元アメリカ原子力規制委員会(NRC)委員長のグレゴリー・ヤツコ氏が23日、東京都内で福島第一原発事故に関する講演を行いました。
福島原発タンクからの汚染水漏出問題について、「東京電力に対応能力がないという懸念を国際的に一層高めた。なぜもっと早く政府が関与しなかったのか不思議でならない」、「日本の原子力への国際的な信頼が揺らいでいる」と述べ、日本政府の対応を厳しく批判しました。
また、「これまで原発は安全で事故は起こらないとされてきたが、原発事故は起こるものという基本的な事実を認め、どうすればいいかを考えるべきだ」と、これまでの発想を転換すべきことを強調しました。
そして質疑応答の中で、「原発は費用が高いし、壊滅的な事故のリスクを負っている」、「日本の人的資源と技術や知識などを活用して、よりよい発電方法を開発し世界をリードしてほしい」とも述べました。
日本の原子力村の住人たちも、是非こういう斬新な発想に接して頭を柔軟にし、早く原子力エゴから解放されて欲しいものです。以下にNHKニュースを紹介します。
追記 ヤツコ氏は福島第一原発の事故後、原発の安全性に関し強硬な姿勢で臨ん
追記 ヤツコ氏は福島第一原発の事故後、原発の安全性に関し強硬な姿勢で臨ん
だため、米産業界から反発を呼びNRC内で孤立するようになり、2012年5月
NRC委員長を退任しました。
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汚染水問題で政府の対応を批判
NHK NEWS WEB 2013年9月23日
おととし、東京電力福島第一原子力発電所の事故が起きたとき、NRC=アメリカ原子力規制委員会の委員長を務めていたグレゴリー・ヤツコ氏が23日、東京都内で講演し、福島第一原発の汚染水の問題について「なぜもっと早く政府が関与しなかったのか不思議でならない」と述べ、日本政府のこれまでの対応を批判しました。
グレゴリー・ヤツコ氏は、アメリカ原子力規制委員会の委員長を去年7月まで3年余り務めた物理学者で、福島第一原発の事故のあと、その対応を巡る日米両国間の協力や、アメリカの原発の安全対策の見直しを進めてきました。
「なぜもっと早く政府が関与しなかったのか」
23日、東京・千代田区の会場で「アメリカから見た原発事故」と題して講演したヤツコ氏は、福島第一原発でタンクから汚染水が漏れ出した問題について「東京電力に対応能力がないという懸念を国際的にますます高めた。規模や関心の大きさから、なぜもっと早く政府が関与しなかったのか不思議でならない。日本国内では、ほかの原発の再稼働にばかり関心が集まり、福島第一原発の汚染水の対応が忘れられていたようだが、国際的には、まだまだ対応を続けなければならないという意識があり、アメリカを含め、それがさらに深まった」と述べ、日本政府のこれまでの対応を批判しました。
そのうえで「課題は今も続いていて、あしたとか来月などという期間では無くならない。何年、何十年、あるいは、福島第一原発が完全に廃炉になるまで続く。漁業者だけでなく、住民や経済に与えている影響は大変、甚大で、日本の原子力への国際的な信頼が揺らいでいる」と述べ、汚染水の問題は重大だという認識を示しました。
「原発事故は起こるもの」
ヤツコ氏は日本がこれから原発とどう向き合っていけばよいかについて「原子力の関係者の間では『原発は安全で事故は起こらない』という考え方もあったが、『原発事故は起こるものだ』という基本的な事実を認めないとオープンな議論はできない。事故は防げないという前提で、重大で過酷な事態にならないようにするには、どうすればいいかを考えるべきだ」と述べ、これまでの発想を変えるべきだと指摘しました。
そのうえで「住民を誰1人避難させてはいけないし、周辺や海を汚染してはいけないという今回の事故の教訓を踏まえた新しい安全基準を打ち出すべきだ。また、福島第一原発の汚染水の管理や核燃料の運び出し、それに、建屋や地域の除染、住民の帰還などについて、市民が政府に説明を求めたり、対話や議論をしたりするなどの行動が必要だ」と述べ、一般市民の積極的な関与も求めました。
「100年後には“脱原発”も」
講演会の会場には100人近くが集まり、質問や意見が述べられました。
それに答えるなかで、ヤツコ氏は「核分裂のエネルギーで発電する原発は、費用が高いし、壊滅的な事故のリスクを負っているので、100年後には原発が無くなってほしいという思いは共有したい。しかし、そこにどうやって到達するかが難しい。日本は島国でエネルギー源が少ないが、人的資源と技術や知識などを活用して、よりよい発電方法を開発し、世界をリードしてほしい」と述べ、深刻な原発事故を経験した日本による次世代のエネルギーの開発に期待も示しました。