が事故処理を電力会社任せにせず、エネルギー省や原子力規制委員会(NRC)などに責任を分担させる体制を作ったことを挙げ、汚染水を含む放射性廃棄物の長期かつ安全な管理・処理につながったと評価している。費用面でも、米政府が電力会社を主体にしつつ、「国益」を理由に汚染水対策も含む廃炉の技術・装置開発などに国費を投じたと紹介。福島第1原発でも「国が責任を認識し、関与することが重要」と強調している。
汚染水対策では、カメラや線量測定だけで漏えい場所を特定できないことを懸念。長期・安全な保管・処理方法も決まっていないとして、汚染水増量を防ぐ遮水壁整備などとともに、技術や装置開発に国内外の英知を結集するように求めている。
また、地元や国民の不安解消のため、国が第三者機関を設けて東電の作業を監視するとともに、公聴会などを開いて地元の意見を聞き、対策に反映させるべきだとしている。