2013年9月24日火曜日

首相の汚染水発言 「ブロック」の意味がわからない

 安倍首相がオリンピック招致活動の中で、「福島原発の汚染水は完全な制御下にある」、「福島の汚染水は原発港湾の0・3平方キロメートルエリア内に完全にブロックされている」と述べたことは、全く事実に反していて「顰蹙を買う」の一語に尽きるものですが、五輪東京招致決定を慶事として日本のマスメディアは殆ど批判しませんでした。
 首相はそれをいいことにして19日に福島第1原発を視察した際にも、またまた同様の発言を繰り返しました。

 首相の認識が狂っているのか、認識はしているけれども敢えて虚偽の発言を繰り返しているかのどちらかですが、どちらにしても安倍氏の人格の問題ということになります。
 百歩譲ってあのときの首相の発言は国際公約を意図したものだという弁護を受け入れるとしても、その虚偽発言を臆面もなく繰り返すなどはあまりにも軽薄で、放置できることではありません。

 しんぶん赤旗は「首相の汚染水発言 「ブロック」の意味がわからぬ」とする主張を掲げました。以下に紹介します。
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主張) 首相の汚染水発言 「ブロック」の意味がわからぬ
しんぶん赤旗 2013年9月23日
 安倍晋三首相が東京電力福島第1原発を視察し、放射性物質で汚染された水は港湾内の0・3平方キロメートルに「ブロックされている」と発言しました(19日)。9月はじめの国際オリンピック委員会(IOC)でのプレゼンテーションでの、「汚染水はブロックされており、コントロールされている」との発言を確認したものですが、一体なにを根拠に「ブロックされている」というのか。汚染水が港湾外に流れ出し、外洋を汚染していることは誰の目にも明白です。「ブロックされている」と繰り返す首相の発言は、政府の汚染水対策そのものへの真剣さを疑わせるものです。

汚染水の出入りは自由
 安倍首相が「汚染水がブロックされている」という0・3平方キロメートルの水域とは、第1原発に資材などを運び込むために設けられた港湾の内側です。汚染水が漏れ出すため遮水壁を設置するなどの対策をおこなっていますが、完全には止まっていません。海中にも目の細かい幕(シルトフェンス)を張っていますが汚染水の出入りを防ぐものではなく、港湾の出口そのものは開いているので、汚染水の出入りは自由です。港湾内の海水は潮の満ち干で入れ替わります。決して「ブロック」されているわけではありません。

 しかも汚染水は、港湾内に漏れ出しているだけではありません。放射性物質で汚染された水は、原発の建屋内にもトンネルなどにも大量にたまっており、そこへ毎日大量の地下水が流れ込んで増え続けます。汚染された地下水は港湾外からも海に漏れ出します。建屋内の汚染水をくみ出し、貯蔵しているタンクからも汚染水漏れが相次いで発覚しています。タンクから漏れた汚染水の一部は、排水溝を通じて港湾から離れた放水口から海に流れ出ていたことも明らかになっています。ここでも「ブロックされている」というのは真っ赤なうそです。

 なぜ安倍首相は「ブロックされている」といいはるのか。事実を知ってごまかしているとすればそれこそ問題ですが、万一首相が海洋に流れ出てしまえば薄まるから問題がないと考えているなら、それも大問題です。原発事故からすでに2年半、完全に原子炉を廃止するまでこれから何年かかるかもわからない状態で、長期にわたって海洋に流出する汚染水は文字通り世界の海を汚します。

 しかも水中での放射性物質の拡散は一様ではなく、地形などによって海の「ホットスポット」と呼ばれる濃度の高い場所をつくったり、海底の泥に蓄積したりします。小さな魚を大きな魚が食べるなどの食物連鎖を経て、人間が摂取することにもなりかねません。人類にとって生命の源と呼ばれる海洋の汚染は、重大な犯罪行為というしかありません。

放射能で海を汚さない
 いま安倍政権に求められるのは、「ブロックされている」とか「コントロールされている」とごまかすのではなく、「放射能で海を汚さない」ことを基本原則に、汚染水対策にあらゆる人的・物的資源を動員することです。対策を東電任せにせず、東電を「破たん処理」し、「コスト優先・安全なおざり」を抜本的に正すことも必要です。

 安倍首相のIOCでの発言で汚染水対策は国際公約になりました。首相は責任を果たすべきです。