関電の大飯原発3、4号機の再稼働停止訴訟で大阪地裁は4日、地震の算定について「看過しがたい過誤、欠落がある」として規制委の判断を覆し、原発の設置許可を取り消す判決を下しました。
それは審査基準にも、「基準地震動の回帰式よりも上方に散布する地震動の実績値を加味して基準地震動に“上乗せ”する(要旨)」必要性を明記してあるのに、その操作を関電も規制委も怠ったというもので、審査基準を制定した規制委の不誠実さを指摘したものでした。
島崎邦彦東大名誉教授(原子力規制委・前委員長代理)は以前にも同様の指摘をしていたのですが、これまでの判事はそれを取り上げませんでした。
電力会社、規制委、そして司法が一体となって原発再稼働に邁進したと言うことができ、この判決は上級審でも簡単には覆されないと言われています。
「工事にお金をかけずに審査を通したい、最終的に会社の経費を減らしたいのが彼らの使命、安全性なんてどこにもない」。島崎教授は、電力会社の姿勢をしんぶん赤旗にそう語ったということです。
しんぶん赤旗の「きょうの潮流」を紹介します。
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きょうの潮流
しんぶん赤旗 2020年12月7日
「工事にお金をかけずに審査を通したい、最終的に会社の経費を減らしたいのが彼らの使命、安全性なんてどこにもない」。原子力規制委員会の委員長代理を務めた島崎邦彦東大名誉教授が、電力会社の姿勢を本紙に語っています。
その地震学の権威が2016年以来、「大飯原発の基準地震動は過小評価だ」と規制委に再考を求め、自ら法廷にも立って訴え続けてきました。
「基準地震動」とは想定される地震の最大の揺れのこと。耐震設計など原発の安全性の根幹にかかわります。規制委は指摘に耳を貸さず、関電の計算結果を妥当とし、大飯原発3、4号機の再稼働に道を開きました。
4日の大阪地裁判決が、地震の算定について「看過しがたい過誤、欠落がある」と規制委の判断を覆したのは、皮肉です。審査基準にもあるのに、耐震性の判断の際に必要とされる地震規模の「上乗せ」計算を、関電も規制委も怠ったと。
地震、津波、火山噴火などの災害にどこまで耐えられるのか。原発がある限り「想定外」では済まされない、自然災害への対応が求められて当然です。判決が同じ算定方式で認可された全国の原発に影響する可能性もあります。
「将来の子や孫、トンボやカエルのために、原発をなくし自然を残したい」。8年半もの裁判で示された原告・住民らの思いに、国や電力会社はどうこたえるか。「新基準に適合しているから」との空手形をかざして再稼働に突き進むことなど許されません。「原発は安全か」が厳しく問われ続けます。