2013年9月30日月曜日

電力会社によるメディアコントロール


 2008年に大阪毎日テレビが、番組:なぜ、警告を続けるのか?京大原子炉研究所―異端の研究者たち」で京大の熊取6人組を取り上げたところ、翌日関西電力から抗議があり、コマーシャルを中止され系列での再放送を禁じられるなどしました。
 この件について、ラジオ番組:「ラジオ・フォーラム」に出演した京都大学の小出氏が、質問に答えました。

 熊取6人組の番組は、関西ローカル番組で日曜の深夜(12時50分~)に放映されましたが、そうした遠慮がちな放送にも容赦なく圧力をかけてくる電力会社の姿勢に驚かされます。

 「日本のマスコミという世界では原子力の反対派にものを言わせない、ということでずっときたと思います
 小出氏は電力会社によるメディアコントロールについて、そう語っています。
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 電力会社のメディアコントロール ・・・・第38回小出裕章ジャーナル
Web公開 2013年9月28日

聞き手  小出さん、今日も宜しくお願いします。小出さんは2008年「なぜ、警告を続けるのか?京大原子炉研究所―異端の研究者たち」いうドキュメンタリー番組に出演されましたよね。視聴率は1・8%。これ、小出さんが出演されて、番組終了後の経緯を教えて頂けますか?
小 出   私からあまり申し上げることでもないですけれども、私が知り得たことをお伝えしたいと思います。その番組では、それまで原子力に抵抗してきた、私たち熊取六人組を題材に取り上げて下さったのですが、それが放映された翌日になりまして、関西電力がすぐに毎日放送に抗議に来たと。
聞き手  関西電力が毎日放送に抗議に
小 出   とんでもない番組だ。毎日放送は原子力に関して偏向している」という抗議をしたと、私は聞きました。
聞き手  事件の経緯を調べますと、社内で一度試写をして、番組アドバイザーにも了承をもらって、通常の放送手順を踏んで放送したわけで、番組としても推進派の方も出られていましたのでバランスもとれていたと思いますが、小出さんたちを出したことが気に食わなかったのでしょうか?
小 出   もちろん、そうだと私は思います。これまで、日本のマスコミという世界では原子力の反対派にものを言わせない、ということでずっときたと思いますし、私たちに何か焦点を当てるという形、勿論、賛成派の方も出ていたわけですけれども、私たちに焦点を当てる番組はとんでもないというのがマスコミの中の合意だったのだと思います。  
聞き手  小出さんや今中さんを出したこと自体が関電としては問題だということで抗議に来たのだろうと思います。同様に、広瀬隆さんもテレビから干されていますし、佐高信さんも干されぎみだと思うのですが・・・
小 出   佐高さんが干されるのは当然というか、ああいう人に出られたら、体制側の人は困るでしょうね。
聞き手  原発にずっと反対し続けてきた高木仁三郎さんなんかもテレビで見た記憶がないのですが、どうですか。
小 出   私自身はテレビを全く見ないのです。昔、大宅壮一さんという評論家の方がですね、テレビが普及しだした頃に、この道具は一億総白痴化の道具だと、おっしゃったことがありましたけども、私も実にそのとおりだと思いますし、本当にテレビという番組は私から見ると、くだらない情報を一方的に垂れ流す形になってしまっていて、私は見ると不愉快なことばかりですので、もうほとんど何十年もみていないという状況です。
聞き手  この番組の後、関西電力はスポットCMを引き上げたということですよね。
小 出   はい。そう聞きました。
聞き手  こういうことをするアンフェアな社内体質はどう思われますか。
小 出   もちろん、フェアだとは思いませんし、私は一度も電力会社がフェアだなんて思ったことは一度もありませんし、相変わらず、汚い手を使ってくるのだな、と思いました。
聞き手  公共の電気を司るとこですから、普通の企業よりもフェアであるべきですよね。
小 出   あるべきか、あるべきではないかと問われると、もちろん、あるべきだとは私は思いますけれども、電力会社というのは、一番、宣伝とか放送に関してはアンフェアな態度を取り続けてきた会社だと思います。
聞き手:  原子力は五重の壁に守られていて安全ですというCMがありましたが、そのCMを見て小出さんはどう思いましたか。
小 出 :  実に不愉快ですし、そんなことがありようはずがないと私は警告してきました。そして、実際に福島の事故が起きてしまっているわけですから、電力会社が言っていた宣伝が間違えていたわけですし、その間違えた宣伝を流し続けてきたマスコミにも私は責任があると思います。
聞き手:  CO2を出しません。というのは嘘ですよね。
小 出 :  あれも嘘です。
聞き手:  廃炉とか10万年後の保管のことを考えると、普通の火力発電よりも出すと思うのですが。
小 出 :  おっしゃる通りです。私は現在言われている地球温暖化問題の原因がCO2だとは実は思っていないのです。そのことをちゃんと聞いて頂こうと思うと大変時間がかかりますが、仮にCO2が原因だとするならば、原子力が最悪の選択になってしまいます。  
聞き手:  石炭・火力よりも悪いですか。
小 出 :  原子力が遥かに悪いです。原子力を使いますと、核物質生成物を大量に生みだしてしまって、その物質をきちんと管理しようと思うと、
 10万年とか100万年にわたって私たちが作業に取り組まなければいけなくなるのです。
聞き手:  それが一番大きな問題ですよね。
小 出 :  そのために一体どれだけのお金がかかるのか、どれだけの労力がかかるのか。そして、そのためにどれだけのCO2を出してしまうのか。と考えた時に、到底、引き合いません。
聞き手:  空冷とか、水冷とかで冷やす時に、使用済み核燃料棒をね。その循環は石油を炊いてやるのですからね。
小 出 :  空冷をやるのですけれども、自然の冷却ということを期待していて、地面の底に埋めてしまえば、なんとかなるのだろうと。石油も石炭も使わずに、ただ埋めておけば、自然の力で冷やしてくれるだろうと期待をしているのですけれども、そんな期待が成り立つかどうかということを証明してくれる科学がない。
聞き手:  10万年の間に地震は起こりますよね。
小 出 :  もちろん、起こります。何十年、あるいは百年という単位で巨大な地震が次々襲ってくるわけで、10万年、100万年を考えれば、一体、何千回、何万回そういうことに遭遇しなければいけないのか、ということになってしまうわけです。
聞き手:  整理しますと、関西電力は、小出さんや原子力に反対している人を出しただけで圧力をかける。それでテレビ界はその圧力が恐ろしいので、そのCMだけを流していて、そのCMが五重の壁で安全だとかCO2出しませんとか、そういう嘘のCMを流していた。関西電力とメディアがものすごい安全神話を作っていて、この事故があったと。この毎日放送の番組はギャラクシー賞も取ったのですね。そういう意味では、メディアの良心も少し残っている。
小 出 : そうです。
聞き手:  小出さんの就職のことを聞きたいのですが、小出さんは電力中央研究所に就職が内定されていた。ところがそこに就職されなかった。それはなぜなのですか。
小 出 :  内定を取り消されました。なぜか、ということの正確な理由は私は知りません。要するに人事のことですし、先ほどの番組に関しても関西電力がどういう圧力をかけたというのは私は正確な理由は知りませんし、私の内定が取り消されたという正確な理由は私は知りません。
  ただし、私が聞いてきた範囲では、私が当時、女川原子力発電所に反対運動をしていましたので、それが電力中央研究所の知るところになって、私の内定が取り消されたと聞きました。
聞き手:  調査されたということでしょうね。それで、京大原子炉実験所に就職されたということですね。その方がよかったです。
小 出 ここの原子炉実験所は、大変、私の独創性を重んじて下さるとことなので、私としてはこの職場は大変居心地が良かったし、こっちの方がよかった、と言われるとそのとおりだと思います。
聞き手:  私たちにとってよかったです。今日はどうもありがとうございました。
小 出 :  ありがとうございました。  

(原文は「小出さん」となっていますが、ここでは敬称を略しました)